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第808話 容赦ないですが何か?

『赤竜会』会長のレッドラとは、その後、再度の会談はなされていなかった。


 前回の会談から五日が経過している。


「──という事で、今回、うちの総力を挙げて敵を潰す事にしました」


 リューはマイスタの街長邸前にミナトミュラー家の関係者を動員していた。


 それこそ、ミナトミュラー家直属の精鋭から、普段、各自散らばって行動しているルチーナの『総務隊』の面々までだ。


 さらには、マイスタ『竜星組』本部の面々と、そこに出入りできる幹部組織の精鋭達まで揃っている。


「若、この大人数で隠密行動は難しいと思いますが……」


 全てをまとめる立場にある大幹部の一人ランスキーが、一堂に会した部下達を背景に指摘した。


 その横には、同じく大幹部のマルコやルチーナも並んでいる。


「今回は『赤竜会』を名乗っての行動なので、うちとわからなければ、大丈夫だよ。派手に暴れて完膚なきまでに敵を叩く。それこそ、『赤竜会』の縄張りに手を出した事を後悔させるくらいにね──みんなもそのつもりでよろしく。遂行後の再集結地点は各隊のリーダーに任せているけど、あとを尾行されないように慎重に動いてね」


 リューはランスキーだけでなく、集まった部下達に聞こえるように話した。


「珍しいねぇ。私らが派手に暴れられるなんてさ」


 ルチーナが、部下であるノーマンに嬉々とした表情で聞く。


「他人の縄張りですから。それに、弱っている『赤竜会』の面子を守る為なので、より一層派手な方がいいんだと思います」


 無口なノーマンも、上司であるルチーナに対しては、口を開く。


「そういう事かい。──若! 容赦なく殺っていいのかしら?」


 ルチーナは久し振りに暴れられそうだから、嬉しそうだ。


「反抗する気が起きないくらい徹底的にね。それに、王国裏社会が帝国側よりも怖いという事を刷り込むのには丁度いいでしょ? ──みんなもそのつもりでね!?」


 リューは『赤竜会』の為だけでなく、今後、帝国裏社会と関わる可能性も含めて考えていた。


「「「へい!」」」


 一同は、ボスであるリューの言葉に、否応もなく力強く返事をする。


「それじゃあ、敵である『吠え猛る金獣』の拠点に直接送り込むから、随時、襲撃を開始して」


 リューが早速、『次元回廊』を開いて、隊ごとに目的地へと送り込んでいく。


 大規模での遠征は、初めての事だ。


 特に、ランスキー、マルコ、ルチーナが揃って動く事は初めての事である。


 ちなみにノストラはミナトミュラー商会長代理だから、この場にはいない。


 ここまで力を入れるのは、帝国の同業相手という事があるが、戦争終結以降、幹部達は復興作業に専念して忙しい日々を送っていた。


 だから、その日頃のストレス発散の意味もあった。


 そのガス抜きに使われる『吠え猛る金獣』もたまったものではないが、そこは運が無かったと後悔してもらうしかない。


 こうして、旧シバイン領の縄張りを狙って大挙していた帝国裏社会の組織『吠え猛る金獣』は、反撃される気力もないと思っていた『赤竜会』を名乗る強者どもに容赦ない襲撃を受ける事になる。



「な、何もんだ!?」


「「「『赤竜会』(ミナトミュラー家総出)じゃい!」」」


 旧シバイン領、特に帝国領に近い、いくつかの大きな街では、この日、情報に無い『赤竜会』の攻撃に為す術もなく蹂躙される。


『赤竜会』(ミナトミュラー家)は、日頃のうっぷんを晴らすように、容赦なく暴れ回った。


 最初こそ、『吠え猛る金獣』は、事務所のボスを中心に迎撃する姿勢も見せていた。


 しかし、事務所に火はつけるし、逃げ惑う『吠え猛る金獣』の構成員を一人一人死神のようにどこまでも追いかけていっては始末する容赦のないものだった。


 これまでにない『赤竜会』の大反撃に、


「聞いていた話と違うぞ!?」


「こっちが送り込んでいた間者は何をしていたのだ!?」


「『赤竜会』はもう、反撃する気力もないんじゃなかったのか!?」


 と逃げ込んだ安全な隠れ家で、幹部達が青ざめていた。


 ドン!


 そこへ、隠れ家の分厚い扉が、蹴破られた。


 それも、相手は、マスクを付けた赤髪の子供である。


「だ、誰だ!?」


「『赤竜会(ミナトミュラー家)』だ!」


 リューがその名にふさわしい赤髪だから、敵幹部も、その言葉を鵜呑みにした。


「あの赤髪、レッドラの関係者に違いない! これは逆にチャンスだ。討ち取れ!」


『吠え猛る金獣』の幹部達も帝国裏社会の一部では名が通った猛者達である。


 今回の反撃の首謀者と思われるリューの姿に、色めき立つ。


 だが、相手が悪すぎた。


 リューは、愛刀であるドス『異世雷光いせのらいこう』に火と雷の魔力を思いっ切り込めると、それを一閃させる。


 切れ味が増した『異世雷光』から放たれた赤雷の斬撃に、襲い掛かった猛者達は、手にした武器と共に一瞬で斬り捨てられるのだった。



『吠え猛る金獣』がもしもの場合に用意した隠れ家は、リュー達によって完全に制圧された。


「最初のうちは抵抗も激しかったけど、あとはそうでもなかったわね」


 仮面を付けたリーンが、リューに感想を漏らす。


「ランスキー達の方も同じみたいだね。マルコが、金獣のボスらしき人物を捕らえたみたいだから、首実検してもらっているよ」


「そうなの? よりにもよってマルコに捕まるなんて、金獣のボスは運が無かったわね」


 マルコは、『闇組織』時代から容赦のない謎のボスとして有名だった。


 だから、リーンは敵に同情したのである。


「とりあえず、本人確認して、組織の事を洗いざらいしゃべらせたら、『赤竜会』に手土産として引き渡して終わりかな」


 リューは、怖い事をしれっと告げた。


『赤竜会』は、『吠え猛る金獣』に対して大きな恨みを抱えているからだ。


 この手土産には、腰が引けていたレッドラもさすがに喜ぶだろう。


 その上で、レッドラが協力的になるかどうかは別だが、それもあちら次第である。


 リューはやれる事はやったので、部下達が再集結している場所に向かう。


 そして、一人も欠けていない事を確認すると、『次元回廊』でマイスタの街へと帰還するのだった。

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