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第805話 夜の女王ですが何か?

 リリス・ムーマが勤める夜のお店に、リューは直接足を運ぶ事にした。


 彼女は暗黒大陸出身の魔族にあたる淫魔族と人の混血なので、その姿は普通の人とは多少異なる。


 しかし、闇の力で変身する事が可能なので、淫魔族の特徴である角や尻尾は隠せていた。


 夜に溜めた闇の魔力で日中もその姿を維持しているから、リリス・ムーマは、普通に出歩く事も多い。


 まあ、夜の時のような色気全開に比べると、地味目の美女という感じではあったが。


 日中と夜のギャップが激しいリリス・ムーマであったが、彼女は夜の仕事に適性を持っている。


 お酒にとても強く、男を魅了する色気、そして、頭が切れるので室内のお客を把握しての接客能力が優れていた。


 従業員の事もよく見ており、フォローする事も忘れない。


 気遣いもできるから、お客どころか身内からの人気も絶大で、王都の『夜の女王』と呼ばれていた。


 だから、リリス・ムーマには、交際や求婚を申し込む男は多かったが、すでに惚れた男がいる事を宣言している。


 相手はまだ、未成年だという事で、どうやら親族らしい、という憶測が飛び交っていた。


 その為、リリス・ムーマの人気は衰えるどころか、家族の為に働いているとわかると、惚れ直してさらに貢ぐ男は多い。


 もちろん、相手とはリューの事であったが。


 そのリューが、夜のお店に会いに来る事は珍しい。


 別に避けているわけではない。


 単に、未成年である事を自覚しているので、出入りするのは外聞的によろしくないという判断だ。


 だから、管理の一切は女大幹部のルチーナに任せているのだが、そのルチーナも最近ではリリス・ムーマに任せているらしい。


 現場の人間が管理できるなら、それが一番という判断だ。


「若様! 会いに来てくれるなんて嬉しい♡」


 リリス・ムーマは、ここのところ会う機会が無かったリューの顔を見ると、普段の相手を蕩けさせるような妖艶なものではない自然な笑顔を見せて抱きついた。


 お客なら、このギャップでさらに貢ぐところだろう。


 リューは慣れたもので、


「お疲れ様、リリア。普段の活躍は報告を聞いているよ。今では、王都一の稼ぎ頭になっているようだけど、無理しない程度に頑張ってね」


 と笑顔で労う。


 それだけで、リリス・ムーマは、燃料補充ができるというものだ。


 実際、リューから放たれる闇の魔力が淫魔族のリリス・ムーマには絶好のエネルギーなのである。


「若様の為になら、いくらでも頑張ります!」


 胸が露わになりそうなきわどいドレス姿のリリス・ムーマが言うと、妙な想像をしたくなるのが男というものだ。


 しかし、リューはリリス・ムーマがそういう事はしないで今の実績を残している事を知っているから、勘違いはしない。


「今日は、お願いがあるのだけど……」


 リューがお店の中の事務所に移動しながら言葉を濁す。


 すると、それだけで何か察したのか、


「『星夜会』で出来る事ならば、なんでも」


 と応じた。


 そこで、リューは『竜星組』の幹部組員連続刺傷事件について話した。


「私もその事で、ルチーナさんやリーン様に相談をしようかと考えていました」


 頭の良いリリス・ムーマもリューの身内が連続で刺された事に、偶然ではないものを感じていたようだ。


「リリスも? ならば話が早いね。君はどう見てる?」


 リューは、このお色気全開の妖艶な部下がどのくらい把握しているのか確認した。


「私のところに集まる情報から、王都占拠事件に便乗して潜入したと思われる『亡屍会』が動いているのではないかと睨んでいます。すでにうちの女性従業員には特定する為に、新規のお客に的を絞って情報を上げさせています」


「仕事が早いね……!」


 リューは感心すると同意を求めるようにリーンに視線を向けた。


 リーンは黙って満足げに頷いている。


「若様の役に立つ情報だと思ったので……(頬を赤らめる)。──それでは私達『星夜会』に、『亡屍会』の炙り出しを任せてもらってよろしいですか?」


 リリス・ムーマはリューの役に立てそうだとわかって、その大きな胸ごと、上半身を前に突き出す。


「(この魅力に男は落ちるのか)う、うん。でも、あまりは無理はしないでね?」


「もちろんです! 体を張るのは訓練を受けている者のみで、他は情報収集が中心なので」


「……訓練? ……え? 何の?」


 リューも聞き覚えのない事だったので、思わず聞き返す。


「まだ、若様の耳には入っていませんでしたか……。実は、ルチーナさんと相談して能力が高く、信用できる従業員には特別給与を支払い、色々な訓練を施している最中です」


「そうなの!?」


「かなり形になってきたので、ルチーナさんが報告すると言っていましたよ?」


 リリス・ムーマはリューが驚く姿が新鮮なのか、嬉しそうに応じた。


 リーンは知っていたのか、黙って頷いている。


 どうやら、女子だけで情報共有していたようだ。


「じゃあ、ルチーナの総務隊や『竜星組』と連携できるようにしておいてね」


 リューは仕事が早ければ、多少報告が遅れても咎める事はしない。


 当然、ホウ(報告)レン(連絡)ソウ(相談)は大事だ。


 しかし、そのせいで仕事が遅れては本末転倒だとも考えているから、緊急時などは現場の判断を優先させている。


「そちらはすでに、何度か打ち合わせを重ねているので、問題ありません」


 リリス・ムーマは、仕事の時とは違うリューに対してのみ見せる屈託のない笑みを浮かべた。


「僕がこれ以上、言う事はないね。──リリス、あとは任せるよ」


 リューはこの大規模組織『屍黒』を裏で動かしていた実績のあるリリス・ムーマを信頼して、『亡屍会』の炙り出しを任せるのだった。

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