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第792話 狙い通りですが何か?

 リューは以前に部下にした蜥蜴人族の三人組、リザ郎、リザ吉、リザ助を慕う『赤竜会』本部の幹部組織『赤蜥蜴組』組長であるリザッドに三人と会わせる交換条件として、『赤竜会』のボス、レッドラとの面会を手配してくれるようお願いした。


 見る限り、リザッドは外様の組長だから、ダメもとでのお願いであったが、意外にリザッドは承諾する。


「今の『赤竜会』はケツに火がついて、俺達外様の組織も頼らないといけない状態だからな。特に帝国の組織『吠え猛る金獣』と揉めている最中だから、俺の頼みも無視はできないと思う」


 リザッドは、詳しい理由を聞かずにリューの交換条件に前向きな返事をした。


「理由を聞かないんですか?」


 リューはこのあっさりとした反応のリザッドに念の為の聞き返す。


 あとからその事で揉めても厄介だからだ。


「どうでもいいさ。大事なのはリザ郎の旦那達と俺達が再会できるかどうかだからな。『赤竜会』の事は二の次だ」


 どうやら、自分達を見限った帝国と対峙しているから従っているだけで、それ以上の忠誠はないようである。


「わかりました。それでは、『赤竜会』との繋ぎ、よろしくお願いします」


 リューは、大立ち回りをしなくて済んだので、安堵する。


 それに、話をする限り、『竜星組』を名乗らずに、とんとん拍子で進みそうだ。


 リューは、方針を変更すると、このリザッドが縄張りとしている街に『次元回廊』の出入り口を作る事にするのであった。



 リューは一度、マイスタの街に戻ると、ランスキーの部下達をリザッドの街に送り込んで、この日は王都自宅に戻る事にした。


 建物は完成したものの、まだ、開店していないランドマーク総合ビルの住居部分は、すでに入居がかなり進んでいる。


 それも、リューが狙っていた層の入居が続々と決まっていた。


 それは、各国の大使館に出入りする関係者などをはじめとした有力者達である。


 ランドマーク総合ビルの店舗は、ランドマーク商会だけでなく、ミナトミュラー商会、シーパラダイン軍事商会関係だけでなく、派閥貴族領の特産品を扱う店も入っている。


 前世で言うところのアンテナショップという感じだ。


 そのシステムを導入して、地方貴族どころか、各国の名物や飲食類を扱うお店も入れることにした。


 各国の関係者もその為、ここに入居した方が仕事として効率的という事で続々と賃貸契約を交わしている。


 リューの狙いはまんまと嵌まりつつあった。


 その狙いとは、各国の有力者との人脈を持つ為に、ご近所さん付き合いをする事だったのだ。


 この王都において、ランドマーク総合ビルは象徴的な建物と言っていい代物である。


 なにしろ七階建てのビルなど、類を見ない建築物だから、各国の有力者もそこに入居できれば、ある意味国の威信も守られるし、一定のステータスにもなる事から、入居希望者は自ずと集まる。


 すでに、ノーエランド王国のエマ王女達も優先して入居してもらった事で、宣伝効果は抜群であり、注目も集めていた。


 それに、今まで住居として使用していた場所と比べ、安全性が担保されている事、さらに、各国の関係者も入居するという事は、ご近所付き合いを通して距離を近づけられる可能性もある。


 さらに、このランドマーク総合ビル内には、会議室や事務所の貸し出しも行っており、一石二鳥どころか三鳥、四鳥の場所なのだ。


 だから、各国の関係者達は、効率も含めてこの魅力的な条件の賃貸住居を借りるのであった。


 これも、王都占拠事件により、危機感を感じた者が多かった事に起因する。


 リューはそれに付け入ってランドマーク総合ビルを提案し、建設したのだ。


 これにより、ランドマーク家が各国関係者と当たり前のように人脈が作れたうえ、スゴエラ侯爵派閥、ランドマーク伯爵派閥、東部のサクソン侯爵派閥関係者も入居した事で結束も固まり、その彼らも各国の関係者と人脈を作れる事になる環境が作れた。


 もちろん、入居にはランドマーク家の審査が必要であったから、違う狙いがある者を入居させるつもりはない。


 これにより、王都の一等地に近隣諸国にも影響を与えるような、象徴的な施設が出来上がったのであった。



「ふふふっ。エラインダー公爵のような地位とお金にものを言わせた立ち回りを、今から始めても追いつけないからね。人脈は、周囲から集まってくるようにして、短時間で友好的な関係を築ける状態にしたかったんだ」


 リューはすでに、入居者の交流スペースも作っており、そこで各国の有力関係者と気軽に話せるような仕組みにしてある。


 あと、これはリューのわがままで、歳の離れた友人であるオイテン男爵(昇爵した)の部屋も用意した。


 最初はオイテン男爵も年下の友人であるリューの厚意に甘えていいか迷うところであったが、昇爵祝いと寄り親であるノーズ伯爵の為にも、他の有力貴族や各国関係者と仲良くなれる場所は確保した方がいいと助言すると、承諾してくれた。


 リューとしても、オイテン男爵の情報網により、これまでかなり助けられていたから、それに報いた形である。


 ちなみに、オイテン男爵は帝国侵攻に伴い、人脈のある各上級貴族の与力貴族達を説得して、寄り親に動いてもらう事で兵を集め、自らも領兵と共に東部最前線に出向いて功績を上げた事が高く評価され昇爵していた。


 こうして、息子である幼いワース・オイテン六歳に爵位を譲れる地位を得たのである。


 その為、あとは、息子の成人まで、オイテン男爵がより一層、その地位を確固なものとするだけであったから、ランドマーク総合ビルに入居する事で、それも現実味を帯びそうだ。


 この為、オイテン男爵は、若い妻と息子ワースを王都に呼び寄せ一緒に住む事になる。


「高い投資だと思ったけど、リューの狙い通りにいきそうね」


 リーンは、リューの計算通りになりそうなので、納得した様子で頷く。


「それに、これらの邪魔をされたくなくて、エラインダー公爵が領地に戻らなくてはいけない状態をこっちから作ったというのもあるしね」


 リューはニヤリと悪い笑みを浮かべる。


 そうエラインダー公爵は、『王家の騎士』の称号を与えられて王都で絶大な勢いを持つ状態になっているのだが、なぜか慌てた様子で早々に自領に戻っていた。


 その理由が、領都でのトラブルにあったのだ。


 エラインダー公爵が軍を率いて王都まで上り王都を奪還後、その後は東部まで兵を進めたのは周知の事実であるが、その間にリューは部下のサン・ダーロ達を使って、領主と軍の留守で手薄になっていたエラインダー領都に色々と仕掛けていたのである。


 それが、エラインダー公爵の邸宅に潜入して放火させるというリューらしからぬ、あくどいやり口であった。


 これにより、大豪邸が全焼するというまさかの事態となり、エラインダー公爵が燃えると非常に困るであろうあらゆるものが、全て灰燼に帰したのである。


 サン・ダーロは、しっかり全焼させる為に、何日も部下と共に、消火が追い付かなくなるように火の回りが早くなる細工を色々と行ったらしい。


 だが、エラインダー公爵は慎重な人物なので、火事に対する備えも十分であろう事は予想できた。


 だから、前もってそれを潰しておくようにリューが指示していた結果でもあった。


「急いで戻ったという事は燃えたら困るものが、あったという事ね」


 リーンもこのリューのやり口には呆れるのであったが、実際、エラインダー公爵を慌てさせたのは痛快であったので、注意するような事は言わない。


「サン・ダーロの報告では侵入不可能な隠し部屋や隠し地下なんかもあったらしいからね。その辺りは重点的に燃やしてもらったよ。さすがに地下はあまり燃えていないかもしれないけど」


 リューはエラインダー公爵を王都から離れさせている間に、王家や王家派貴族にも勢力の建て直しの時間を作らせるのも狙いの一つであったから、部下の活躍に満足するのであった。

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