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【書籍化&コミカライズ】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第789話 やり方ですが何か?

 リュー達一行は一旦王都に戻り、夜になるまでそこでゆっくり休んでから、渡河を試みる事にした。


 リューは川の深く広い場所を『蒼亀組』から派遣されている道案内役の組員に教えてもらう。


「旦那、確かにここは向こう側の警戒網から外れてはいますが、それはこの広さと深さで渡河が容易ではないからですぜ? 本当に大丈夫ですか? 今からでも俺が小さい船を調達してきますよ?」


 組員は『蒼亀組』の恩人であるリュー達に恥を掻かせるわけにはいかないので、先にそう提案する。


「はははっ、大丈夫だよ。それじゃあ行こうか」


 リューは暗い視界の中、月明りを頼りに川の傍まで行くと、魔法を唱えた。


 すると、水中から湧き出るように水面に次々と足場が生まれていく。


 それは、向こう岸まで続いていっているようだ。


 ようだ、というのも雲に隠れながらの月明りだけでは、それを確認するのも難しいからである。


「こいつは驚きました……。こんな広い川に橋を作ってしまうとは……」


 組員は、その光景に茫然とする。


「橋と言っても飛び石の原理だからね。いくら周囲が暗くて視界が悪いとはいえ、大掛かりな橋は目立つだろうから、目立たないようにしつつ、川の流れをあまり妨げないように足場を作るならこれが比較的楽かなって」


 リューは謙遜しつつ、実際、その飛び石に乗って先に大丈夫か確認していく。


 そこにリーンとスードが後に続いた。


 組員も慌ててその後に続く。


 組員が最後尾を進むと背後の飛び石は役目を終えたとばかりに、崩れて水底に消えていくので、少し早足になる。


「慌てなくていいからね。渡ったタイミングで証拠を消しているだけだから」


 先行するリューが、最後尾の組員に聞こえるように声をかけると、組員はようやく安堵してリュー達のあとを付いていくのであった。



 リュー達はあっという間に広い川を渡ってしまうと、その場からすぐに離れ、近くの森まで移動する。


「こんなに目立たず、楽に渡河できるとは思いませんでしたよ」


 組員は、リューの地味ながら自分達では到底思いつかない魔法に素直に感心した。


「馬車ごとだったら大変だろうけど、人が移動するだけだからね」


 リューはそう応じると、『次元回廊』を開いて一瞬で消え、数分後には王都に待機している御者と馬車を連れて戻ってくる。


 一行は馬車に乗り込むと、一時間かけて一番近くの街付近まで移動し、そこに『次元回廊』の出入り口を作ると、この日は一旦、王都に戻る事にした。


 組員もこの日は、リュー達に甘えて王都まで『次元回廊』で移動し、そこで温かいベッドで休憩を取る事ができたのであった。



 翌日の朝一番で、リュー達はまた、東部の帝国占領地へと赴く。


 組員はまた、道案内として同行し、ランドマーク製の馬車で比較的に安全と言えそうな街まで移動する事にした。


 というのも、帝国が防衛線を敷いている近くの街は、戦時中に戦いが起きたところも多く、荒れているところも多いから、治安があまり良くないのだ。


 それに、リュー達の目的は、シバイン元侯爵派閥貴族の暗殺であったから、関係のない街に興味はない。


 だから、各貴族の領都に行きやすいであろう場所、シバイン元侯爵の領都のみを目指して移動するのみである。


 その為には、現地の地理に詳しい組員の道案内が欠かせないのであった。



 シバイン領都を目指しての移動中、リュー達は、途中にある派閥貴族の領都に寄る事にした。


 わざわざ遠回りするわけでもないので、こちらの刺客を送り込む時、楽だと考えたのだ。


 城門では、帝国軍の兵士による検問が行われていたが、防衛線の検問所と比べ、とても簡易的だったので、組員が用意していた偽装身分証も疑われる事無く楽に入れた。


「この感じなら、帝国領内は、各自に移動を任せてよさそうだね」


 リューが、馬車内でリーンにそう告げる。


「そうね。部下全員を各標的の貴族のところにリューがわざわざ送るわけにもいかないもの」


 リーンは手間を考えたのか、リューに同意した。


「それじゃあ、僕は街の雰囲気を確認しておきたいから、人気のないところに馬車を移動させて、御者さん達には王都で待機してもらおうかな」


 リューはそう告げると、御者に移動をお願いする。


「わかりました」


 御者はリューのやり方を心得ているので、すぐに了承すると、馬車を移動させる。


「偽装身分証があるとはいえ、ここは現在帝国領、それも裏社会の方では『赤竜会』の縄張りなので気をつけてくださいよ?」


 組員は慌てた様子でリューにそう助言した。


「大丈夫よ、私達は慣れているから」


 リーンがそういうのも当然である。


 以前にもこのやり方で『黒虎一家』の縄張りがある街を移動していたからだ。


 各街の情報を得ようと思ったら地元のワルに聞くのが手っ取り早い。


 だから、こっちから《《絡まれ》》に行くのである。


「この辺りは戦争前、『黒虎一家』が攻め込んできて抗争が激しかった街の一つなんですよ。そのせいで『赤竜会』傘下の組織は他所者に異常な程、敏感に反応するんで裏通りは本当に危険なんです」


 組員は、少し、怯えた様子でさらに助言する。


『蒼亀組』という一番勢いのある組の構成員でも、身の危険を感じるというのは、よっぽどの場所らしい。


「うん、わかったよ。気をつけて聞いてみる」


 リューは面を引き締めて頷くと馬車を降り、人の目がない事を確認してから、『次元回廊』を開いて馬車と御者、組員を念の為、王都に移動させた。


 そして、リューとリーン、スードは、以前のように裏通りに入ると、地元のワルに絡まれる為奥に進んでいく。


 裏通りには想像通り、地元のワルと思われる連中がたむろしていた。


 リュー達三人の余所者を確認すると、その連中は立ち上がり、こちらに近づいてくる。


 想像以上に反応が早いね……。それにもう殺意が迸っているなぁ。第一声はやっぱり、脅し文句かな?


 リューはその連中の様子を見て、他の街での反応と比べる事にした。


 ポケットに手を突っ込んだままの強面の男達が三人、リュー達にそれぞれ正面から近づいて来る。


 先頭のリューの前に立ちはだかった男は、次の瞬間、脅し文句の一つもなく、問答無用でポケットからナイフを取り出して、リューを刺す。


 これには、さすがのリューも内心ビックリせずにはいられなかった。


 普通、何かしら声をかけて相手がどこの人間か確認し、警告後に、殺傷沙汰に及ぶからである。


 だが、それもなく、まず、こちらを殺そうとしたのだから、危険極まりない。


 リューは、組員からの警告で警戒はしていたので、そのナイフも寸前で止める。


 リーンとスードも寸前のところで防いだ。


 三人は問答無用の殺傷沙汰に最初こそ驚いたが、そのまま、返り討ちにしていく。


 さすがに、リュー達が相手では、地元のワル達も相手が悪すぎる。


 あっという間に、駆け付けた連中も含めて、やっつけてしまうと、リューはいつも通り、この危険な連中を路上で正座させ、説教を始めた。


 もちろん、いきなり殺そうとしたからだ。


 普通は、一般人相手には警告なり、脅しなりするものだろうとリューがやり方について叱りつけると、理由も聞く事にした。


 すると、ようやく理解できる答えが返ってきた。


 それは、『黒虎一家』のやり口の一つに、リュー達のような金持ちの恰好をした姿で近づき、襲ってくる事があったからなのだという。


 その為、縄張りに入ってくる余所者はまず、殺してから身元を改める事がこの辺りの常識になっているそうだ。


『黒虎一家』のなりふり構わない襲撃方法の為、それに対抗しようと考えると、この手段が当然になっていたという理由に、リューも彼らの危険な行動に納得するしかないのであった。

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