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【書籍化&コミカライズ】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第777話 本家の評価ですが何か?

 ランドマーク伯爵家は、今回の大戦において、高い評価を与えられる事になった。


 南東部において、帝国南軍を相手に勝利した功績もさることながら、オサナ王子、リズ王女をはじめとした学園の生徒を領地で保護していた事や王都奪還の折には先王、前宰相などの重要人物の救出など、『王家の騎士』の称号に相応しい活躍を行った事は言うまでもない。


 その為、ランドマーク伯爵家は、王家の宝物庫のみならず、国庫からも予算を割いて褒美をもらう事になったのである。


 さらに、長男タウロは、先王、前宰相を救出した事で、父ファーザ、リューに続いて『王家の騎士』の称号を与えられる事になった。


 これにより、ランドマーク家は当主であるファーザから次代のタウロまで『王家の騎士』持ちが確定する事になったのである。


 ただし、一つ問題もあった。


 それは、オウヘ王子による国王の強制退位により、ランドマーク家に与えられていた魔境の森の『切り取り自由』の権限が消滅してしまった事である。


 元々国王エドワード一代のみの権限であったから、これにより、ランドマーク家は領地を広げる術が無くなってしまった。


 これはとても痛い問題である。


 ランドマーク家は、急速に出世した為、伯爵家に相応しい領地を持っているわけではない。


 だからこその『切り取り自由』の権限でもあったのだ。


 魔境の森の開拓は、ランドマーク家の生命線の一つであったから、それが出来なくなった事は大きな痛手であった。


 それに、王都での被害も大きい。


 今回の王都占拠事件において、オウヘ元王子はランドマーク家とその与力であるミナトミュラー家の商会関係を狙って略奪や放火を許していた為、甚大な被害を受けている。


 もちろん、今回の莫大な褒美で、被害を補填すればいいのだが、それでも頑張った割には手元にはほとんど残らないであろうと思われた。


 だが、良い面ももちろんある。


 それは、守護していたオサナ王子が国王への即位が行われる事だ。


 まだ、八歳のオサナ王子が即位すると当然、後見は必要でその役に『王家の騎士』であるランドマーク家を指名してくれているので、その権威は大きいだろう。


 しかし、これにも問題がある。


 エラインダー公爵も『王家の騎士』の称号を与えられたからだ。


 これにより、オサナ王子の後見人の一人に先王は当然ながら、エラインダー公爵、そして、ランドマーク家とミナトミュラー家という揉める事は必死であろう顔ぶれになったのである。


 そこに、他の公爵家も口を出す事も考えられるので、クレストリア王国の今後の運営はなお難しいものになりそうであった。



 旧ランドマークビル跡地──


「今回の褒賞でオウヘ王子から身を盾にしてオサナ王子殿下を救い出したヤーク子爵は伯爵に昇爵し、近衛騎士団の副団長に就任したのでしょ?」


 王宮では連日、今回活躍した者達の褒賞式が続いており、その一つにリューの友人であるヤーク子爵、もとい伯爵の昇爵があったので、リーンがそれを指摘した。


「うん。オサナ王子殿下がこの昇爵については強く周囲に求めていたからね。誰もこれには否定意見は出せないよ。まあ、昇爵する当人が一番困惑していたみたいだけど」


 リューは、その褒賞式に関係者として出席していたのでその時の状況をリーンに教える。


「真面目なヤーク子爵なら、『自分は他の近衛騎士に助けられただけ』とか謙遜していそうね」


 待合室で待機していたリーンが褒賞式での様子を想像して答えた。


「まさに、そうだったよ。部下達を多く死なせて自分だけ助かった、と悔やんでもいたからね。その中でオサナ王子殿下を助けられた事だけが生きる支えになっていたみたい」


 リューは真面目な顔になると、悲し気にそう応じる。


 今回の王宮では近衛騎士団が必死に王家を守ろうとして抵抗した結果、敵味方沢山の死者が出ていた。


 特に、近衛騎士団は多くの敵を討ち、道連れにする形で多くの者が亡くなっていたから、被害は甚大である。


 その近衛騎士団の建て直しも含めて、ヤーク伯爵はこれから大変だろう。


「忙しいうちは、ヤーク伯爵も自分の心の傷を意識する事はないだろうし、その間に時間が癒してくれると信じるしかないわね」


 リーンが真面目な表情を浮かべて答えた。


「うん。──あ、そうだ。明日はおじいちゃんとリーンのお父さんやお兄さんの褒賞式だけど、関係者としてリーンも今度は列席できるんじゃない?」


 リューが『次元回廊』で関係者を王都に連れていく事が条件で、早々に褒賞式が決まっている事を伝える。


「カミーザおじさんとパパ、リグ達数百人が参加するのでしょ? さすがに多いし、すでに一度、リュー達と褒賞式には参加したから、私はいいわ」


 リーンは元々家出して故郷を飛び出した手前、あまり、父リンデス、とリグとは顔を合わせようとしていない。


 何かあるとリューの従者だから忙しい、という理由で拒否する事もあるくらいだ。


「仲が悪いわけではないよね?」


「なにそれ? 私は別に嫌がっているわけではないわよ。ただし、リューの従者として務めを果たしているからそれを優先させているだけよ。──まあ、家族の小言を聞きたくないというのも、あると言えばあるけど……」


 リーンは建前と本音を半身であるリューにぽろっと告げる。


「はははっ! じゃあ、列席しなよ。僕もどうせ関係者として、また、行く事になるし」


 リューはそもそも『王家の騎士』としてオサナ王子次代の国王の後見の一人であるから、本当は全ての公務に列席してもおかしくないくらいであった。


 だが、さすがにそれでは身が持たないので、学生である事を理由に控えていたし、父ファーザも本領に留まって戦後の処理を行うという事を理由に王都には顔を出していない。


 代わりに長男タウロが王都に詰めて、オサナ王子の相談役の一人になっているが、こちらは後見人だからこそ、他の公務にあまり顔を出して関係貴族達の邪魔をしたくないという事で控えている。


 次男のジーロは、同じく戦場での働きが評価され、父ファーザと共に褒美をすでに貰っていたので、自領に戻っていた。


 リューのところで言えば、幹部のランスキーと執事助手のタンクがリューの代理で領兵を率いて戦場で活躍してくれたが、これはもちろん、リューの手柄になっている。


 リューは後方で戦場各地への運搬を担ってくれた事、さらには王家の保護などに活躍した事が評価されていた。


 ただし、敵の後方で特殊砲弾を使用して暗躍した事は秘密であったから、それは評価の対象には入っていない。


 それでも、昇爵を含む褒美による評価が高かったのは、地味に見えてもそれが国の大事を成すものであると認められたからだ。


 前線で活躍した者だけが評価されるのではなく、その前線の活躍を支える者の評価は同等と考えた先王、前宰相の考えが、反映されているのであった。


「褒賞式は当分続くけど、その後が怖いね」


 リューは、翌日の祖父カミーザ達の褒賞式よりも、それ以外の事を心配した。


「どういう事?」


 リーンがその言葉の真意を問う。


「そのまんまさ。オウヘ王子の極刑はもちろんの事だけど、今回の戦いに参加せず、様子見していた貴族達の処罰が待っているからね。その時、エラインダー公爵がどう動くのかも気になるところだし」


 リューがそう答えると、リーンは大きく頷いて納得するのであった。

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