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第693話 同時刻一斉襲撃ですが何か?

 数日後の未明。


『竜星組』『月下狼』『黒炎の羊』を中心とする『王都裏社会連合』による反撃作戦が実施されることになった。


 王都周辺の地方貴族の領地に勢力を持つ『屍黒』のアジトを、片っ端から襲撃するという前代未聞のこの作戦は、各担当の組織が共同して行われる。


 すでに、『屍黒』はボスであるブラックの正体を暴かれ、大幹部五人のうち二人も死傷者を出すことで動揺しており、王都裏社会への攻撃を一時的に停止して、アジトに戻って体制を整えている最中であったから、この襲撃は見事に嵌まることになった。


 特に、『竜星組』が『屍黒』の主なアジトを担当しており、それに伴って他の者達への指示も行っていたから、混乱することなく統制が整っていたことも重要であっただろう。



「よし、僕達も行こうか」


 リューは現在、とある地方貴族の領地にいた。


 リューの襲撃担当は、当然ながら『屍黒』のボスで『白山羊商会』の会長というホワックことブラックの大邸宅である。


 すでに、邸宅周辺には部下達を配置して逃げられない体制を整えているが、どうなるかはわからない。


 何しろ相手は、バンスカーの武闘派元大幹部である。


 これまで、その正体を隠し続ける慎重さも持ち、表の顔と裏の顔を使い分けるというやり方は、リューと重なる部分も多い。


 それでいて、王都裏社会全体に宣戦布告するという狂気性も持つ。


 その多面的な持ち主が相手だから、リューは二重三重に包囲網を敷いてこの場に来ていた。


 リューとリーン、スード、そして、メイドのアーサに執事補佐で元冒険者のタンクなど、ミナトミュラー家の家人も揃っている。


 タンクには包囲を敷いている部下達の指示を任せていた。


 だから屋敷突入はリュー達と部下の三十名ほどである。


 屋敷の門には、門番が立っており、リュー達は正面から仮面を付けて訪れた。


 門番二人は、こんな夜明け前の静寂の時間に、その異様な格好を見た瞬間、すぐに目の色が変わり、すぐさま屋敷の方に警告を発しようとする。


 だが、それに対してはリューとリーンは、未然に防ぐべく瞬時に距離を詰めた。


 そして、二人は、門番二人を一撃で仕留め、あとは部下に任せる。


 何事もなかったように、リューとリーンは、門扉をゆっくり開き、敷地内に入っていく。


 スードとその部下も後に続く。


 アーサは裏門から侵入しているはずだ。


「情報通りなら、屋敷の一定の距離に近づくと侵入者を察知する魔導具が設置されているはず。それが作動したらそこからは各自、時間との勝負だ。敵が態勢を整える前に制圧するよ。──散!」


 リューは早足で歩きながら、付いて来る部下達にそう告げると、部下達は各自、散っていく。


 そして、リューが屋敷の玄関間際に踏み込むと、鐘の音が鳴り始める。


 これが、侵入者を察知する魔導具ということだろう。


 だが、リューは、それを無視して、玄関の前に立つと、思いっ切り扉を蹴り飛ばす。


 扉はリューの本気の蹴りに、室内に吹き飛んだ。


 すると、すでに中で待機していた警備兵が、その飛んできた扉に当たって盛大に吹き飛ぶと気を失う。


「常備兵がいたのか。やっぱり、真っ白な商会長屋敷の反応ではないね」


 リューは、傍のリーンに告げると、二階への階段を上がっていく。


 だが、音を聞きつけて、警備がわらわらと湧き始めた。


 やはり、常日頃から警戒して警備兵を沢山屋敷に留めていたようである。


「襲撃だ! これは訓練ではない! 本番だぞ!」


 警備の一人がそう声を上げた。


 だが、リューはそれを気にするどころか、指揮官クラスだろうと判断して、一気に距離を詰め、その顔を思いっきり殴りつけて一撃で仕留める。


 リーンとスードもリューの左右に展開して、他の警備達に攻撃を始めた。


 リーンは、『風鳴異太刀かざなりのいたち』を抜いて、容赦なく相手を葬っていたし、スードも専用ドスを抜いて、聖騎士専用技である『聖光剣』を発動して敵を斬っていく。


 リューは一人真っ直ぐに、ホワック会長もといブラックの寝室に向かう。


 すでに屋敷の見取り図は入手しており、その構造はリューの頭に入っているのだ。


 すると、騒ぎに起きてきたのか、ホワック会長の家族ということになっている息子二人が廊下に出てきた。


「あなたは誰ですか!? ここは、僕達の家ですよ!」


 と的外れなことを言って二人は接近してくる。


 年齢は、リューと同じかそれ以上だろうか? 情報では十五、六歳らしい。


 その二人が、リューの早足を塞ぐように近づいて来る。


 だが、リューは歩みの勢いを止めることなく、前に進む。


 そして、次の瞬間、その二人の息子の手が、目にも止まらぬ動きを見せた。


 リューは、それに合わせて自慢のドス『異世雷光いせのらいこう』を抜き放ち、何かを断つ。


 それは音も無くサラッっと地面に落ちた。


「糸、それも鉄斬糸と呼ばれる特殊な魔物が作り出す特別な糸だね?」


 リューはすぐにこの息子二人の手の内を、すぐに見破ってみせる。


「くっ! 我らの秘技を初見で、それもこの距離で見破るとは!」


 息子の一人が、子供とは思えぬ苦虫を嚙み潰したような表情になって、リューを睨む。


「時間が勿体ないから通らせてもらうよ」


 リューは、息子二人の相手はもう終わりとばかりに、二人の間を通り過ぎる。


「「甘く見るな!」」


 二人はこの大胆不敵なリューの態度に、再度、鉄斬糸を使って襲おうとした。


 だが、次の瞬間、二人を雷が襲う。


 リューのドスから発せられた雷撃は、鉄斬糸を体に仕込んでいた二人を感電させ、瞬時に真っ黒こげにする。


「「かっ……!」」


 息子役の殺し屋二人は、煙を吐いてその場に倒れるのであった。


 リューはそのまま、ブラックの寝室の扉の前に到着する。


 そして、そのまま扉を蹴破ろうとすると、内側からその扉が開いた。


 いや、室内から噴き出す闇の塊に圧されるように開いたのだ。


 その闇は廊下にも広がり、リューを飲み込み、一瞬で視界を奪う。


「商会長宅に押し入ったただの賊ではないようだ。まあ、ここまで、俺に近づく者がただの賊のわけがないな」


 室内の闇から、ブラックと思われる声が、反響して聞えてくる。


「白山羊商会のホワック会長、いや、闇魔法の使い手である『屍黒』のボス・ブラック。今日がお前の命日だ」


 リューは、何も見えない闇に向かって、ブラックに死の宣告をするのであった。

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― 新着の感想 ―
こんばんは。 息子役の殺し屋二人の技、『北○の拳』のライ○とフウ○の二神風雷拳みたいな感じだったのかな?
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