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第692話 祖父の影響力ですが何か?

 いよいよ『王都裏社会連合』は、反撃の為に動き出すことになった。


 リューは、ランドマーク本家から祖父カミーザ達を呼び寄せている。


 今回、王家も動いていることもあり、『王家の騎士』の称号を持つランドマーク家とミナトミュラー家は、率先して兵を出すことになっていたからだ。


 もちろん、祖父カミーザは王家のことがなくても、やる気満々であったが……。



 祖父カミーザは、意外にほとんど訪れたことがないマイスタの街長邸に、リューの『次元回廊』を利用してやってきていた。


「いよいよじゃな、リュー!」


 祖父カミーザは、当然の如くノリノリである。


 本当は王都のランドマークビルでも良かったのだが、あちらに祖父カミーザや領兵達を集結させると、警戒される恐れがあるとして、一旦、マイスタに来てもらった形だ。


「おじいちゃん、まだだよ? それに、『屍黒』の縄張りがある地方貴族領に乗り込むことになるのだけど、僕達『王家の騎士』の称号持ちでも表立ってはいけないから、裏社会の人間を装って討伐することになるので、その辺は気を付けてね?」


 リューはあらかじめ、祖父カミーザに念を押す。


「わははっ! わかっとるわい!」


 祖父カミーザは、孫の頭をくしゃくしゃに撫でる。


 以前の『闇組織』対『三連合』抗争の時も暗躍した経緯があるので、そこは大丈夫だろうが、暴走しないように気を付けてもらおう。


 ランドマークの領兵達も普段、魔境の森で魔物退治に従事している猛者達だけあって、気配を消して標的に接近することなどは獣並みであるからとても心強い。


「それじゃあ、うちの人間に襲撃場所へ案内させるけど、襲撃時刻は統一しているからその辺りを気を付けてくれたら助かるかな」


 リューは、祖父カミーザ達の役割を、改めて確認する。


「それはいいが、襲撃箇所が多いのう。うちの担当だけでも、八か所あるぞ?」


 祖父カミーザは、精鋭である領兵隊を八部隊もの数に編成していることを指摘した。


「うん、相手は王都裏社会全体に宣戦布告するほどの大きさだからね。『王都裏社会連合』全体で襲撃するところを合わせると、数十か所あるから」


 リューもこれだけの規模は初めてのことであったから、祖父カミーザの指摘には説明しながらも苦笑するしかない。


「そんなにか? それはまた、大規模じゃのう。まあ、うちの連中ならその辺の騎士十人程度相手でも引けを取らないだろうから大丈夫じゃろう。それにしてもそれだけの規模の組織を一度の襲撃で壊滅させようと考えるとは、うちの孫も無茶をするわい! わははっ!」


 祖父カミーザは、頼もしく成長しているリューのことが余程嬉しいのか、孫を慈しむじいじという様子である。


 その内容が裏社会の大組織を壊滅させる為なのだから、普通は笑えない話であるのだが……。



 マイスタの街長邸は、人の出入りが激しい。


 それこそ、街長として、地域の関係者から領兵、役人は当然のこと、ミナトミュラー商会関連で各部門の職員達の出入りもある。


 そこに、街長邸に定期報告に上がる『竜星組』下っ端や連絡員などが、続々とやってきた。


 多くの者は、祖父カミーザと率いる領兵隊の顔ぶれを見ると、その場に固まって礼儀正しく挨拶をする。


「し、師匠、お久し振りです!」


「領兵隊のみなさん、お久し振りです!」


「その折は大変お世話になりました!」


「また、会えて光栄であります!」


 といった具合に、祖父カミーザと領兵隊の顔を見ると、『魔境の森』での死線を掻い潜った日々が思い出されるのか、一瞬で劇画タッチの顔に戻る者も少なくないのであった。


「さすが、おじいちゃん達。みんなから尊敬されているね。はははっ!」


 リューはそう言うと、若い衆の反応が笑えるのであった。


 特に、『竜星組』の若い関係者達を中心に、更生施設ならぬ、育成施設行きになった者は多いから、マイスタに出入りする若い衆は、祖父カミーザと領兵隊の顔は忘れようがない。


 それに、リューの護衛を務めるスードもそれは同じで、いつの間にかシリアスな顔つきになっている。


 どうやら、みんな、祖父カミーザとは、『魔境の森』の思い出で繋がっているようであった。


「わははっ! 何人かは、たるんだ顔をしとるのう。この反撃作戦が終了したら、また、『魔境の森』で鍛え直してやってもいいぞ?」


 祖父カミーザが笑って冗談を言う。


 すると、若い関係者達はその一言で震えあがると、全力で首を横に振るのであった。



 祖父カミーザとランドマーク領兵隊は八部隊に分かれると、リューの部下達に案内されて各地へと向かう。


 それを、お世話になった多くの若い衆が、見送ったことを記述しておく。


 やはり、地獄を見たとはいえ、そこで頼りになった、カミーザと領兵隊は特別なのだ。


 誰もが、青の地獄の日々を体験して自分の無力さを知り、命の尊さを知るきっかけになった『魔境の森』での日々を誇りに思っている。


 その経験をさせた祖父カミーザと領兵隊を慕う気持ちは当然であった。


「凄いね、『魔境の森』育成施設は」


 リューは笑って、その光景を見てリーンに漏らす。


「ふふふっ。そう言いながら、リューの顔も影響されたのか、シリアスモードになっているわよ?」


 リーンは笑ってリューの顔を指摘する。


「え? 本当!? ……やっぱり、魔境の森は特別だからね。奥に行けば行くほど、命のやり取りが厳しくなるし、それを思い出すとスイッチが入るよね。でも、お陰でみんな気合が入ったからいいんじゃない?」


 若い衆の間にあった、リューの指揮のもとなら大丈夫、という安心感で多少緩んでいた気持ちを引き締めてくれたことに内心喜んだ。


 それに、若い衆が気を引き締めると、古参の者達もその雰囲気に緊張感を持つ。


 今回の『屍黒』との抗争は、大幹部二人を死傷させて混乱させている今、大規模な各個撃破という策で臨むだけに、この緊張感はいい方に向かいそうだと思うリューであった。

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