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第663話 消える相手ですが何か?

 リューとリーンは、地下の抜け道を通ってそこから逃げたはずのバンスカー、もしくはそれに相当する幹部を追いかけていた。


 しかし、


「行き止まり!?」


 リューは驚いて他に抜け道がないか周囲を見渡す。


 明らかに最近崩れて道を塞いだと思われる通路以外、抜け道はないようだ。


「これ、おかしくない? 最近崩れて道を塞いだのは土の具合ですぐわかるけど、でも、この感じ、《《今日》》ではないわよね?」


 リーンが意味あり気に指摘する。


 リーンの指摘通りなら、多分、隠し通路を壊したのは『黒炎の羊』のドーパーだろう。


 後背を絶って、バンスカーを迎え撃つつもりだったのかもしれない。


 だったらなおさらおかしいと考え込む。


 それは、先程、死んだふりをしていた敵二人は明らかに誰かを逃がす為に時間稼ぎをしようとしていたと感じていたからだ。


 だが、隠し通路は塞がれている。


 ならば、その誰かはどこに逃げたのか?


「……もしかして、さっきの部屋にまだ、誰かいた……?」


 リューはそこで、一つの答えに行き着いた。


 あの時、敵二人と誰かは抜け道が塞がっていることを知っていて、死んだふりをすることでリューとリーンをやり過ごそうとしていたのならば、どうだろう?


 だが、リュー達は引っかからず、リーンが逃げ道を塞いでいた。


 その為、敵は誰かを逃す為にリューと戦闘を行い、こちらの隙を作ろうとしていたのであれば?


 リューはそう考えると、引き返す為に走り出す。


 それをリーンも追いかけながら、


「私の索敵能力には誰もかかっていないわよ?」


 とリューの仮説に驚きながらもそう答える。


「来る時、リーンの索敵にもあまり引っかからない集団がいるって言ってたでしょ? その中に姿や気配を消せる能力持ちがいたとしたら?」


「その誰かがあの場に潜んでいたから、二人の男はあえて私達を抜け道に向かわせるように仕向けてやられたということね?」


「そういうこと!」


 リューは元いた室内に戻ると、そこも出ようとして、地面を見る。


 そこには、リューが高火力の『対撃万雷』で周囲のものを消し炭にした時に出た灰を踏んだのだろう、リューとリーン以外の足跡が残っており、それが地上に向かって続いている。


「やっぱり誰かいたんだ! ──追うよ、リーン!」


 リューはその足跡がバンスカーのものかもしれないと考えると、急いで階段を駆け上がるのであった。



 地上に出ると、リューの部下達数名が、深手を負って倒れていた。


 そこには女幹部で実働部隊のボスであるルチーナが部隊を連れて合流しており、部下の治療に専念している。


「若、うちの連中が突然背後から現れた男に刺されたわ!」


 ルチーナはすぐにリューとリーンに気づいて、報告する。


「わかった、多分それが敵のボスかもしれない! ルチーナは引き続き現場の指揮をお願い。──リーンは、みんなの治療を! あとは僕が追いかける!」


 即座にそう判断するとリューは、敵のもと来た経路を引き返すと考え南に走る。


「リュー、一人では危険よ! ──ルチーナ、リューに部下を数名付けて!」


「わかったよ、姐さん! ──お前ら若を追いかけな!」


 ルチーナは、そう言うと側近の部下三名に後を追わせる。


「「「へい!」」」


 部下三名は、返事をすると遠のいていくリューを追って屋敷を出るのであった。



 リューは自分の気配を消し、音もたてずに街の裏通りを暗闇の中疾走する。


 すると前方に微かな足音がした。


 追いついた!


 リューは南の防壁に辿り着く前に追いつけたことに安堵する。


 そこから脱出されたらどこに向かうか見当もつかないから、そうなると逃げられることは目に見えていたからだ。


 角を曲がると、目の前に暗闇を走る男と思われる背中が見える。


 リューは何も口走ることなく、マジック収納から『異世雷光いせのらいこう』を取り出すと黙って抜く。


 その時、微かに鞘音が鳴った。


 次の瞬間、それに反応するように目の前にいた男が一瞬で姿を消す。


「!」


 リューは咄嗟に男が消えた辺りを斬りつける。


 だが、手応えは無く、リューは空振った。


 ただの透明化能力じゃない!?


 リューは手応えの無いドスに驚きつつも、敵の分析を行う。


 五感を集中させて、敵の動きを探る。


 逃げるにしても何かしら気配を感じるはずだからだ。


 次の瞬間だった。


 背後に殺気を感じ、無意識に体を捻って相手の攻撃を躱そうとする。


 敵の剣はリューの脇腹をしたたかに傷つけ、次の瞬間には姿が消えた。


 だが、その時リューは敵の呼吸を聞き逃さなかった。


 敵は自分を刺す瞬間、息を吐き、次の瞬間大きく呼吸をしてから消えたのだ。


 もしかして、呼吸を止めている間しか完全に消えることができない……?


 リューはすぐにその仮説を立てた。


 そして、さっきはこちらの奇襲に気が付くのが遅れて大きく呼吸できずに消えたからすぐに現れたのではないか? とも考える。


 それなら、今もあまり大きく呼吸できなかったはず、逃げるか、それとも僕をここで仕留めようとするかどうか?


 リューは判断を迫られる。


 もし逃げようと距離を取るなら、この先に向かうはず。


 リューは南に向かう道を睨むと、そちらに向かって走った。


 すると、次の瞬間、目の前に敵が現れる。


 予想が当たったのだ。


 敵は、相当呼吸を我慢してきつかったのか「ぷはっ!」と息を吐き、こちらを振り返る。


 そこに、リューが迫っているので目を見開いて驚いてるのがわかった。


 リューは、届くと判断すると、ドスを敵に突き刺す。


 すると敵はリューの渾身の突きを手にしていた短剣で受け流した。


「!」


 これにはリューも驚いた。


 逃げるのがうまいだけの相手だと思っていたからだ。


「はぁ、はぁ、はぁ……。仕方ない……。相手をしてやろう。ここで危険分子は排除しておいた方がいいだろうからな」


 敵はそう言うと、もう呼吸を止めて消えることなく、手にした短剣を構えるのであった。

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― 新着の感想 ―
呼吸を止めてる間だけ能力が発動…ギニ○ー特撰隊のグル○みたいなデメリットしてんなコイツww
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