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62話 チョコの登録ですが何か?

 ランドマーク領内の事とはいえ、村の大移動は驚きを持って領内では騒がれた。


 その事で豊穣祭で領民の間で話題となったあの『チョコバナーナ』の原料を栽培する為の移住である事がわかると、その栽培に興味を持つ個人もぽつぽつと現れた。

 コヒン豆栽培と水飴の原料の大麦、もち米栽培もお金になるが、迷ってそれに手を出さず、周囲から後れを取った人々だ。


 リューが領都の集会所で説明会を開くとその人達が参加してきた。


 中には、魔境の森の中の畑に批判的な者も現れたが、リューはバッサリと、


「そう思われる方は参加しなくていいんですよ?こちらも強制する気はありませんから」


 と、言うと説明を続けた。


 言われた者は周囲からも、


「お前は何をしに来たんだ?」


「魔境の森の環境でしか育たないって坊ちゃんは説明してるだろ!」


「今の現状を変える気が無いなら帰れ!」


 と非難されるとバツが悪くなったのか集会所から出ていくのだった。


 そんな小さいトラブルもありながらも説明会は無事終わり、移住希望者が現れた。

 やはり、村が丸々移動した効果で安心感もあったのだろう、さらに同じ考えの者が周囲にいる事で集団心理も働いて決断する者も続々と現れた。


 これ以上増えても困るのでこの希望者全員で一旦、定員限界とする事にした。


「それでは、説明通り家も用意してありますので、各自準備が出来次第引っ越しをお願いします。魔境の森の村には、もう、移住者がいて研究と作業は始まってますので現場の責任者に話をちゃんと聞いて下さいね」


 こうして、カカオン豆とバナーナの栽培の為の人員確保は終了した。

 あとは、生産体制を整え、軌道に乗るのを待つだけだ。


 加工する為の工場はすでに領都に建築し始めている。


 そうだ、商業ギルドに『チョコ』を登録しないと。


 リューは集会所からそのまま、商業ギルドに直行するのであった。




 商業ギルドに到着すると、リューをギルドの表に視認したギルド職員は慣れたもので、登録手続きの書類を用意し始めた。


「リュー坊ちゃんいらっしゃいませ。では書類も用意してますので奥にどうぞ」


 当り前の様に、奥の部屋に通された。


「用件を何も言ってないのに…。ちょっと、慣れ過ぎてない…?」


 リューはギルドの対応の早さに呆れた。


「いえいえ、そんな事はありませんよ。それで今日はやはりあの『チョコ』の登録ですか?」


「う、うん」


「そう言えば出入りの商人に『便器』の商品化の話は無いかと、聞かれますよ。この領都では多くのトイレで見かけますから、契約したがっている商人は多いですよ」


「まだ、量産化するには安定して窯で焼く技術が追いついてなくてね。まだ、もう少しかかるかな」


「なるほど、”もう少し”かかるんですね。良い情報をありがとうございます」


 商業ギルドでは情報がお金になる。


 昨今のランドマーク家の商売情報は、商人なら喉から手が出る程欲しい。

 何しろ飛ぶ鳥を落とす勢いなのだから、それに一枚噛めれば必ずお金になると思うのが商人として当然だろう。


 そういう事なので、最近では近隣の大商会などもこの領都に支部を作る計画が上がっているそうだ。

 それはもっともで、ヒットを出し続けているこの地に支部を置かないで放っておく方が利口とは言えない。


 商業ギルドランドマーク支部の職員としても、この地がこれからもどんどん発展していく事は容易に想像が出来たのだった。



 無事リューは『チョコ』の特許登録をし終わった。


「じゃあ、また何か考えたら来ますね」


 表までギルド職員が見送る待遇でリューは商業ギルドを後にした。


 それを見かけた商人達は慌てて商業ギルドに押しかける。


「ランドマーク家の坊ちゃんが来たという事は何か登録したのか!?」


「情報を売ってくれすぐ!」


「あ、私が一歩早かったから順番を守れ!」


 受付はすぐに商人達が情報を得ようと揉み合いになった。


「みなさん、落ち着いて下さい!みなさんわかってらっしゃると思いますが、ランドマーク男爵家の情報は高いですよ?」


 ギルド職員は指でお金の形をしてみせると、商人達は各々お金の入った革袋を出すと、


「「「その情報、買った!」」」


 と、口を揃えるのだった。

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