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61話 村の大移動ですが何か?

 出店でのカカオン豆アピールはすぐに各所に影響を及ぼした。

 まずはいつもの如く、商人が屋敷に訪れた。

 もちろん契約したいが、今の状態ではほとんどめどが立たないのでこれは断りを入れた。


 次に各村の村長がうちの畑で生産したいと打診があったが、環境的に無理だと説明した。


 魔境の森だと出来る事を説明すると、


「村の者をそんな危険な場所には行かせられない」


 と、村長は断った。


 それに、自分のところの村人が減るのは村長的には喜べないはずだ、移住者を募る事はしてくれないだろう。


 次に現れたのは、旧エランザ準男爵領の端に位置する村長だった。

 現在はもちろんランドマーク領なのだが、合併した為、領内では領都から一番離れた村になったので、今はあんまり村の雰囲気は良くないらしい。


 そこで、コヒン豆の生産をうちでもやるかどうかを話し合っていたのだが、他の村から出遅れた格好で今は一時出ていた援助金も生産が安定してきたので止まっていた。

 そうなると生産できる数年後まで我慢してやるしかないのだがそんな体力は村にはなかった。


 一応、今まで通り、畑を耕していれば食えない事はないのだろうが、他のコヒン豆を栽培してる村に比べたらじり貧なのは間違いなく、緩やかに廃れていくだろうと村長は危機感を持ったそうだ。


 そこで、豊穣祭で口にした『チョコバナーナ』に衝撃を受けた。

 聞けば、まだ、この栽培には誰も手を出していないという。

 今なら援助金も出るというし、それならば村人達を説得して移住もする覚悟だと熱弁した。


「今の土地を捨てる事になりますよ?」


「このままでは、村はどちらにせよ、廃れます。ならば、村人の幸せの方を村長として優先します!」


「…わかりました。幸い用意した土地にはカカオンの木はかなり生えてるので、生産量は結構見込めます。ただし、一から育てると五年以上を要するので覚悟はして下さい。もちろん、そこまでは責任を持って支援します。」


「わかりました…、お願いします!」


 村長はリューに頭を下げた。


 ファーザには前もって魔境の森の側への移住者募集は許可を貰ってるので、大丈夫だが、まさか、村が丸々移転するとは思ってないだろう。



 ランドマーク邸の執務室。


 案の定、ファーザに報告すると驚かれた。


「村長はそれでOKしてるのか?」


「はい、あちらから言い出したので」


「…そうか。あの村の事はどうにかしてやらないとは思っていたが、そういう決断をしたか。よし、最大限の支援を惜しまないと伝えておいてくれ」


 ファーザは、そういうと机の引き出しからお金の入った革袋を取り出して、さらに、


「これは移転や今後の出費に対する準備金として、村長に渡してくれ」


 と、リューに大金を預けるのだった。



 端の村の村人達は日頃から危機感を抱いていたのか、村長の人望なのかほとんどの者が移住に賛成した。

 一部の者は、隣の村に合併される事を望んだので、そのように取り計らった。


 いざ、移住してみると、魔境の森と城壁で区切られた内側に集落はあって、家も立派だった。

 側に砦もあるので何かの場合は避難も容易そうだ。

 それに今までの村と違って道も石畳で、領都まで数時間の距離なので利便性も悪くない。

 カカオン畑までも1本の専用道路で移動できて、畑は城壁で覆われ、魔境の森とは隔離されているので、思ったよりも安全そうだ。


 良い意味での環境の変化に、移住してきた村人達は自分達の判断に十分満足するのだった。


 カカオンの一からの栽培については、村人とリューでカカオンの木を直接前にして話し合いが行われ続けた。


 魔境の森の特殊な環境なので、村人達もこの初体験にこれまでの植物の育て方でいいのか困惑もあったが、元からあるものからの収穫だけでも収入が十分得られ、それは年2回収穫できるので安定しますよと、リューから言われたので安心して研究する事にした。


 城壁の外から時折、魔物の声がするのが怖いと漏らす村人もいたが、見張りの領兵もいるし、いざとなったら専用道路から砦まで逃げればいいと説明を受けて少し、安心したようだったが、こればかりは慣れて貰うしかないだろう。

 たまに避難訓練をした方がいいのかもしれない。


 リューは前世でサツ(警察)のガサ入れ(家宅捜査)を想定した訓練を身内(組の人間)でやっていた事を思い出すのであった。

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