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第548話 続・海戦ですが何か?

 捕虜にした敵船員二人は別個の船室に軟禁し、尋問をする事にした。


 嘘を自白する場合があるし、お互いが示し合わせて答える事がないようにする為である。


 海賊の船員二人は、当初、嘘が多かった。


 海賊行為自体やっていないととぼけていたし、雇い主も適当だった。


 それにリュー達が駆けつけた時に燃えていた大型船二隻についても、自分達が来た時にはすでに燃えていたと証言した。


 しかし、中継地点であるファイ島から出港した船である事はわかっていたし、その数も確認して知っている。


 つまり、炎上していた大型船のうちの一隻は海賊船の仲間の船だとリューはわかっていたから、もう一隻がヤーボ王子を乗せた船の可能性が高い。


 ただ、そうなるとヤーボ王子の船団は大型船二隻、中型船二隻、合計の四隻の一団だったから、数が合わない。


 もしかしたら、駆けつけた時にはすでに何隻か沈んだ可能性もあり、その辺りを吐かせる為に部下に尋問をさせるのであった。



 リューとリーンは甲板上で一時間ほど船長と話していると、部下が尋問の結果について報告に来た。


 その内容だが、大型船二隻の内、一隻はやはり海賊のものらしい。


 なんでも、ヤーボ王子の船団との海戦では、奇襲で護衛の大型船一隻をすぐに沈める事に成功したが、ヤーボ王子の旗船は魔法大砲の魔法弾を何度も弾くほど高性能な防御魔道具を積んでいたらしく中々沈められなかったらしい。


 それに旗船に接弦して直接乗り込もうとしても、近衛騎士団が頑強に抵抗してそれどころではなかったのだという。


 その間に、魔法大砲によって中型船一隻を沈めたのだが、不意にもう一隻の中型船が逃げ出したという。


 海賊はヤーボ王子の乗る旗船を沈めるのが狙いだったから、逃走する中型船は無視し、最終手段にとってあった大型船をヤーボ王子の旗船に突撃させ自爆する方法を使用して炎上させたという事だ。


「……つまり最初から王族の暗殺が目的だったという事だね? それで雇い主は?」


 リューは想像通りの答えを聞いてその大それた計画の主犯格を確認した。


「それが……、例のソーウ商会らしいです」


「ソーウ商会!? また……、かぁ……」


 リューは嫌な顔をした。


 ソーウ商会とは南部の裏社会で大金が動く時に名前がよく上がる商会名で、裏にはエラインダー公爵勢力があるのではないかとリューは睨んでいるが、その証拠はまだ全く掴めていない。


 そして、エラインダー公爵の地方における闇勢力を指揮していると思われるのが、顔から体にかけて火傷跡のある元近衛騎士団隊長、バンスカーという男だ。


 リューがこの名前を王女リズから聞いて、調べさせているが表に全く浮上してこないから、今回のヤーボ第三王子親善使節団襲撃事件と結びつける事が難しいが動機はある。


 それは王位継承権争いだ。


 エラインダー公爵が推す、オウヘ第二王子は現在、王位継承権最下位に落とされている。


 だから、上を消す事でまた、有力候補に浮上させるつもりではないかと見ていた。


 そんな事を考えていると、もう一人を尋問していた部下が慌てて報告に来た。


「大変です、若! エリザベス王女親善使節団の方も襲わせるべく、別の海賊が向かっているそうです!」


「え!? リュー、急いでリズ達と合流よ!」


 リーンは部下の情報を聞いて、いつになく慌ててリューを急かす。


「落ち着いてリーン。あっちにはうちの虎の子である『竜神丸』が同行しているんだよ?」


 リューはそれ以上は言わない。


 それにその『竜神丸』の船長は元海賊のヘンリーである。


 あの男が、元同業者相手に後れを取るとは思えない。


 想像通りなら、今頃は……。


 リューはそう考えると、容赦のない惨劇を予想するのであった。



 その頃、ヘンリーは船団に急接近してくる大型船三隻、中型船二隻という大船団の船影を確認していた。


 ヘンリーはすぐに操舵して不審な船団と王女の旗船、『エリザベス号』との間に船体を入れる。


「王女殿下の旗船に手旗信号だ! 不審船接近中、我、迎撃態勢を取る、とな!」


 ヘンリーはそう船員に大声で告げると、大船団に対して目を凝らす。


「……この距離の詰め方は、明らかにこちらを目指している操船だな……。──きな臭ぇ。船員、八門全てに特殊実弾の装填準備!」


『竜神丸』には船首に一門、船尾に一門、両舷に三門ずつ合計八門もの魔法大砲が据えられている。


 その敵船団は右舷から接近中だったから、右舷の三門だけに装填すれば良さそうなものだが、ヘンリーはそう判断しなかった。


 不審船団はこちら真っ直ぐ近づいてきて、一定の距離まで来ると、メインマスト上部に海賊旗を掲げた。


 この距離ならもう逃げられないと判断しての宣戦布告である。


 それを確認して不敵に笑みを浮かべたヘンリーは即座に、


「若様の留守中に王女殿下の船を狙う奴らに手加減はいらん! ──放て!」


 と間髪を入れずに命令する。


 船員も躊躇なく魔法大砲を放つ。


「面舵一杯!」


 着弾を確認する事なくヘンリーは船首を敵船団に向けるように命令を下す。


『竜神丸』が『エリザベス号』から離れていく。


 その時である。


 放った特別製の実弾が不審の大型船団の先頭を進む中型船二隻に見事に着弾、見事なまでの直撃で仕留め、大破した。


 残り一発はとんでもない大きさの水柱を立てる。


 三発で中型船二隻も沈められれば、御の字である。


 敵大型船団はその威力に驚いたのか反撃をする為に面舵を切り、こちらに向かってくる『竜神丸』に対し、左舷を向けて魔法大砲を放つ姿勢を取ろうとした。


 その間に船首を敵船に向けた『竜神丸』は、正面に備えてある魔法大砲を放つ準備が整っている。


「──船首砲、放て! ──そして、面舵一杯!」


 ヘンリーは船首の魔法大砲を即座に放つと今度は、左舷を敵に向けるべく、『竜神丸』に円運動をさせるように面舵を切った。


 船首から放った実弾は敵大型船三隻の一番前を進む船に見事の直撃。


 派手な音を立てて爆発し、大炎上した。


 後続の大型船二隻はそれを避けるようにしながら、『竜神丸』に対し左舷を見せ、今度は彼らが魔法大砲を放つ。


 こちらが実弾に対し、あちらは魔石を利用した魔法弾であるが、それが四発次々に『竜神丸』を襲う。


 だが、『竜神丸』に積んである防御魔導具は、ミナトミュラー商会開発研究部門が作った大型船用のものである。


 魔法弾四発は『竜神丸』に着弾する前に空中で弾けると霧散した。


 その間に、『竜神丸』は面舵を切って左舷がすでに敵船に対して向いている。


「ちょっと、ビビったが、こちらは無傷だな。──よし、左舷砲門放て! そして面舵一杯!」


 立て続けの魔法大砲が火を噴くと敵船に三つの砲弾が吸い込まれて行き、着弾する。


 一番前を進む船に二発、そのあとの船に一発それぞれ的中し、大爆発を起こした。


 二発直撃した船は、即座に沈没し、一発直撃の船は炎上しているが、まだ、動いている。


 どうやら、まだ、操舵室は無事なようだ。


『竜神丸』は回頭し敵に船尾を見せると、


「船尾砲、放て!」


 とヘンリーが命令する。


 最後に放った一発は、船体を破壊されマストを炎上させながら逃げようとする大型船に吸い込まれて行くと、見事にその船体の横に着弾。


 大爆発が起き、大きな横穴を開けた大型船は、その穴から浸水し、あっという間に沈んで海の藻屑になるのであった。

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