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第525話 謎の商会ですが何か?

 リューは王女リズと王女エマを引き合わせる事に成功し、その親交にも一役買う事が出来た。


 お陰で次男ジーロも両王女からの覚えもよい。


 リューとしては次男ジーロの昇爵を願ってのお膳立てではあったが、それと同時にまだ、浮いた話がないジーロの相手候補を引き合わせる事も狙いの一つであった。


 マイスタの街ではエミリー・オチメラルダ公爵令嬢やレオーナ・ライハート伯爵令嬢を会わせて好印象を持たれたようだし、今回はエマ王女やソフィア・レッドレーン男爵令嬢のお世話をする事で信頼を獲得しているようだ。


 つまり、今、ジーロお兄ちゃんはハーレム状態(多分だけど)!


 その中から、次男のジーロが誰を選ぶか? もしくは別の女性を選ぶかはまた別の話ではあるが、リューとしてはジーロにもお相手が見つかる事を願っているのであった。


 そんなランドマーク本領では、まだ、王女リズも滞在している。


 王女エマとすっかり打ち解けた王女リズは、一日滞在を延ばしたのだ。


 リューはその間、父ファーザ、長男タウロ、次男ジーロ達と海賊の雇い主についての話を大広間でしていた。


 その元海賊ヘンリーは現在次男ジーロの部下に収まっているが、その雇い主であった相手についての証言からリューが調べた結果、聞きだした王都の商人というソーウ商会というのは、全くの出鱈目だった。


 その辺りは想定の範囲内だったのでリューはシシドーには南部の怪しい動きについて引き続き調べさせ、ソーウ商会という出鱈目な名前の商会が過去にもいなかったかランスキーに調べさせていると、一つの怪しい名が浮上した。


「「「ツヨーダー商会?」」」


 父ファーザ達が声を揃えて聞き返す。


 当然ながらこの名の商会も聞いた事がないからだ。


「うん、ツヨーダー商会。この名も偽名だから知っている人は少ないんだけど、時折、裏社会で大きなお金が動いたり、怪しい出来事が起きた時、この架空の商会の名が浮上する事があってね。今回もその名が浮上したタイミングで、ソーウ商会という架空の名が南部で出てきたみたい。だから、どうやら関連しているのではないかとランスキーやシシドーからの情報で浮き上がってきたんだ」


「今回は王都ではなく南部のサウシー伯爵領での事件だが、どう関連していると?」


 父ファーザが具体的な理由を聞く。


「シシドーは、ツヨーダー商会と同じように、ソーウ商会という名が南部でも同じように裏社会で問題が起きる時、その名が時折聞こえてくるらしいという情報を入手したんだ。場所が違うだけでこれって手口が一緒だと思うんだよね。そして過去に、王都から南部へのお金の流れでツヨーダー商会の名とソーウ商会という名が一度だけ浮上した事があるんだって。これはうちの部下であるノストラからの証言だけど」


 リューが入手した雲を掴むような噂話を説明した。


「なるほどな……。それは偶然とは言えないかもしれない。つまり、バックにいる何かが動く時、突然、架空のツヨーダー商会の名が浮上するわけか……。そして、今回、南部の海賊騒ぎでもその名が王都で浮上し、同じタイミングで南部にソーウ商会の名が海賊の雇い主として浮上してきたと……」


 父ファーザはそう応じると考え込む。


「海賊に接触してきた相手の特徴はわかっていないの?」


 長男タウロが現実的な質問をする。


 今のところ架空の商会名ばかりだからだ。


「ヘンリーの証言では接触する時、相手は仮面を付けていたから、人相はわからなかったらしい。でも、仮面で隠していたけどその下の首の辺りに、火傷のような跡を見たという事くらいかな。今、その特徴で王都でもしらみつぶしに調査させているけど火傷跡のある人も結構いるからどこまで頼りになるかどうか……」


 リューも調査の限界を示唆する。


「みなさんで何のお話をしているのかしら?」


 王女リズと護衛が大広間に入ってきた。


「海賊の雇い主の話をしていました」


 ジーロが、簡単に説明する。


「それで火傷跡のある人物がどうとかとおっしゃっていたんですね。その特徴の持ち主が海賊騒ぎの重要参考人という事ですか?」


 王女リズは相変わらず頭の回転が速く、少し耳にした情報からそこまで辿り着くのだから察しが非常に良い。


 そして続ける。


「その情報で私の頭に浮かんで来る人物と言えば、エラインダー公爵の部下になったと聞く元近衛騎士団の隊長であったバンスカー殿くらいかしら? あの方は任務中に負傷し、その時の火傷跡を気にして隊長職を退いて以降、表舞台を避けてエラインダー公爵の裏の仕事を行っていると聞いた事があります。──さすがに、今の話と関係があるかはわかりませんが……」


 王女リズは頭に浮かんだ記憶をそのまま口にした。


「その話、初めて聞きました……。エラインダー公爵については結構調べたつもりでいたんだけどなぁ……」


 リューは王女リズの情報に驚く。


「エラインダー公爵家については、王家もある程度なら把握していますから。それに、バンスカー殿は隊長職を退いて以降、本当に表舞台に出て来る事がなく、その後の経歴についてはエラインダー公爵の下に仕えていること以外、ほとんど把握できていないのが現状です」


 王女リズはそういうとバンスカーの最後の記憶を思い出すように遠い目をする。


「現時点では火傷跡という接点以外ないので、裏で動いているのがそのバンスカーとは言い切れないけど、もし、エラインダー公爵が関わっていると想定すると海賊行為も少し理解ができるかも……」


 リューは考えを巡らすとそう答えた。


「どういう事?」


 リーンが聞いて続きを促す。


「南部に広大な王家直轄領が出来てから、リズ……、エリザベス王女殿下がおっしゃった通り、ノーエランド王国など疎遠になっていた国とも国交の回復を検討していたタイミングです。それを邪魔する為に、王家直轄領から近いサウシー伯爵の港街を狙ったとも言えます。もちろん、この事で利益を得るのは他に、王家直轄領になる前、南部で交易の街としてはトレドが有名だったわけですが、直轄領になってからはエラソン辺境伯の街がその中心になっているのでエラソン辺境伯の線もあります。そのエラソン辺境伯も最近、エラインダー公爵との繋がりがあるようなので増々可能性としてはあるのかなと……。でも、あくまで推測の段階ですが……」


 リューは護衛の近衛騎士に気を遣って、リズを愛称からエリザベスに言い換えて説明した。


 ちなみにエラソン辺境伯とは、王女リズの南部視察の際、嫡男を同行させ、結婚相手として勧めてきた人物だ。


 その嫡男はリューに突っかかって来て返り討ちに遭っている。


 王女リズとリーンは一瞬、それを思い出し、クスッと笑う。


「国益に反する行為を行っている者がいるのなら調べなくてはいけません。もし、詳しい情報が集まったら、ミナトミュラー男爵、私に伝えてくださいね。国王陛下にも伝えなくてはいけないので」


 王女リズは笑いを収めると、王女としての対応をするのであった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


「裏家業転生」3巻が、12月20日より発売中です!


書き下ろしSSなどもありますので、お楽しみに!


よろしければ、各書店でお求め頂けると幸いです!


あとお手数ですが、★の評価、ブクマなどして頂けると、もの凄く励みになります。


これからも、書籍共々、よろしくお願い致します。<(*_ _)>

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