第475話 ルールですが何か?
リュー達生徒会役員の企画として立ち上がった総合武術大会の提案は、桁違いの力を持つ少数の生徒(リュー、リーン等)に有利にならないように、色々と制限を付けてルールが決まっていった。
ルールはこうだ。
出場選手は一定のダメージ無効化魔法が付与された宮廷魔法士団御用達である首輪の魔道具を装着する。
これは一定の基本ダメージを受けるとライフが一つ減るというもので、合計三回耐える事が出来て「ゼロ」になれば負けだ。
この三回まで耐えられるライフポイントだが、例えば上位魔法でダメージを受けると一気にライフも三つ減る可能性がある。
逆に下位魔法だと一つも減らない場合があるが、これはダメージを蓄積させて一つ減らす事も可能なので、魔法が苦手な者でも剣のダメージと合わせて相手のライフを減らす事が可能だ。
ならば、上位魔法を使用できる者が有利ではないか? という疑問についてだが、一試合に付き上位魔法の詠唱制限は「一回」のみ(使用できる者に限り)。
中位魔法は「三回」(こちらも使用できる者に限り)、下位魔法については制限が無い。
だから、不発に終わればそれまでで、使用しても当てられなければ、また同じである。
それなら剣など武器中心で戦う方が有利では? となりそうだが、魔法は飛び道具として非常に有能であり、牽制から蓄積ダメージまで使いどころは多く剣のみで戦うのは現実的ではない。
剣等の実力に上限を掛けないのか? という疑問もあるだろう。
武器は全て刃は潰してあり威力はどうしても落ちるから制限は掛けないものとする。
また、各個人のスキルによる魔法以外の『技』の使用については全面禁止。
あくまで魔法と剣等の武器による戦いにより勝負を決するものとする。
ここまで聞くと剣等の武器使用が不利に聞こえるが、武器によるかすり傷程度の蓄積ダメージでライフポイントをひとつ減らす事も可能だ。
これにより、隙の多い大技より、小技での蓄積ダメージでライフを減らしていく方が立ち回り的に有利そうではあるが、それは戦い方次第である。
それにダメージによる痛みは魔法などで軽減されるが、基本的に痛みはあるので、それに関して威力のある魔法は非常に脅威で、ライフポイント三本を消費する前に、痛みによる失神や戦闘不能、降参もありえる。
また、魔法剣についても上位から下位まで回数は同じで、使用から十五秒で、結界により、中和される仕組みとして、勝負所での使用を見極める必要がある。
さらに時間内で勝負がつかない場合は、蓄積ダメージ量で決定。
それでも勝負がつかない場合はライフの先取り一本とする。
こういった事から、リューのような強敵相手でも、頭を使った立ち回り方次第で十分に番狂わせが可能なルールになっていた。
なお出場選手の怪我を最大限避ける為、魔道具による防備や宮廷魔法士団による多重結界、各自試合前のダメージ回避系魔法の使用、など安全面は最大限配慮する。
万が一の負傷に際しても魔法士団から治癒士を派遣してもらい、即時治療に当たってもらう。
審判は同じく魔法士団から派遣してもらう事とする。
これらをより分かりやすいように箇条書きにして、リュー達生徒会二年生役員は学園長に提出した。
「ふむ……。このルールなら基本的には一部の生徒のみに有利なものにはならないかもしれないな。それに──」
学園長は企画書を読んで感想を漏らすとチラッとリューやリーン、王女リズを見る。
そして続ける。
「段違いの実力者であっても魔法制限がある分、頭を使って戦う事を強いられるのは面白い。だが、大丈夫かね? 下級生はやはり上級生に比べれば経験面で劣る。立ち回りが大事なこのルールではその辺りで差が出そうだが?」
「そこは知恵を絞って戦うのが醍醐味かと思います。それに経験も実力の内と考えて良いのではないでしょうか?」
リューも成長期である十代の一年の経験差がいかに大きいかは理解している。
だが中にはその経験を避けて楽に生きている上級生はいるだろうし、下級生でも上級生並みに経験を積んでいて、見事な立ち回りをする者もいるかもしれないから、そこをルールで縛る必要性はないと判断した。
「ふむ……。これは二学期の学年別剣術大会や、魔術大会よりも面白いイベントになりそうじゃわい。予算はかなりかかりそうだが、予算は? ──なるほど、生徒会の資産を売って捻出すると? はははっ! それは良い判断だ! うん? 参加資格は一年生から四年生までとあるが、これは誤りかな?」
学園長は記入ミスかと思って指摘した。
「いえ、四年生も参加資格有りにしておきました。卒業前の良い思い出になるかと思ったので」
「ほう。就職活動前の四年生も良いガス抜きになるかもしれんな。増々楽しみだ。それとこの大会へ参加する意義も大事だ。優勝者には食券一年間無料、準優勝者は半年間無料など賞品を付けると良いかもしれんな。その辺りはまた、修正しなさい」
学園長は楽しそうにそう提案すると、笑みを浮かべて基本となる企画書を承諾するのであった。
「これで企画が通ったから、あとは学園内での募集ね。その募集は広報のシズの担当になるけど、さすがに初めての試みだしみんなで手伝った方がいいと思うのだけど?」
王女リズは親友であるシズに少し甘い。
それはナジンも同じであったが、リズにとっては魔術大会で激戦を繰り広げた仲であったから、その辺りは意識していなくても肩入れする傾向にある。
「はははっ、そうだね。その意見はナジンも同意するだろうし、僕達も反対はしないよ。それじゃあ、みんなでポスターを作製して各学年の掲示板に張りだそう」
リューは王女リズの可愛い面にほっこりして笑うと、みんなで生徒会室に戻り、早速、作成に移るのであった。
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