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47話 人気ですが何か?

 目の前の事実にリーンは頭がついて行かなかった。

 まだ九歳の子供が自分より規模が大きい土魔法を使ってみせたのだ。

 一番の疑問は、このリューは器用貧乏で能力の制限がある事だ。

 有り得ない事があり過ぎて、リーンは開いた口が塞がらなかった。


「一応、この城壁はボクが1人で毎日作ったものだよ」


 ここぞとばかりにリューは自慢した。

 毎日コツコツとやってきた成果だ、このくらいは自慢してもいいだろう。


「……ちょ、ちょっと!リューのスキルは器用貧乏じゃないの!?」


 正気に戻ったリーンが一番の疑問をぶつけた。


「そうだよ?でも、限界突破の能力があるから」


「……限界突破?」


「そう、ゴクドースキルの能力の1つで……」


 リューの説明をリーンは聞いていたが長命のエルフの中でもそんなスキルの話、聞いた事が無い。

 まして、限界突破って何その無茶苦茶な能力……。


「それってつまり器用貧乏でほとんどのスキルが使えて、限界突破で制限無く成長できるって事!?」


「そう、最近は経験値増大も覚えたから、熟練度も人よりは上がるのが少し早いかも」


 同情の目で見てたリューが、一番ヤバい子だった事をリーンはやっと理解した。


「お、OK……。私が仕えるのに相応しい事がわかったわ。うん、そうよ!それくらい凄くないと私が仕える意味ないものね!」


「ポジティブだね……」


 リーンは想像通りの人だなとリューも理解した。

 このエルフさんはエルフ特有の偉ぶったところはあるが、正直で人に同情する優しさを持った偏見の無い女性だ。

 ドワーフにも独特だがお願いが出来るし悪気が無い。

 これから仲良くやっていけそうだ。




 ランドマーク領という田舎では珍しいエルフのリーンはすぐに有名になった。

 リューにいつも引っ付いて道の整備や城壁作りを一緒にする様になったので領民からは好感を持って受け入れられた。



 そして、収穫の時期が訪れた。


 豊穣祭で今年もランドマーク家のお菓子の出店でジーロやリューとその子分の子供達と一緒にリーンも売り子を務めた。


 その結果、リーンは完全にランドマーク領のアイドル的存在になっていた。


「ははは。評判を聞くと実際の性格との差に笑えるね」


 リューがリーンをからかう。

 領民の間でのリーンはリューの後ろから甲斐甲斐しく付き添う淑女として映っている様だ。


 実際は、好奇心旺盛でリューに色々と教えて貰い行動に移す、天真爛漫な子で淑女とはまた違うタイプだが、その容姿から領民には美化されてるようだ。


「みんなが勘違いしてるだけでしょ?関係ないわ、私は私だもの。それよりリュー、あのお菓子はもうないの?」


 今年の出店は準備が出来なくてリゴー飴とリゴーパイを再販したのだが、リーンはそれが気に入ったのだ。


「城壁作りの合間の休憩の時に上げるよ」


「じゃあ、早速今日も頑張りましょう!」


 エルフの森では甘味と言えば果物だったらしく、お菓子の存在にリーンは心奪われていた。

 最早、ジャンキー並みのハマり方である。


 ふふふ、シャブ(砂糖)漬けだね。──おっと、冗談でも不謹慎な表現だった、ダメダメ。


 一人でボケて一人でツッコむリューであった。



 リーンは城壁作業も手伝う様になって、元々センスがあったから慣れてくると上手く作れるようになってきた。

 規模はまだまだだが、おかげではかどる。


 土魔法の強化にもなるのでリーンも意外に飽きずに毎日リューを手伝ってくれていた。

 全てはお菓子の為では?と、思うところもあるが、一応、ボクには敬意は持ってくれてる様だ。

 次男ジーロの事も剣技がずば抜けている事に感心していた。


「やっぱりカミーザおじさんの孫なのね。長男のタウロ君も凄いんでしょ?」


「文武両道で『騎士』スキル持ちの、ランドマーク家の次代当主だからね」


 リューにとって自慢の兄だ。


「それじゃ、リューはどうするの?」


 リーンにとっては将来性では断トツだと思っているリューがどうするのか気になっていた。


「ボクは家族みんなを影からサポートできれば何でも良いんだけど、今は王都の学校に行って可能性を広げる事が目標かな」


「……そっか。なら、私ももっと勉強しないといけないわね」


「え?」


「リューが学校に行くなら私も行くよ?従者なんだから当然でしょ」


 そうなの?


 意外に忠誠心溢れるリーンの発言に驚くリューであった。

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