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4話 ゴクドーですが何か?

 洗礼の儀を終え、すぐに馬車で家に戻ると、そこには家族である祖父、祖母に、兄のタウロとジーロ、妹のハンナ、執事のセバスチャン、領兵の隊長を務めるスーゴ、メイドに料理人など使用人たちが集い、祝う為に待機していた。


「「「リュー、洗礼の儀おめでとうー!」」」


「「「「リュー様、おめでとうございます!」」」


 リューが室内に入るなり、祝福される。

 前世でもされた事のない初めての体験に、驚き、涙が出そうなほど嬉しかった。


「……みんなありがとう!」


 それ以上言うと泣きそうだった。

 嬉しいのはもちろんだが、神父からも残念がられたスキルの事を思い出すと違う意味でも泣きそうだった、役に立たないと思われたら、失望されないだろうか?そんな不安にリューの表情も曇りがちだった。


 ひとしきり祝福され、食事になり、談笑、そして、落ち着いてくると、家族が揃ったところでリューは自分のスキルについて打ち明けた。


「器用貧乏?」


 家族はリューが申し訳なさそうに自分のスキルを告知した事に全く驚かなかった。


 そんな家族を代表して父のファーザが言う。


「なんだい?それを聞いたみんなが、がっかりすると思ったのか?ハハハ、リューはリューじゃないか、その歳で読み書きもできる、それに他にも『鑑定』に『ゴクドー』?のスキルもある、悲観することなど一つもないよ。それに、『器用貧乏』には貴重なマジック収納も小さいながら使えたはずだよ」


 そう言えば、神父様もそんな事言ってたな、と、思い出したリューであったが、聞きなれぬ言葉に「?」となった。


 察したファーザが、


「まだリューは知らなかったか。では、このリゴーの実を『収納』してみなさい」


 前世での果物でリンゴに似た実を父親のファーザはリューに渡した。


「収納?」


 リューがつぶやくとリゴーの実が手の平に吸い込まれる様に消えた。


「それが、『マジック収納』だ。今、リュー個人の時空に収納されたんだよ。時空は時が止まっているから、生ものでも傷まない。収納する規模は『器用貧乏』だから小さいけど、とても使える能力なんだ」


 おお!


 リューの表情が明るくなった。


 それを見て、家族も笑顔になった。


「それに、『鑑定』のスキルも、貴重だぞ。才能によって今後どこまで鑑定できる内容が増えるかわからないが、『器用貧乏』のものと違って、授かったスキルである以上、ある程度は才能が伸びるはずだ」


「はい。」


 父親からのアドバイスにリューは素直に返事をした。


「『ゴクドー』というスキルは初めて聞くが……、セバスチャン、何か知ってるかい?」


 ファーザはこの家に祖父の代から仕える物知りの白髪の執事に聞いてみた。


「初めて聞くスキルですね。世間で言うところの特殊スキルの1つなのかもしれません」


「あ、神父様もわからないとおっしゃってました」


 リューは思い出して答えた。


「それじゃあ、今度、わかりそうな人に聞いてみよう。サイテン先生はまだ、領内におられるかな?」


 ファーザが執事のセバスチャンに聞く。


「はい、サイテン教授は来月に王都に出かけるそうですが、それまではご自宅におられるかと」


 そう言えば、神父様も言ってたなと二人の会話を聞いて思い出すリューであった。


「よし、それならサイテン先生にアポイントを取っておいてくれ」


 ファーザが、セバスチャンに指示する。


「承知いたしました」


 セバスが頷く。


「それじゃ、リュー。明日からはタウロとジーロと共に、勉強はお母さんに、武芸は私とスーゴが教えていくよ。『器用貧乏』とはいえ、伸びしろがあるのだから、その分は限界まで上げていこう」


「はい!」


 今までは、二人の兄達の稽古を見ているだけだったので、一緒にやれる事が素直に嬉しいリューだった。

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