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399話 問題山積みですが何か?

 急遽ランドマーク本家で行われた東部地方における貴族同士の争いの監視に人を出すという話は、スゴエラ侯爵、より東部に近いタウロの婚約しているエリス嬢の実家であるベイブリッジ伯爵と三者で協力した方が良いだろうという事になった。


 その中で、リューが東部裏社会についても抗争状況を詳しく知りたいけどうちは人手不足なので情報収集をお願いしたいと父ファーザに申し出ると代わりに領兵隊長のスーゴが部下を使って調べておきますよと、快く引き受けてくれた。


「東部の裏社会か……。気にかけた事も無かったが、王都に影響があるほどなのか?」


 父ファーザはピンとこないらしくリューに質問した。


「実は──」


 リューは最近、東部の抗争に敗れたグループが王都に流れて来ている事で少し治安が悪くなっている事などを伝えた。


「──それにそれとは別の兵隊が流れ込んできている可能性もあるから」


 リューは意味深な事を告げる。


「なんじゃ、気になる事でもあるんか?」


 祖父カミーザがリューの含みのある言い方に聞き返した。


「王都のグループの『月下狼』覚えているかな、おじいちゃん?実は──」


 リューは『月下狼』について起きた事を説明した。


「──ほう。そんな事になっとったのか……。確かに『黒炎の羊』が急に兵隊を増やして反撃したというのは気になるのう。急に無いところから人が増えるなんて事はない。どこか外部から招き入れたと考えるのが普通だのう」


「うん。それが、東部からじゃないかと思っているんだ」


「なるほど。確かに表では貴族同士の争いの激化、裏では大抗争とはタイミングが良すぎるな。縄張り争いなどで連鎖する事もあるかもしれんが、王都にまで流れて来るというのは貴族同士の争いと比べると規模が大き過ぎるな」


 父ファーザも話を聞いていて不審に感じた。


「……背後で何かが動いている、という事でしょうか、お父さん」


 長男タウロが不穏な憶測を口にした。


「また、隣国が関係しているかもしれんな。王家にこの情報が届くのは?」


 父ファーザは執事のセバスチャンに確認する。


「……そうですね。東部で起きた争いが激化したのは半月程前ですから、その情報が届くのはあと一週間近くはかかるかと。リュー坊ちゃんがこの後知らせれば少しは早く届くかと思いますが」


「そっか、僕が知らせれば早いのか。今日は遅いから無理として明日、朝一番でこの情報を王宮に届けてみる」


 リューはセバスチャンの提案に目から鱗とばかりに頷くのであった。


「スゴエラ侯爵やベイブリッジ伯爵にも情報についてこっちに流してもらい、重要なものは王家に伝えるという事にしておこう。そっちの方が早いだろう」


 父ファーザはそう話をまとめるとリューに現在ある東部の貴族同士の争いに関する情報をまとめた資料を渡すのであった。


 深夜まで続いた話し合いはそこで終わり、リューとリーンもランドマークビルへと帰宅した。


「西部地方『聖銀狼会』の進出の次は東部地方からの進出なのかな?」


 リューが疲れたようにリーンにぼやいた。


「そう単純なものなのかしら?みんなが指摘していたように、隣国絡みなら裏社会の縄張り争いだけじゃすまないかも」


「そこなんだよね……。裏社会にも仁義があるから自分の国を売るような行為はやらないと信じたいところなんだけど……」


 リューは今回の不穏な流れに首を傾げた。


「とりあえず、今後の情報収集で見えてくるものあるはず、結論はその時出しましょう。──私、先にお風呂入るわよ?」


 リーンはリューにそう断りを入れる。


「うん。お先にどうぞ」


 リューの返事にリーンは制服の上着を脱いでリビングの椅子に掛けると、その後も服を脱ぎながらお風呂に歩いていく。


 リューにとってはいつもの光景だが、第三者が見たらドキッとする光景だろう。


 なにしろとんでもない美女エルフが服を脱ぎながらお風呂に向かうのだ。


 誘っていると勘違いしそうなものであるが、リューはすでに寝ている使用人に代わり、リーンが脱ぎ捨てた服を回収すると洗濯物を入れる籠にまとめて放り込む。


 リューはその作業を終えるとリビングで寛ぎ、今日の事を振り返っていた。


 今回の一番の問題点は『月下狼』がボスのスクラを失って『黒炎の羊』に吸収された場合だ。


 自動的に旧『雷蛮会』の残った縄張りも手に入れる事になれば、見過ごせない勢力になる。


 それでも『竜星組』の敵ではないが、外部勢力の手を借りている可能性があれば、その規模にもよるが『竜星組』と同等の勢いを持つかもしれないから次の情報は早く欲しいところである。


「……学校では勇者問題、商会ではお酒に関する問題、そして、裏社会でも新たな火種になりそうな問題、そして、東部の貴族同士の争いがきっかけで何かの火種になりそうな問題って、ちょっとまとめて色々来過ぎじゃない?」


 リューは嫌な顔をすると溜息を吐いて独り言をつぶやいた。


 するとお風呂場からリーンの声がした。


 どうやら、お風呂に入っていても耳が良いからリューの声が聞こえたようだ。


「災難がまとめてくることも珍しくないじゃない!」


「……リーン、地獄耳過ぎるから!──ゆっくり入りなよ?」


 リューはお風呂の方に大きな声で答えると苦笑するのであった。

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