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【8巻予約開始!】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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387話 一年生が凄いらしいですが何か?

 二年生、王女クラスの休憩時間。


 今年の一年生はランスからの情報を聞く限り、かなりの豊作らしいという事をリューは教えてもらっていた。


 断トツの一位で合格した勇者スキルを持つ最年少男爵に、二位で合格したオチメラルダ公爵家の令嬢、北部国境地帯で一大派閥を形成するサムスギン辺境伯の子息に武勇に優れている事で有名な獅子人族のライハート伯爵家の令嬢など、昨年の王女リズとエラインダー公爵家だったイバルのインパクトには勝てないが、それでも勇者スキル持ち男爵が現れた事で話題性に欠かない衝撃を与えていた。


「へー。エラインダー公爵家以外にも公爵家あるんだね」


 リューが二位の成績だったというオチメラルダ公爵家に興味を示した。


「まぁ、オチメラルダ公爵家は、来年には侯爵家に降爵する事になるらしいけどな」


 ランスが少し言いづらそうに答えた。


「え?なんで?」


 リューは事情が分からないので素直に聞き返した。


「公爵家というのは王族の称号以外にも特別な働きによって叙爵される事もある地位なのはわかるよな?」


「うん、そのくらいはわかるよ」


「オチメラルダ公爵家は、元は王族なんだが、王位継承権を失ってからは功績が久しくないから王国法に則り侯爵への降爵が決まったんだ。オチメラルダ家は落ち目になっているから、それを嘆いた令嬢が通っていた女子校を退学して、王立学園を受験し直したらしい」


「そうなんだ……。何か執念みたいなものを感じる話だね」


 リューはランスの話からお家の為に頑張ろうとしている気持ちを少し理解出来るのであった。


「貴族の中でも公爵っていうのは、代を重ねると血が薄れて王位継承権も失うから何もしないと降爵されるんだ。オチメラルダ公爵家は今年合格した令嬢が優秀な事は有名だからなぁ。勇者スキル持ちの生徒を婿養子にとか考えて、この王立学園を受験させたのかもしれない」


 みんなはその指摘に「「「へー」」」と感心する。


「確かに、元の学校から転入ではなく退学してから受け直しているのをみるとそうかもしれない。──勇者スキル持ちを婿養子にしたら、功績になるかもしれないからな……」


 ナジンはオチメラルダ公爵家の切迫したお家事情を想像して少し同情的な気持ちになるのであった。


「親の意向か娘の判断かわからないが、地位に振り回されるのは同情するな」


 イバルが、過去の自分を思い出したのか首を振って見せた。


「北部の大派閥サムスギン辺境伯というのは有名なの?」


 リーンが、珍しく興味を持ったようだった。


 もしかしたらランドマーク家が最弱派閥と言われているので、大派閥という単語に反応したのかもしれない。


「そりゃそうさ。現在の王国五大貴族派閥と言えば、北のサムスギン辺境伯はその一つさ」


「……貴族の派閥は多いからあんまり有名じゃないよ」


 シズの実家であるラソーエ侯爵家もその数ある派閥の一つの長なのだが、シズは派閥に関してはあまり重要視していないようだ。


「北のサムスギン辺境伯は武力において、リューのところの南東部を牛耳るスゴエラ侯爵家と並ぶ大貴族だぜ?その家の息子も優秀だからわざわざこの学校を受験させたんだろうな。実際、三位で合格したみたいだし」


「おお。それも凄いね。親が大貴族で自身も成績優秀とか偉いよ」


 リューはランスの評価に感心して評価した。


「自分としては獅子族のライハート伯爵家の令嬢が気になります」


 話を聞いていたスードが武勇に優れるという一点で、興味を示した。


「ライハート伯爵家は、王家に対し厚い忠誠心を示してくれている家で私も会った事があります。獅子族特有のたてがみのような髪が格好良く見えたのをよく覚えています」


 王女リズが珍しく思い出の一端を話してくれた。


「じゃあ、リズは新入生のライハート伯爵家の令嬢を知っているの?」


 リューは王女リズの話にも興味を示した。


「ええ。確か名前はレオーナ・ライハートだったかしら。父親であるライハート伯爵が私と歳が近いからと小さい頃、連れて来てくれたわ。とても礼儀正しくて真っ直ぐな目をしていたのが記憶にあるかな」


 王女は会うのが楽しみのように思い出を振り返った。


「武勇に優れているのであれば、一度、手合わせしてみたいものです!」


 スードはやはり、それが目的であった。


「そうね。獣人族の中でも獅子族はかなり武勇に優れる者が多いのは確か。彼女が順調に成長して父ライハート伯爵の血を色濃く受け継いでいたらかなり強いはずよ」


 王女リズはスードの脳筋ぶりにクスクスと笑うとそう答えるのであった。


「ラーシュさんは、寮生だよね?一年生の噂は何か聞いている?」


 リューは突然、目の前の席でその特徴的な兎の耳をピンと立て、聞き耳を立てていたラーシュに話を振った。


「わ、私ですか!?」


 ラーシュは聞き耳を立てていた事を気づかれていた事に顔を真っ赤にした。


 そして、どう答えたものかとおろおろする。


「寮だと地方の貴族の子息令嬢や優秀な平民の生徒とかいっぱいるでしょ?何かしらないかな?」


 リューは改めて聞き返した。


「そ、それなら……、オチメラルダ公爵家の令嬢、エミリー嬢のことなら……。彼女は一年生寮に入寮しているので噂は聞いています。公爵家の令嬢という事でその地位を誇っているところはありますが、決して驕っている雰囲気はなく、よく図書室で勉強しているのも見かけます。私の目には一族の想いを背負って必死に頑張っているように見えました」


 ラーシュは地方から出て来て夢の為に頑張っている自分と重なる部分があるのかエミリー嬢に好感を持っているようだ。


「……それは知らなかった。そう言えば、王都にオチメラルダ公爵家の屋敷はないな……。公爵家はそのくらい生活に窮しているのか?いや、さすがにそれはないか。──うーん、でもまさか寮生だったとは……」


 ランスは天下の公爵家の令嬢が寮生活をしているとは思わなかったようだ。


「今年の一年生は、興味を惹かれる人が多いね」


 リューはオチメラルダ公爵家の令嬢に好感を持ちつつ新入生達に興味を持つのであった。

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