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【書籍化&コミカライズ】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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376話 試し斬りですが何か?

 リューとリーンは砦の丈夫そうな壁を見上げると、複合魔法を詠唱し始めた。


 普段なら無詠唱で魔法を使う事が多い中、詠唱、それも複合でするというのは、それだけの魔法を使用するという事である。


 もちろん、新参者のシシドーはそんな事は知らないから、魔法が使えるのかくらいの感覚で実力を確認しようと傍で見つめていた。


「「『岩石流星群』!」」


 リューとリーンが魔法を唱えると、何も無かったはずの上空に大岩が数個現れ、グングンと風を切りながらこちらに接近してくるのがわかった。


「なっ、何だ、あのでかさは!?」


 シシドーが唖然とする中、その勢いを増した大岩が次々に砦の壁に突っ込んでいく。


 砦の丈夫そうな壁はその高速で落下してくる大岩の衝撃に耐えられず、砕け散る。


 中にいたオーガ達もその余波でなぎ倒されたり、その下敷きになって潰れる者もいた。


 そんな災害としか思えない様な事態に、砦内は混乱するオーガ達が逃げ惑っている。


「次は儂の番じゃな」


 祖父カミーザは孫達の活躍を見届けると、砦の壁に空いた大きな穴に向かって、得意の火魔法で砦内のオーガを攻撃する。


 すると砦内からは次々に爆発が起きて、オーガ達はより一層混乱し、逃げ惑うのであった。


「な、なんて人間離れしてやがる……」


 傍で見ていたシシドーは驚きのあまり、その場に座り込んでその光景を見ていた。


 カミーザに同行していた領兵達は、


「坊ちゃん達、また、成長していますね!」


「複合魔法とかよく考えるものだ!」


「さすが坊ちゃん達だ!」


 と称賛するとあとは自分達の役目とばかりに、剣を抜いて逃げ惑うオーガ達に斬り込むのであった。


「シシドー、君も続いて」


 リューが、座り込んでいたシシドーに声を掛ける。


 シシドーは正気に戻ると立ち上がり、領兵に続いて砦内に飛び込んでいくのであった。



 砦の優位性を失ったオーガ達は燃え盛る火の中、応戦するか逃げるかの選択を迫られていた。


 オーガは武人然とした魔物とはいえ、本能的に自分の命は大事だからこの状況では逃げる選択をする者も多かった。


 だがそこへ、


「ギギギィィィ!」


 というオーガが逃げるのを制止するかのような圧のかかった声が響き渡った。


 その声に、混乱し、逃げ惑っていたオーガ達が正気を取り戻したかのように落ち着き、領兵達に抵抗し始める。


「オーガ達が正気に戻ったぞ!」


「単独でオーガと対するな、やられるぞ!」


「シシドー、一人でオーガに対するな!」


 領兵達も冷静に状況判断をする中、シシドーは鎖付き分銅を振り回して単独でオーガに攻撃をしかけた。


 リューやリーンに負けてられないという気になったのだろう。


 第一投の分銅はオーガの頭部を見事に捉え、致命傷を与えて倒した。


 その光景にリューも思わず驚く。


 オーガは物理耐性が高く丈夫なのだ。


 そんなオーガを一撃で倒すのは至難の技である。


 それだけに、シシドーの一撃はオーガに会心の一撃を与える事が出来たようであった。


 シシドーは勢いに乗ると制止を聞かず、次のオーガを求めて奥に突っ込んでいった。


「あらら。このままだとマズいかも」


 リューはシシドーの蛮勇に眉を顰めると、リーンとスードに追いかけさせるのであった。


 リューと祖父カミーザはブラックオーガを探す事にした。


 先程の咆哮はブラックオーガのものだ。


 近くにいるはずだった。


 火に燃える砦内を魔法でオーガを倒しながら探していると、三体のオーガと黒い色のオーガが一体いた。


 破壊した壁の反対側の傍にいたそのオーガ達は、他のオーガ達に命令を下している様子だった。


「おじいちゃん、あれだね?」


「そうじゃな、見つけたぞ」


 二人は視線を交わしてニヤリと笑うと、ブラックオーガとその手下を倒す為に近づいていく。


 そこへ、気を失ったシシドーを抱えたスードとオーガを排除していたリーンが現れた。


「シシドーは大丈夫?」


 リューがスードが抱えているシシドーの顔を覗き込む様にして安否を確認した。


「幸い、軽傷です。気を失っていますが」


「意外にこいつ、オーガ相手に奮戦したわよ。同じ手は通じず、反撃されて死にかけていたけど」


 リーンが思い出し笑いをしてリューに答えた。


「そっか。再教育はまたという事で、今は、ブラックオーガを仕留めるよ」


 リューは、そう言うと、カミーザと複合魔法で合わせ、


「「『土流火焔』!」」


 と唱えてオーガ達を急襲した。


 ブラックオーガの周囲のオーガ三体はその炎に包まれた岩石の一撃で四肢を砕かれ、炎上してその場に崩れ落ちた。


 だが、ブラックオーガは魔法が効かず、魔法攻撃を繰り出してきたカミーザとリューを確認するとこちらに自らやってきた。


 勝てると踏んだという事か?


「舐められたもんじゃのう」


 祖父カミーザは剣を抜いた。


 リューも魔法収納から一本の反った片刃の剣を取り出した。


「お?なんじゃそれは?見た事がない形の剣じゃのう」


 カミーザはリューの手にした武器「刀」に気づいて、敵を前に興味津々だ。


「うちの職人に作らせた試作品だよ。切れ味を試してみようかなと」


「それは儂も見てみたいのう。あのブラックオーガ、見たところ魔法完全耐性、あとはオーガとして物理耐性もあるはず。試し斬りには持って来いじゃろ」


 祖父カミーザは、今回の得物はリューに譲るとばかりに、剣を収めると後ろに下がるのであった。


「リュー、念の為、私の分も出しておいて」


 リーンが、もう一振りの刀を要求した。


「──じゃあ、これね?」


 リューはマジック収納からもう一振り取り出すとリーンに投げて渡した。


 ブラックオーガは小さい人間が相手とわかって、目が鋭くなった。


 馬鹿にされていると思ったのだろう。


「では、ブラックオーガ。その首、もらい受ける」


 リューはそれにはお構いなしで、刀の柄を握り締めて構えた。


「──油断大敵」


 リーンが、そうつぶやいた瞬間だった。


 リューはブラックオーガの眼前に移動していた。


「これは、良い切れ味!おじいちゃん用に帰ったら職人にもう一振り打ってもらうね!」


 目の前に現れた小さい人間に驚くブラックオーガを前に、リューはもう終わったとばかりにいつの間にか抜刀していた刀に付いた血と脂を軽く振って落とし、ゆっくり鞘に納めて後ろを向く。


「ギィィィ!」


 ブラックオーガはその態度に怒り、抜いた剣で背後からリューに斬りかかろうとした。


「あ、動くと胴体ずれるよ?」


 背中を見せたままのリューがそう注意すると、ブラックオーガの胴体は真っ二つに割れて絶命するのであった。

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