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372話 友人の暗躍ですが何か?

 リューはイバルの案内でエリザの街にある裏社会の連中が多い通りへと赴いた。


 イバルとその部下達がその通りに現れると、そこにたむろしていた連中はいっきに怯え、道を開ける。


「もしかしてイバル君。すでにこっちでひと暴れしたの?地元の人達ビビってない?」


 リューが驚くのも仕方がない。


 明らかに地元の札付きの悪と思える輩もイバルとその部下達を見ると通りの脇に隠れるのだ。


 これはただ事ではない。


「すまない、リュー。ここに来た数日前に領都で一番大きいという組織の本部で提携について話をつけようと訪れたんだが、聞く耳を持たなくてな。『竜星組』の名を侮る発言をあっちがしたものだから、部下達が怒って制圧する羽目になったんだ」


 イバルが申し訳なそうに答えた。


「えー!?じゃあ、この領都の裏社会は?」


「そこまではまだなんだよ、ごめん。さすがにミナトミュラー家の精鋭とはいえ、それをやるには兵隊の数が少ないからさ。この街で一番大きい組織の頭を潰しただけなんだ」


 イバルは本当にすまない!と、リューに謝罪する。


 いや、イバル君、仕事が早すぎて僕の出番が無くなったよ?


 リューは今回の自分のメインイベントが、王家直轄領の裏社会に竜星組の名を知らしめ、南部に足掛かりを作るものだったのだ。


 どうやら、イバルと部下達は張り切って先にそれを結果的にだがやってしまった。


「じゃあ、その、組織のボスは?」


 リューはそのボスに、改めてここの領都で裏社会を新ためて牛耳ってもらおうかと思い、確認も兼ねて聞いてみた。


「昨日の段階で引退宣言して足を洗ってしまったんだ」


「えー!?足洗ったの!?なんで!?」


 リューは展開の速さに困惑する。


「どうやら、俺がまだ子供で、その子供に本部の精鋭がやられた事が相当ショックだみたいなんだ。それで自分の時代は終わったと引退宣言してね。それが裏社会ですぐに広まってこんな状態になっているんだよ」


「……イバル君。相当暴れたね?」


「いや、俺はほとんど暴れていないから!ちょっと部下が手間取っていた連中を代わりに相手にしたくらいで……」


「それが、敵の精鋭だったと?」


「……うん」


「今年十五歳の子供に好きに暴れられたら、相手も立つ瀬がないよね、はははっ!」


 リューは自分の日頃の行いは棚に上げて笑うのであった。


「……リュー、君が言うのかよ」


「主、普段はそれをあなたがやってますよ?」


 イバルとスードは当然ながらツッコミを入れるのであった。


「え?──それよりも、そこまで事が進んでいるなら、ここにうちの『竜星組・王家直轄領南部支部』を作った方が早そうだね……。どうしようか……」


リューは二人のツッコミをスルーしながら話に戻すのであった。


「部下達が竜星組の名をこの数日で広めているし、その名で大きな顔役である組織を一つ潰しているから、直接、あまり文句は出ないと思う」


とイバルが答えた。


「そうなると、誰をここの頭にするかだけど……」


 リューがまたも考え込む。


 予定がかなり変わったのだから悩むのも仕方がない状況である。


「俺は嫌だからな?」


 イバルは先に断りを入れておく。


「やっぱり?」


 リューは少し笑って残念がる。


 イバルはこの短期間で南部の裏社会に名を馳せる事になったようだから、南部のトップに据えてもいいのでは?と少し頭を過ぎったのだ。


 だが、イバルはリューの直接の部下だし、何より学友である。


 こんな王都から離れた所を任せるわけにもいかないのも事実であった。


 そこで、


「イバル君に付けた部下達の中で一番偉いのは誰かな?」


 と確認をした。


「隊を任せられているのは、あっしですが?」


 と手を上げたのはランスキーの下に古くからいる男でリューもよく知っている人物だった。


「あ、君か。マイスタの街の古株だからこっちは任せられないかぁ。うーん、こっちでやっても良いって人はいる?」


 部下達にリューは聞いてみた。


 みんな、ざわざわとし始めた。


 リューの命令なら喜んで引き受けそうな面子ではあるが、マイスタの街が好きな連中であるのも知っているからリューとしては強制したくない。


 そうなると……。


「一か月だけこっちの街の裏社会をまとめてもらえないかな?その後は南部の顔役を後釜に据える事にするから!」


 と一つの提案をした。


「主、あてはあるんですか?」


「数日前に捕まえた人がいるじゃない」


「え!?──あいつですか!?」


 スードはリューの突拍子もないと思われる人選に度肝を抜かれた。


 あいつとは、交易の街トレドでリーンに軽傷を負わせたボスの男の事である。


「主、いくらなんでもあれは問題が多すぎますよ」


 スードが言うのも仕方がない。


 なにしろ貴族を誘拐して身代金をせしめようとしていた大悪党だ。


 腕は確かに立つかもしれないが、人格に問題がありそうだから素直に従うとも思えない。


「すでにそのボス、シシドーはランドマーク本領に送って、あとの事はおじいちゃんに任せてあるから大丈夫だと思う」


「……ああ、なるほど……」


 とだけ答えるとスードの反論はストップした。


 それは更生施設入りを意味するからだ。


 シシドーはそこで、自分がまだまだ、ちっぽけな存在である事を、叩き込まれる事になるだろう。


「噂に聞く更生施設……」


 イバル自身は体験した事がないが、竜星組の若い衆の使用前、使用後を散々見て来ているのでとんでもないところである事は容易に想像できたのだ。


「じゃあ、一か月だけ、みんなにはここで活動してもらっていいかな?」


「「「そういう事でしたら、お任せ下さい!」」」


 部下達はリューのお願いに二言も無く承諾するのであった。

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