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37話 城門前で騒いでますが何か?

 数日後、エランザ準男爵が自領の兵、数十人を連れてランドマーク領内に乗り込んできた。

 これは、不可侵の誓約があるので、許可なしに兵を連れてきたエランザ準男爵に非がある事になる。

 この行為に、ランドマーク側の領兵達が、新しく出来た城門前で止めようと揉み合いになったが、エランザ準男爵が爵位を盾に強行突破しようとしていた。


「平民ごときが触れるな!私はエランザ準男爵様だぞ!」


 この騒ぎに近くを通りかかった祖父カミーザが現れた。


「何事かと思うて来てみたら、これはこれはエランザ準男爵。これはランドマーク”男爵家”に対して喧嘩を売ったとみていいのかな?」


「私は認めていない!それに貴様らだろう!有る事無い事スゴエラ侯爵に吹き込んだのは!そうに決まってる……、私に嫉妬したに違いない!この元平民出の成り上がりが!」


「お主に嫉妬する要素は皆無じゃぞ?それより、息子が国王陛下直々に賜った男爵位を軽視する発言は無視できん、殺されても文句は言えんぞ」


 カミーザが剣に手をかける。


「兵達よ、あの男を捕らえよ。私を侮辱したランドマークの首魁の1人だ。引き立ててスゴエラ侯爵への手土産とする!」


 エランザ準男爵の領兵達は動揺した、命令でついて来たはいいが、元Aランク冒険者、赤髪鬼のカミーザを捕らえよときた、それも他領でである。


 どう考えても非はこちらにあるので、領兵達は目を見合わせて動けずにいた。


 そこに、ファーザやリュー、ジーロ、隊長のスーゴと領兵数名が駆けつけてきた。


「これはどういうことですかな、エランザ準男爵。兵まで連れてお越しになるとは……、これが意味するところをおわかりですか?」


 ファーザが落ち着いてるが、どこか圧を感じる質量の声で問いただした。


「黙れ!貴様らのせいで、スゴエラ侯爵から出頭命令が来たのだぞ!私に濡れ衣を着せ、失脚させようとしてもそうはいかん!即刻、私のお縄を頂戴しろ!そして、貴様ら全員スゴエラ侯爵の前に引き立ててやる!」


「その出頭命令とは、侯爵に納めるべき税を着服していた事でしょうか?」


 ファーザは静かに答える。


「!やはり貴様のせいだったか!」


「私のせいではなく、あなたの行った罪のせいでは?」


 ファーザはまたも淡々と答える。


「黙れ!私の領から出た税収だ、私が好きにして何が悪い!」


「勘違いしてはいけない。スゴエラ侯爵から頂いた領地領民である以上、侯爵に税を納めるのは義務ですよ。エランザ準男爵、それとも、あなたはスゴエラ侯爵を寄り親と思っておられないのか?いや、仕える国自体が違うのか?」


「ど、どういう意味だ!」


「あなたがこれまで、スゴエラ侯爵領のみならず、王国南東部の機密情報を入手しては隣国に売りさばいて、お金にしていた件ですよ」


「な、な、な、何の話だ!そ、それは貴様らランドマーク家がやっていた事に違いない……。そうだ、貴様らが隣国に情報を流し私腹を肥やしていたのだ!私はそれを知って今日捕らえに来たのだ!黙ってその首を差し出せ!」


「最初言ってた事と内容が違う事に気づいてますか?その場限りの嘘に酔って自分を正当化するのは止めなさい」


 ファーザはエランザ準男爵の醜態に呆れた。


「黙れ黙れ黙れー!兵達よ、即刻この嘘つきの反逆者達を捕らえよ!捕らえた者にはたっぷり報酬を与えるぞ!」


 エランザ準男爵は剣を抜くと自領の兵達に命令を下す。


 だが、兵士達は相手当主と自分達が仕える当主とのやり取りから、今、剣を抜くと同罪に扱われる可能性がある事に気づいた。


「剣は抜くなよ兵士達。抜けばこの男と一緒に極刑は免れないぞ!」


 領兵隊長スーゴがファーザと兵士達の間に立ちはだかると言い放った。


 その言葉に兵士達は鞘に収まったままの剣を投げ捨てた。


「何をしている貴様ら!?命令に従わんか!」


 怒ったエランザ準男爵は近くにいた自領の兵に斬りつけた。


 ギャッ!


 肩を斬られて兵士は悲鳴と共にその場にうずくまる。


「スーゴ!」


 ファーザの鋭い指名に、


「了解!」


 と答えるとエランザ準男爵にスーゴは飛びかかり、あっという間に取り押さえた。



 こうして、エランザ準男爵とのご近所付き合いは終焉の時を迎えたのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言]  「こうして、エランザ準男爵とのご近所付き合いは終焉の時を迎えたのであった」 しかし、こんなところに延々と良くお金を貸すね。
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