35話 お祭り騒ぎですが何か?
約1か月半ぶりに父ファーザが王都から帰還した。
早速、家族全員の緊急招集がかかり、学校に行ってるタウロとシーマ以外の者はメイドから料理人、使用人に至るまで集められた。
昇爵の報告だという事はみんなわかっていたが、それはかなり予想を超えていた。
ファーザはまず最初にスゴエラ辺境伯が侯爵に昇爵した事が報告された。
寄り親の昇爵はもちろんめでたい事でみんな喜んだのだが、次にファーザが、国王陛下直々に、騎士爵から、準男爵を越えて、男爵位を授けられたと話した。
「「「えー!?」」」
一つ飛びの昇爵に、みんなここが驚きの頂点だと思っていた。
がしかし、驚くのはここからで、さらには、スゴエラ新侯爵の与力から独り立ちし、魔境との境を守る者として一帯を治めよと国王陛下自ら、勅令が下された。
これにはリューをはじめ、みんなポカンとした。
話が飛躍し過ぎていまいちみんな状況が飲み込めないでいた。
ファーザはかみ砕いて報告を続ける。
「スゴエラ辺境伯じゃない……、侯爵からのお話では国王陛下が父カミーザの冒険者時代を知っておられ、オークキング討伐談を耳にして、大変喜ばれたらしい。それで、あの者が国境を守ってくれるのは頼もしいから、息子を男爵位に昇爵させてそれに相応しい領地を与えよと宰相に申された。スゴエラ侯爵は『ランドマーク家は魔境の森との境を守ってくれている頼もしい強者達です、その者達がいなくると私だけでなく領民達も困ります』と」
ファーザは一息ついた。
「そこで私もその場に呼ばれ、陛下に問いただされた、『領地を与えるがどうしたい?』と」
みんな続きをファーザが話すのを待って、息を殺す。
「なので、私は今の領地に愛着があり、領民も好きなので今のままが良いですと答えた。すると、陛下が『ならば、スゴエラ侯爵よ、お主の領地を加増するから、この者にその分、周囲の土地をやって欲しい』と、仰られた」
……という事は……?
「話をまとめると……、男爵位への昇爵と領地加増、スゴエラ侯爵から独り立ちし、王家に直接仕える貴族という事になった!」
わー!
その瞬間、みんな大騒ぎになった。
使用人達にしても敬愛する領主様の出世はめでたかった。
早速、使用人の1人が街に走った。
領主様の昇爵を知らせる為だ。
「領主様が男爵になられたぞー!」
ざわざわ
何事かと家から、お店から、酒場から、ギルドから、人が続々と出てきた。
「領主様が男爵になられたー!」
もう一度、使用人の男が叫ぶと
どっ!
と、みんなが沸く。
領民達の間でも噂にはなっていた。
領主様が準男爵への昇爵の話があると。
だが、予想を超えて男爵だという、これはめでたい。
「準男爵でなく、男爵とはさすが領主様だ!」
「今日は祭りだ!」
「領主様のところにお祝いを言いにいかないと!」
「そうだ、お酒で祝わないとだな!」
「お前はずっと飲んでただろ!」
領民達から色んな声が上がったが、多くは祝福する為に領主邸に押し寄せて大騒ぎになった。
ファーザはこの騒ぎをめでたいからと、訪れる人々に酒を振る舞い、料理を出し、お金を配って歓迎しお礼を言って回った。
自分のお祝いなのに逆にもてなす父に、本当に人が良いと思ったが、だからこそ慕われる人なのだと、誇りに思えたリューだった。
祭りは2日間続き、集まった領民達の体力の限界で、やっとお開きになったのだが、その数日後から連日、祝いの品が屋敷に届くようになった。
それは領民達からの物だったが、スゴエラ新侯爵の元の与力の貴族達からの物も続々と贈られてきた。
同胞のランドマーク家の出世は羨ましい限りだったが、あの家なら素直に祝福できるというのが大半の意見で、どこかの隣領の当主の様に妬み、ランドマーク家の悪口を広めようと躍起になるようなことはなかった。
全ては祖父カミーザとファーザの上げた功績と人徳であった。
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