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【書籍化&コミカライズ】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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347話 名声が上がりましたが何か?

 街一番の道場である事を鼻にかけ、日常的に横暴な振る舞いが多かったツヨーソ流剣術道場、子供の集団に敗れる!の報は勝敗がついた直後に、観戦していた多くの人々によってすぐに街中に広まる事になった。


 そして、その街一番の剣技で沢山の道場の中で権威をほしいままにしていた道場主をわずか一振りで倒した人物こそ、シーパラダインの街をお忍びで散策していた街長ジーロ・シーパラダインである事もすぐに広まった。


「新しい街長が!?」


「偶然、ツヨーソ道場の連中に絡まれ、名を伏せたまま勝負を受けて、成敗したらしいぜ?」


「そんなに強い人だったのか!まだ、14、5歳の子供だからこの武芸の街の街長が務まるのかと不安だったんだが、それなら安心だな!」


 住民達はこの痛快且つ、頼もしい一報に一気にジーロ人気が沸騰した。


 この日は、王女一行が街に立ち寄っている事だけでもお祭り騒ぎなのであったが、ジーロの事で街はこの話で持ちきりになるのであった。



「……リューの狙いはこれだったのか」


 長男タウロは、やけに道場破りに乗り気なリューを不審に思っていたのだが、次男ジーロを思っての事だと理解したのであった。


 帰りの道中は、スードに勝利で得たツヨーソ流剣術道場の看板を持たせ、その道場主を破ったジーロが先頭を進む事で、その宣伝効果は抜群であった。


 その中に、王女リズが男装して一緒に歩いているとは誰も思わないのであったが、一行が街長邸までの道を進むと、周囲からは一向に対して拍手喝采が起き、ジーロは武芸の街であるシーパラダインの街長に相応しい人物として歓迎されるのであった。


「すみません、リズ様。お忍びでの散策のはずでしたが、こんな事になって」


 リューは、誰が聞いているかわからないので、王女を付けずに謝罪した。


「ふふふ。これはこれで初体験で楽しかったですよ。ミナトミュラー君は本当に家族思いなのがわかりましたし」


 王女リズは、楽しそうにクスリと笑うと答えた。


「これでジーロも、この街の街長として認められ、統治が楽になるわね」


 リーンがリューの狙いを口にした。


「……でも、お兄さんが万が一負けたらどうするつもりだったのですか?」


 王女リズは、もっともな疑問を口にした。


 道場主の強さは未知数だったから、その可能性は十分あったはず。だから当然の疑問であった。


「僕が副将として、師範代と戦った時点で大丈夫だと確信がありました。うちのジーロは兄弟の中で剣技は一番の才能があるし、努力を惜しまない人なのでこの程度なら問題無いなと。それに、もし強ければ、僕がそのまま勝ち抜きすればいいだけですから。はははっ!」


 リューはニッコリと笑みを浮かべると、声を出して笑うのであった。


 自慢の兄を語るリューは誇らしさで一杯であった。


 そんなリューを王女リズは眩しそうに見ていた。


「いいご家族ね」


 リューに釣られる様に笑顔を浮かべた王女リズは、友人であるリーンにそう言った。


「でしょ?ランドマーク家は最高なのよ!」


 リーンも笑顔で王女リズの言葉に誇らしそうに答えるのであった。



 街長邸に戻ると、マカセリン伯爵が鬼の形相で待機していた。


 もちろん、王女リズは怒られる対象ではない。


「貴殿らは何を考えておられるのだ!王女殿下に何かあったら、そなたらの首だけでなく一族郎党根絶やしであったぞ!」


 リューとヤーク子爵、タウロにジーロが説教の対象であった。


 ランスは未成年の従者、スードも同じく、そして、リーンはリューの従者なので対象外という事で上記の四人が責任者として、こってり怒られるのであった。


「聞けば、シーパラダイン魔法士爵がこの街を治めていく上での名声が必要だったからという理由なのはわかったが、それでも王女殿下を伴っている時にやる事ではない!それはわかるな?」


「「「「……はい」」」」


 ヤーク子爵は、リューの行為に対して本当は終始反対姿勢だったのだが、ここで言い訳をすれば、マカセリン伯爵の矛先は自分だけに向くだろうと思い黙って説教されるのであった。


「マカセリン伯爵、私がお願いしたのです。怒るのはそれくらいにしてあげて下さい」


 王女リズが、マカセリン伯爵の怒気が収まるのを待って声を掛けた。


「ですが、王女殿下!」


「おかげで私も王宮にいては体験できない事が色々と経験出来ました。それは、今後も経験できない事かもしれません。それだけで私はみなさんに感謝の気持ちで一杯だから許してあげて」


「ぐぬぬ……。わかりました……。では、今回は王女殿下の顔を立てて私もこれ以上は何も言いますまい」


 マカセリン伯爵はそう言いながらまだ言いたそうにしていたが、怒りを収める事にした。


 こうして、突然のハプニングがあったものの、ランドマーク領での最後の一日を王女リズは楽しく過ごす事が出来たのであった。



 翌日の朝。


「ここから半日も過ぎずに王家直轄領に入ります。ランドマーク領の道案内はここで終了ですので、僕は失礼します」


 長男タウロは、王女一行との旅を名残惜しそうに挨拶する。


「ご苦労様でした、タウロ殿。ランドマーク領は治安が良く、とても穏やかな地でした。私の初めての旅の地として相応しいところでしたよ」


 王女リズは最大の賛辞を贈る。


「ありがたき幸せ。父ファーザもその言葉に喜ぶと思います。──リュー、後は頼んだぞ」


 長男タウロは笑顔で答えると、次男ジーロと共に後をリューに託して一行を見送るのであった。

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