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285話 誘い込みましたが何か?

 『聖銀狼会』と思われる勢力の謀略により、『闇商会』と『闇夜会』は夜中までその収拾に追われていた。


 日を跨ぎ、落ち着きを取り戻しつつあった頃、両組織のボスであるノストラとルチーナは共に寝る事無く動き続けていた。


 あまり目立った動きをすると察知され、今後狙われるリスクも大きいのだが、それもお構いなしであった。


 いや、両者とも逆にその瞬間を狙っていた。


 ノストラはお抱えの精鋭部隊を密かに動かし、自分を監視させていた。


 ルチーナも、腕利きの用心棒や部下達を自分から遠巻きに配置していた。


 そう、二人とも敵の本命である自分を直接狙わせる事にしたのだ。


 『竜星組』からの情報で、敵が『聖銀狼会』である事は、夜の段階ですでに知っている。


 敵が、王都に拠点を持たないとなると、手っ取り早く仕留めるには罠を張って引っ掛かるのを待つしかない。


 そして、この罠は、自分達が大ダメージを受けた直後だからこそ、敵が掛かる可能性が高いと踏んだのだ。


 この辺りは、元『闇組織』で大幹部を務めていた百戦錬磨の二人である。


 肝が据わっていると言うほかなかった。


 敵も流石にこの短時間で自分達の正体がバレているとは思わないだろう。


 それにこの絶好の機会を目の前にして、今日の大成功の体験の後だけに、狙わない手はないはずだ。


 そして、その時は訪れた。


 ノストラが被害の出た事務所を確認するとの名目で訪れたタイミングで、敵は襲撃してきた。


 明け方前の夜襲であった。


「やはりこのタイミングで来たか!──野郎共、昨日の鬱憤を晴らせ!」


 ノストラが声を上げると、襲撃してきた敵の精鋭三十人はアッという間に、ノストラの部下達に囲まれていた。


「殺して構わんが、何人かは捕らえておけよ。どこの人間か詳しく吐かせる」


 もちろん、ノストラはリューの情報から『聖銀狼会』の仕業だとわかっているが、逃げられた場合を想定して、敵に嘘の情報を与えておく事も大事な事であった。


 最初から全滅させる意図はない。


 敵は、罠だと気づくとすぐに標的のノストラを早々に諦め、一点突破で脱出を図った。


「……判断が早いな。これは数を減らしておく必要がある。一人一人囲んで確実に仕留めろ」


 ノストラは、部下達にそう指示をすると自らも剣を抜いて参加した。


 それからは『闇商会』側の一方的な戦いであった。


 敵は、ひとり、またひとりと仕留められていくと、逃げられたのはわずか二人という戦果であった。


 捕らえたのは重傷を負った三人。


「貴様らはどこの人間だ。素直に吐けば楽にしてやるぞ」


「……はぁはぁ。……俺達は竜星組だ」


 敵は死ぬ寸前にも拘らず、大胆な嘘を吐いて来た。


「……ほう。なるほどな。捕虜になった場合の対処法も最初から用意していたわけか」


「……はぁはぁ。ど、どういう意味だ……?」


 敵の兵隊は苦しそうにしながらノストラの真意に戸惑っている。


「お前らが『竜星組』だったら、うちの連中が全く顔を知らないわけがないんだよ。上手い事、西部出身者と判りにくい編成をしてきたんだろうが残念だったな。『聖銀狼会』の兵隊諸君、死ぬ寸前まで上の作戦通りに従うのは立派だが、バレバレだ」


「ば、馬鹿な……!お、俺は『竜星組』だ!」


 そう言うと敵兵は何か奥歯でガリっと噛み締めると、口から一筋の血を吐いて死んでしまった。


 自殺であった。


 他の二人もそれに続くように自害する。


「『竜星組』から事前に情報が来てなかったら、少しは騙されていたかもな。──『聖銀狼会』か。前回、散々痛めつけてやったのに懲りないやつらだ……。いよいよ王都再進出を狙って来たな」


 ノストラは、捕虜が三人とも死んでしまったので、溜息を吐くと部下達に命令する。


「死体はとっとと処分だ。住人も起きてきた。警備兵もさすがに動くだろうからいつも通り、金を握らせておけ!──あと、ルチーナに使者を出しておけ。敵は『竜星組』と争わせる気満々だとな」


 ノストラは、さすがにルチーナも事前の情報があるから騙されないだろうが、と思いつつ、最悪の状況にならない様に配慮するのであった。



 その時、夜明けを迎えながらルチーナ側も同じように襲撃を受けると、それを返り討ちにしていた。


「意外に強いじゃないかこいつら。それにしても、死ぬまで『竜星組』のフリをし続けるとはね……。『竜星組』にはまた借りが出来ちまったよ。そうだ、誰かノストラに使者を出しておきな!敵は『竜星組』と争わせる気だってさ。──連絡会が無かったら鵜呑みにしてたかもしれないね」


 ルチーナは、剣の血を敵の服で拭うと腰の鞘に納めた。


「あんた達、これから『聖銀狼会』と戦争よ!『闇商会』と、共闘する事になるだろうけど、『闇夜会』の意地を見せな!」


「「「へい!」」」


 朝日が昇り始め、その死闘の後を照らし出す。


 ルチーナは、その朝日を背に、部下達に後始末を命令するのであった。




「若、朝早くすみません」


 ランドマークビル五階の住居スペースにランスキーが血相を変えてやってきた。


「……おはよう、ランスキー。もしかして……、『闇商会』と『闇夜会』がまた襲撃でも受けた?」


 リューは眠そうにしながらもランスキーの顔を見てすぐにピンと来たのか指摘した。


「さすが若、その通りです。襲撃は『聖銀狼会』側の失敗に終わったようですが、どうやらうちの名を騙ったようです」


「……なるほど。そういう筋書きで事を進め様としていたのかあちらは……。まあ策の一つなんだろうけど色々やってくれるね。──あ、リーン、おはよう。ランスキーが来てるよ」


 リューは起きてきたリーンに気づいて声を掛けた。


「……ランスキー?何か緊急なの?」


 不機嫌そうなリーンであったが、まだ、起きたばかりで状況が掴めないでいた。


「姐さん、おはようございます」


 ランスキーは、挨拶するとリューの方を見る。


「リーンには僕から説明しておくから大丈夫。それより、両組織に改めてこちらは力を貸すと伝えておいて」


「へい、それなんですが……、自分達が売られた喧嘩なので手出しは無用との事です」


「ははは……。怒ってるね……。でも、マイスタの街の住民に関わる事だからうちも独自に動くよ。──例の件調べておいて」


 リューはランスキーに敵の調査について念を押すと、ついでに朝食に誘うのだったが、「さすがにお邪魔はしたくないので」と、言って断られた。


 ランスキーは足早に馬車に乗り込むと、ランドマークビルを去り、仕事に戻るのであった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


これからも、この「裏家業転生」、そして、書籍化した「自力で異世界へ!」と共に、よろしくお願いします。


あとお手数ですが、★の評価、ブクマなどして頂けると、もの凄く励みになります。


よろしくお願いします。<(*_ _)>

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