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27話 絶体絶命ですが何か?

 石壁の上から見ていたリューは、祖父と父の強さに驚くしかなかった。


 オークの群れが二人が進んでいくと半分に割れていくのだ。

 その光景だけでも凄いのに、父があっという間にオークジェネラルを討ち取った。

 オークジェネラルは祖父と自分の最初の魔法攻撃で負傷していたとはいえ、一瞬で倒すとは……。普段、稽古の相手をして貰っていて、これ程の強さだったとわからなかった自分が恥ずかしかった。

 そんなリュー達は他の冒険者達の支援の為、石壁から降り戦いの最中に飛び込むのだった。




 カミーザはオークキングと対峙した。


「下等ナ人間如キガ調子ニ乗ルナヨ!」


 オークキングが威嚇の形相をすると、手にしていた大剣を振るう。


 カミーザがそれを長剣で受け流す。


 数合打ち合うと、


「こやつ、ただのキングではないな」


 と、カミーザは驚いた。


 元の力の強さに加え、筋力強化、敏捷強化の魔法をかけているようだ。


 カミーザが押されていた。


「見テナイデ、オ前等モ攻撃シロ!」


 カミーザの胴に大剣を横薙ぎに払いながら部下のオーク達に命令する。


 後方に引いてオークキングの攻撃を寸前でかわすカミーザ。


 そこにオークが殺到しようとするがファーザがそうはさせない、間に入ってオークの首を飛ばしていく。


 オーク達はそのファーザの剣技にたじろいだ。


「やはりオーク。サシの勝負も関係なしか」


 ファーザが怒気をはらんだ気配を発してつぶやいた。


「助かった、息子よ。ちとワシはこいつに集中する」


 カミーザがファーザに礼を言うと、


「筋力強化、俊敏強化」


 とつぶやくと自分に魔法をかけた。


「本番はこれからじゃ、豚の王よ。オークエンペラーに進化する前に始末してやるわい」




 リューのみた目からは、形勢は五分五分だった。


 未だ祖父とオークキングの勝負はつかず、オーク達も数で冒険者達に対している。

 リューとジーロは数で劣る冒険者達の怪我をまめに回復し、シーマはその二人を守る。


 このまま持久戦になるとこちら側が不利だとリューは感じていた。

 力、体力、数、どれもオーク側が有利だ。

 なので、カミーザとオークキングの戦いをずっと観察していた。

 どこかで隙が生まれるはず、その時、祖父と父に怒られてでも、横やりを入れるつもりでいた。




「こやつ、戦いの中で成長し始めとるの」


 一時互角だった対決だったが、徐々にカミーザが押され始めていた。


 ここで自分が負ければオークエンペラーに成長させる事になるかもしれない。

 それだけは死んでも許されない。


 ファーザもそれを感じたのか、オークと対峙しながら、参戦する機会を窺っていた。


「サッキマデノ勢イハドウシタ?」


 有利を悟ったのかオークキングが、挑発する。


「やれやれ、歳は取りたくないもんじゃ。昔ならとっとと勝負がついてたはずだろうに」


 祖父カミーザがボヤいてみせた。

 まだ余裕があるようにも聞こえたが、オークキングに明らかに押され始めていた。

 攻撃を凌ぐのも紙一重になってきたのだ。


 剣を交えるのも100合目を越えた頃。


 バキン


 甲高い鉄が折れる音がした。


 オークキングの大剣を受け流そうとしたカミーザの長剣が真っ二つになった音だった。


「しもうた!」


 カミーザの悲痛の声。


「父さん!」


 祖父の声にファーザが振り返る。


「終ワリダ!死ネ!」


 オークキングが叫び、大剣を振り上げた。


「岩槍!」


 その瞬間、カミーザとファーザの背後でリューの声がした。


 そしてカミーザの顔の横を何かが通過し、気づくとオークキングの口に土魔法『岩槍』が吸い込まれていった。


「ギャッ!」


 リューの土魔法はオークキングの口から後頭部にかけて貫通していた。


 カミーザはその瞬間を見逃さなかった。


 短剣を腰の鞘から抜くとオークキングの首に突き立てる。


 それを掴もうとするオークキングからカミーザは飛び退ると、入れ替わりにファーザも追い打ちで心臓に長剣を突き刺した。


「ウガー!」


 断末魔の叫びと共にオークキングは倒れた。


 その叫びにオーク達の手は止まり、「プギー!」という叫び声と共に、逃げ始めた。


 オークキングの死は、ランドマーク側の勝利を意味するものだった。

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