253話 学祭での評価ですが何か?
リューとランスキー達職人は、ライバ・トーリッターと強面の一味をあっという間に退散させた事で、お客から拍手喝采が起こった。
「ミナトミュラー君、ありがとう。私が注意しなくてはいけないところだったのだけど助かったわ」
エリザベス王女が、リューの助っ人にお礼を言う。
「いえ、あちらの指名は僕でしたし、王女殿下のお手を煩わせる事は、騎士爵として恥ですから、すぐに気づけて良かったです」
リューは申し訳なさそうにした王女に笑顔で答えると、今度はお客に告げる。
「お客様方にはご迷惑をお掛けしました。今回のお代は僕が持ちますので、良かったら後でまたお越し下さい」
リューの粋な計らいにお客はまた、歓声を上げてリューに拍手を送るのであった。
お昼時間を過ぎると、リーンとランスが講堂から戻って来た。
リーンは不機嫌、ランスは満更でもない表情だ。
戻ってきた二人をリューは出迎えると、どうだったかと聞いた。
「講堂の傍の部屋に順番が来るまで閉じ込められててさ。先に俺が出番だったんだけど、同時に二人から告白されて参ったよ。へへへ」
ランスは嬉しそうに答えた。
「へー、そうなんだ!で、返事はどうしたの?」
リューもランスが嬉しそうなので聞き返す。
「そりゃ、初対面に近いのに承諾はしないさ。お友達からって答えて有耶無耶にしたよ。じゃないと流石にみんなの前でかわいそうだろ?」
ランスらしい答えだ。
「じゃあ、リーンは?」
不機嫌そうな態度から何となく察したが、一応、話を振った。
「もう、大変だったわよ……!よく知らない生徒が沢山並んで、一人一人私の事をああだこうだ言うんだけど、長くて要領を得ないから聞いてるだけで疲れちゃったわ。でも、沢山いたから逆に気を遣わずに断れたから簡単だったけど」
「そんなに沢山いたの?」
リューは傍のランスに聞いた。
「ああ、15人くらいいたぞ。みんな気合の入り方が凄かったけど、リーンがそれを一言で終わらせたから会場は爆笑だったな」
「一言?」
「ええ。『ごめんなさい』の一言で済ませて来たわ」
「ええー!?」
「司会の生徒が必死に、取りつく島がないリーンから他の言葉を引き出そうとしたけど、その前にリーンは退場しちゃってさ。観客はあっさりフラれて呆然とする生徒を見て笑ってた。まあ、あれはあれで観客にウケたから、イベントとしては成功なんだろうな」
ランスは、告白大会のオオトリだったリーンの回を振り返ってそう評するのであった。
「リーンらしいと言えば、リーンらしいけど」
苦笑いするリューであったが、そのイベントのお陰でライバ・トーリッターと鉢合わせになっていなくて良かったとも思う。
もし、あの場にリーンとランスがいたら、自分より前に出て大事になっていた可能性もある。
そうなったら、学祭自体が台無しになっていたかもしれないのだ。
それにランスキー達も控えてくれていたから、初動で的確な対処ができて、無難に済んだ。
「え?ライバ・トーリッターがやって来たの!?」
シズに二人がいない間に起きた出来事を聞いてリーンが想像通りの反応を示した。
「マジか!?どの面下げてやって来たんだライバの野郎!」
ランスもそれを聞いて態度が一変する。
「まあまあ、二人とも。ライバ君とその取り巻きには、”穏便”に帰って貰ったから大丈夫だよ」
「……あれが穏便なのか?」
裏方をずっと務めていたイバルが呆れてツッコミを入れるのであったが、リューはそのツッコミをスルーする。
「だから、残り時間、学祭を楽しもう!」
リューは笑顔でそう声を掛けると、
「「「「「おう!」」」」」
と、みんなは一致団結するのであった。
その後の、学祭は順調であった。
入れ違いで休憩時間を作り、他の催しを楽しむ時間も取れたし、他の生徒も学祭を楽しめていた。
そんな中、リューが個人的に驚きだったのは、リーンとシズと王女の親密度だ。
二人が王女をリズと呼ぶようになったのは知っていたが、呼び方が変わった事で距離感が一気に縮まったのか、休憩時間も3人で一緒に他のクラスの催しを見学するなどしていたようだ。
その分、王女の取り巻きは困惑していたが、エルフの英雄の娘リーンと上級貴族ラソーエ侯爵の娘シズ相手だから王女の友人としては相応しいので不満も言いようがない。
それに、執事・メイド喫茶のお客からの人気もこの3人が段違いという事もあり、学祭をきっかけにリーンとシズの立ち位置もかなり変わりそうな雰囲気であった。
お客からの人気のあった男子は、身長も高く健康的な美丈夫ランスと、すらっとした冷静な面持ちの美男子ナジンが一位を争った。次点にリューという並びだ。
リューは裏方中心でやっていたので、評価が付きづらい事もあったが、身内の評判ではダントツだった。
ランスキー達職人を連れてきたことに加え、ライバを追い払った事で王女の取り巻きにもかなり好印象を与えたのだ。
リーンはお客の人気でリューが一番では無かった事に少し不満であったが、クラスメイトからの評判が王女と並んで一番高かった事を知ると、そこでやっと満足した。
リューとしても、クラスメイトの最初の頃の評価を考えると、随分良くなったなぁと素直に喜び、学祭終了の時間を迎えるのであった。




