220話 誤魔化しますが何か?
リューは説明するのに悩んでいた。
ランス、ナジン、シズが知らなくてもいい情報を提供しても良いものかという話だ。
イバルは、ミナトミュラー商会で雇っているので、一応知ってはいるが詳しい事までは何も知らない。
知る必要が無いからだ。
逆に知れば今後その情報によって危険が及ぶかもしれない。
そこでリューはギリギリのところを話す事にした。
「三人には口外厳禁で話すけども……。竜星組の本部って、僕が任されているマイスタの街にあるんだよね」
「「「えー!?」」」
三人はその情報だけでも驚く。
竜星組は王都に大きな縄張りを持つ組織だ。
もちろん、そんな組織の本部は王都にあるのだと思うのが普通だろう。
「それで、街長という立場上、竜星組とは無縁じゃいられないというか、関係有りまくりというか、そんな感じであまり表だって触れられたくない話題なんだ」
リューは嘘を吐いてはいない。
苦しい言い分であったが、触れられるとみんなに知らなくてもいい情報まで与えないといけなくなるから、この表現がギリギリであった。
「……そうだったのか。そんなヤバい組織が自分の治める街にあるとか大変だな……」
ランスが同情的な言葉を口にする。
「……確かに街長としては、そんな大きな裏社会の組織とも関係性を『0』には出来ない立場だよな。裏社会の人間も統治しなければいけないから……」
ナジンも考え込むとリューの立場を自分の解釈で理解してくれたようだ。
「……パパも裏社会の人には、知り合いがいるって言ってたよ。領主は表も裏も知っていないとやっていけないって言ってた」
一番抵抗がありそうだと思っていたシズが一番、理解している口振りで感想を言う。
みんなごめん。
その組織の組長が僕なのは流石に言えないや。
リューは多少心が痛む思いであった。
リーンもリューを察したのか、リューの肩をポンポンと軽く叩く。
「みんな理解してくれてありがとう。ちなみに、竜星組の人達は良い人ばかりという事だけは言っておくね」
「「「そうなの?」」」
リューの擁護意見に三人は驚いた顔をする。
「強面な人が多いけど、中身はさっきの人みたいに礼儀正しいし、筋を通す義理人情に厚い人達だから。もし、緊急事態の時は、僕の名前を出して助けを求めるといいよ」
リューは、まず、この友人達の印象の改善を図った。
何しろ竜星組の元は『闇組織』なのだ。
あのイメージが付き纏う以上、急に良いイメージに変えるのは難しいだろうとは思うが、竜星組と名を変え、自分が組長になった以上、過去のイメージを払拭するのは急務である。
目の前の友人達の印象さえ変えられなければ、一般の人からの印象は変わらないだろう。
自分はただでさえ、マイスタの街の住人からしたらよそ者である。
そのよそ者から指示されて従ってくれているのは、ランスキーとマルコの存在によるところが大きいだろう。
この二人が、紆余曲折を経て自分を支持し、従ってくれている以上、それに応えて竜星組をより良いものにしたい。
そして、住人の信用を得るのだ。
それは、マイスタの街の住人の幸福とイコールでもある。
街長として、商会会長として、そして、竜星組組長としてマイスタの街の人達の生活を守るのがリューの責任であった。
信頼を得る時、それは、マイスタの街の住人の幸福を意味すると思っていた。
ランス達は、リューの言葉を信じて、竜星組へのイメージを少しは変えてくれた様だ。
「怖いイメージはあるけど、リューがそう言うのなら信じるぜ!」
ランスが、親指を突き出すと、笑顔で誓ってくれた。
「そうだな。さっきもリューに対して、腰が低い感じだったし、礼儀正しかったからな。それにチンピラは結局、竜星組を騙っていただけと判明したし、リューの言う事は信用できるよ」
ランスの言葉を引き継いで、ナジンが頷く。
「……でも、リュー君凄いね。私なら怖い容姿を見るだけで勘違いしてたと思う」
シズが、真面目にリューに感心する。
「ははは。基本、彼らの世界の人間は、弱い者、甘い人には、とことんつけ入ってくるからね。だから普段から彼らは、つけ込まれない様に、強そう、怖そう、偉そうにしてないといけないんだ。でも、竜星組はそういう連中もまとめて義理と人情に厚い組織を目指しているんだよ」
リューは一人、熱く竜星組を語り出した。
「リュー、その辺にしときなさい」
リーンが、これ以上、リューに語らせるとぼろが出ると判断して止めに入った。
「──お、おう。熱いなリュー。まあ、リューがそれだけ擁護するくらいだから、信用するよ。でも、基本、他から聞こえてくる裏社会で暗躍する組織は評判が悪いから信用しない方が良いよな?」
情報通のランスが、何か知っているのか確認して来た。
「今は、竜星組に関してだけでいいよ。さっきも言ったけど、基本は、弱者や甘い人にはとことんつけ込むのがその筋の人間だからね、信用はしない方が良いと思う」
そう、前世でもその筋の人間はとことん弱者には強かった。
自分は、同じ同業者への金貸しだったから、強さを示して抑えつけて立場をわからせるところから始めるので大変だったが、この手の人間は強者へは滅法弱いのも確かだ。
だからこそ、手加減や、優しさは甘さと映るから、力で示し、回収するのが常であった。
なので、あのチンピラに制裁は必須なのだ。
ああいう連中は頭が悪いが、悪知恵は働く。
なので、きっちり落とし前を付けて、体に覚えさせないといけない。
そうでないと更生せずに繰り返す、より悪質にだ。
あのチンピラ達は竜星組の構成員ではないが、縄張りでそれをさせるわけにはいかない。
今頃、うちの組員によって、根性を叩き直されているだろう。
「じゃあ、みんな。さっさとお店に行って、買い物しよう」
リューは話を切り替えて、そうみんなに促すと、お店に向かうのであった。
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