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19話 塩を撒きますが何か?

 寄り親であるスゴエラ辺境伯の元に年末の挨拶の為、ファーザは出かけていった。


 リューも行ってみたかったが、今回は長男タウロを連れていったのでジーロと二人でお留守番だ。


 その留守を狙ったのか、偶然なのか、スゴエラ辺境伯を同じく寄り親とする隣領のエランザ準男爵がランドマーク領に訪問してきた。


 訪問を告げる使者が来たのが、来訪の数時間前。

 これは少なくとも嫌がらせではあるだろう。

 リューはこれだけで、嫌な印象を受けた。

 ファーザの代理人として祖父のカミーザが急遽、迎える事になった。

 ジーロとリューも一緒だ


 馬車が到着すると派手目の服に口髭、髪型は前世で言うところのリーゼント、髪色は黒色の中年紳士が馬車から降りてきた。

 歳は三十六らしい。

 祖父のカミーザの話だと父が二十九歳だから、地位と年齢が上なのを笠に着て父には偉そうにしているらしい。


「カミーザ!?あ、こ、これは、カミーザ前当主殿、隠居なされたはずなのになぜ?当主殿はどこですかな?」


 祖父カミーザがいたのがよほど驚きだったのかエランザ準男爵は動揺していた。


「息子のファーザはスゴエラ辺境伯の元に挨拶に行っている。エランザ準男爵殿はこんな事で息子に嫌がらせするつもりだったのだろうが、入れ違いでしたな」


 カミーザは強烈な嫌味を言って大笑いした。

 どうやら祖父はこの男の天敵らしい、遠慮がなかった。


「あ、相変わらず無礼な方だな!私でなければ、その失礼な態度を問題にしたところですよ」


 自分がやった事は棚に上げて自分は寛大だと言いたいらしい。


 このやり取りでリューは完全にこの男を嫌いになった。


「問題にしてくれても構わんよ?そんな事より、今日は何をしに来たんだね。うちの息子はもう、挨拶に行ったのに、こんなところで悠長に隠居した人間を批判してていいのかな?スゴエラ辺境伯のお主への心証が悪くなると思うぞ」


「よ、予定日にはまだ時間があるから大丈夫なはずですよ!……まさか早く行くとは……、これでは計画が……」


 エランザ準男爵は後半はぶつぶつ言って聞こえなかったが、父に何か嫌がらせを計画してたようだ。


「何を企んでるのか知らんが、外で話すのもなんじゃ、うちに入るといい」


 カミーザが屋敷に招いた。


 こんな男、外で十分なのに!


 リューは思ったがジーロが先頭になってお客様として誘導する。


 慌ててついて行くが、うちの家族は良い人過ぎると思うリューだった。



 不本意だが、リューはメイドに頼んでお茶を出した。

 うちの自慢の「コーヒー」だ、水飴を溶かし込んでいる。


「この黒いお茶……、これが噂の……」


 エランザ準男爵はつぶやくと一口飲んだ。


「……!か、香りといい、味といい、これは素晴らしい飲み物ですね。ファーザ殿がいないのなら仕方ない。代わりにそこの子供達からでも、このお茶の生産方法を聞こうかな」


 何を言ってるんだこの人は?教えるわけがないだろ。


 リューはこのエランザ準男爵の厚かましさにビックリした。


「教えるわけがなかろうが」


 カミーザがきっぱり断る。


「今、留守を預かってるのはそこの子供達では?隠居された方は引っ込んでおられたらいかがですか?」


 つくづく失礼な奴だな。


 リューが言い返そうとするとジーロが口を開いた。


「先程も祖父が申し上げました通り、当主が留守にしています。スゴエラ辺境伯様の元に集う同じ臣下、困った時は助け合うお隣同士とはいえ、頭ごなしに教えろというのは無理がございます」


 丁寧にジーロは断った。

 いつもはのほほんとしているが、流石兄だ。


「その辺境伯様の同じ臣下であればこそ、お互いに有益な情報は共有するのが大事だと思わないかね」


「いいえ、そうは思いません。それを判断するのはスゴエラ辺境伯様です。一臣下がその判断をして良いとは思えません。それとも、エランザ準男爵殿は、寄り親である辺境伯様を蔑ろに出来る力をお持ちなのでしょうか?」


 今度はリューが切り返した。


「確かに、今のはそう聞こえるの。隠居の身だが今の発言は見過ごせん。エランザ準男爵殿、辺境伯様に報告するが良いかな」


 祖父カミーザはスゴエラ辺境伯のお気に入りだった。

 報告されたらただ事では済まないだろう。

 もちろん、祖父は報告しないだろう、そういう人ではない。


「え、いや。そ、そんな事あるわけがないではないですか!もちろん冗談です。おっと、長居してしまった様だ、私も早く、スゴエラ辺境伯様の元に挨拶に行かねば。お邪魔した」


 エランザ準男爵は慌てて馬車に乗り込むとランドマーク家を後にした。


「誰か玄関に塩を撒いといて!」


 リューがメイドに言う。


「塩ですか?」


「そう、塩を撒く事でこの場を清める意味があるの」


 それを聞いたメイドは納得するとすぐに塩を撒くのであった。

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