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【8巻予約開始!】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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185話 執事面接ですが何か?

 マイスタ街長邸宅の広間において執事の採用面接が行われる事になった。


 応募したマイスタの住人は意外に多く、その数三十八人。


 職にあぶれて仕事が欲しいという者から、主婦、まだ十代の若い男女、職人やメイド、他所の貴族の下で働いていたが、この為に辞めて来たという者もいた。


 他には変わり種で食堂の女将や、冷やかしと思われるよそ者のチンピラ、仕立屋を名乗る男装した女性、最近マイスタの街に移り住んだという元商人、元冒険者に元傭兵などまで混じっている。


 想像していたより様々なタイプの職を経験した者が集まったので、リューとリーンは目を見合わせるのだったが、募集した以上面接をしなければならない。


 学校も一日休みを貰っていたので、有意義に時間を使いたい。


 出来れば、この日の内に執事を見つけたいところだった。


「番号札一番から順に面接しますので部屋に入って来て下さい」


 街長代理マルコの部下でもある使用人が、執事候補を一人一人部屋に呼び入れた。


「め、面接番号一番!住所不定無職ニートンだ、働かせてくれ!」


 一番目から働きたい満々の男性がリューが椅子を勧める前に座ると食い気味に第一声を放つ。


「えっと。まず、読み書き、計算は出来ますか?」


「いや、できねぇ」


「それでは、何ができますか?」


「できたら、無職じゃねぇよ」


「やる気はあるけど、手に職は無い……と。それでは、ニートンさん。うちの商会の土木部が働き手を募集してるのでそちらで面接して下さい」


「力仕事は、疲れて嫌だから、執事の面接受けたんだよ」


「……わかりました。あなたに今後、仕事が見つかる事を祈っています。お疲れ様でした」


「祈るって何だよ、採用してくれよ!」


「次の方をお願いします」


 リューの言葉にそばに居た使用人が二人、男を両サイドから腕を掴んで強制退室させる。


「……最初からあれなの?あと三十七人こんな感じなら大変よ?」


 リーンが、一番目からの癖の強さに呆れた。


「……これはぱぱっと判断しないと駄目だね」


 そうリューが答えていると二番目の男性が入って来るのであった。




「──だからさ。俺、生まれも育ちもこの街なんだよね。だからあんたの先輩じゃん?色々教える事出来るから雇ってくれていいんだぜ。それに隣のエルフ、超可愛いいじゃん。俺タイプだから頑張れると思うんだよな」


 十何人目かの十六歳の彼は一応、今年で成人した男性だが一般常識から欠けている様だ。


「先輩かどうかでマウント取ってる暇があったら、上司になるかもしれない相手への口の利き方に気を付けて下さい。──それじゃ次の方をお願いします」


 リューは、もう慣れて来たのか駄目だと思ったら一言答えると退室させて次を呼び込む様になっていた。


「……リュー。今のところまともな人いないんだけど?」


 リーンの方は、ウンザリして来たのか頬杖をついて愚痴を漏らした。


「まあまあ。まだ、今ので十八人目だから。残り二十人の方に良い人いるかもよ?」


 リューがリーンを宥めていると、次の面接者が入って来る。


「面接番号十九番。ミータといいます。商家の屋敷でメイドをしていました。読み書き、計算もできます。」


「おお?」


 やっと執事として最低条件であった基準に達する人が現れたのでリューも反応した。


「なぜ、商家でのメイドからこちらへ?」


「職業柄上、色んな事を見聞きする事が多くて、その情報を他に売……、話していたら、お暇を貰う事になったので、地元であるこちらに帰って来たところ、この話を聞いて面接を受けに来ました」


「……クビになったという事ですね」


「いえ、ただお暇を──」


「クビ、ですよね?」


「……はい」


「雇い主の情報を他所にバラすのは、良くない事だと理解して下さいね。それでは次の方どうぞ」




「面接番号?二十五番だったかな?──それよりお前いくつよ?まだガキじゃん。ウケる!たまたま、この田舎に来てたんだけどさ。執事?なってやってもいいぜ?俺、地元ではかなり喧嘩つぇーって有名だからよ、お金次第では、用心棒とかやってもいいぜ?」


 あー、この人、ただの冷やかしだ。


 リューは、そう理解するとその面から表情が消える。


 こういう輩は、普通に対応するとつけあがるのはわかっているので、最初から鉄拳制裁するに限ると判断したリューであったが、隣のリーンはすでに殺気を漂わせていた。


 それに気づいてリューが止めようとした次の瞬間、リーンは細剣を抜き放ち、一瞬でチンピラの服をズタズタに切り裂いていた。


 チンピラは、一瞬の出来事に身動き一つ取れず、唖然としているところに、リーンのその剣先はチンピラの右の眼球の前にピタッと添えられていた。


「礼儀以前に騎士爵相手にそんな態度が許されると思ってるの?というか自殺願望があるのなら言いなさい。明日の朝には遺体も残さず、失踪者扱いにしてあげるわよ」


 リーンが殺気を剣先に乗せて放つと、チンピラは椅子に座ったまま青ざめて失禁し、


「ご、ごめんなさい……」


 と怯えて答えた。


 リーンが、放つ殺気を抑えて剣を引くと、チンピラは恐怖で動けなかった身体が動けるようになったのか、短く悲鳴を上げ、逃げる様に慌てて退室するのであった。


「リーンご苦労様。ちょっと休憩入れようか」


 リューはリーンのストレスを理解したのか休憩を挟む事にするのであった。

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