17話 リゴー飴ですが何か?
コヒン畑拡張の為の森の開拓作業は、予定よりも何倍も早く済み、数日で終わった。
リューの力技があってこそだったが、おかげで経費も労力も抑えられる事になった。
今年は大豊作でもあるので、豊穣祭も盛り上がる事だろう。
お祭りを少しでも盛り上げたいリューだったが、思いついた出店の定番「リンゴ飴」を作る為の砂糖が入手しづらい事がわかった。
この世界では砂糖が貴重なので価格が高いのだ。
だが、リューは諦めなかった。
なぜなら水飴の原料は麦芽糖だと知っていたからだ。
前世の極道時代、テキヤ担当の先輩極道に酔っぱらう度に聞かされたものだった。
「いいか、竜星。大麦を発芽させて麦もやしを作り、乾燥させて粉末にする。もち米で作ったおかゆに乾燥麦芽を加え、漉した液を煮詰めれば水飴は完成だ。簡単だろ?まあ、その手間をかけなくても、業者から買えば済むんだがな。がははは!」
ありがとう先輩。
酒代を人に出させようとするせこい人だったけど今は感謝。
幸い、もち米は家畜の餌の一部だったので容易に手に入った。
大麦も小麦と一緒に生産されていたので入手は楽だった。
つまり、これで前世のリンゴ飴、もとい、現世の「リゴー飴」も作れる、というわけだ。
リゴー飴は簡単だ、水飴を煮詰めてリゴーの実に絡ませて乾燥させれば出来上がりだ。
屋敷の厨房で手本を見せると、
「これならいけそうですね」
と、納得した料理人と兄達、そして、シーマは、みんなで協力し大量に作る事にした。
厨房に並ぶ大量のリゴー飴は圧巻だった。
「不思議とこう沢山あると、つまみ食いする気にならないね」
ジーロが言うと周囲は笑いに包まれるのであった。
沢山出来たリゴー飴をリューがマジック収納に入れると準備はOKだ。
あとは豊穣祭当日を迎えるだけだった。
豊穣祭当日。
人だかりができる出店があった。
領主様のところの息子達が出してる出店だ、みんな気になって覗いていた。
そこに、ニダイ村の悪ガキだったシーマが、
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!砂糖の液体で包まれたリゴーの実の砂糖菓子だよ。名前はリゴー飴!甘くておいしいよ!数に限りがあるから早い者勝ちだよ!」
と、見物人達を煽ってみせる。
「砂糖菓子!?」
見物人たちはどよめく。
「領主様の所の坊ちゃん達を疑うわけじゃないが、砂糖は高いのにその値段で大丈夫なのかい?」
見物人が疑問をぶつける。
「この日の為に、特別に用意しました!」
リューが言うと、説得力がある。
ここのところ、大活躍の坊ちゃんである。
そこへ長男のタウロが、
「疑問を持つのはいいですけど、早い者勝ちです!心配は食べた後にした方が良いですよ!」
と言うと、囲むように見ていた者達は、どっと押し寄せた。
好奇心がタウロの言葉で後押しされたのだ。
「俺に一つくれ!」
「私も一つ下さいな!」
「砂糖菓子を食べるのは生まれて初めてだから、家族の分も含めて四つくれ!」
一気にリゴー飴は大人気になった。
買ったお客さん達は我先にと串に刺されたリゴー飴を頬張った。
「こ、これは甘い!リゴーの実の酸味がまた、砂糖の甘さと合って美味しい!」
「これが、砂糖菓子か……!こんなに甘い物があるなんて!」
「美味しい……!」
反響は凄まじく、ランドマーク領の住人の多くは砂糖を食べた事が無い人がほとんどだった為、初めての砂糖菓子に感動の渦が出来るのだった。
リゴー飴は完売した。
用意していた二百個があっという間である。
大豊作と手押し車バブルでみんな、ちょっとした贅沢が出来たのだった。
「大変だったけど、みんな喜んでくれたね!」
ジーロが興奮気味に言う。
「うん!みんな美味しいって言ってくれたし」
いつも穏やかなタウロもみんなが喜ぶ顔に興奮していた。
「じゃあ、みんなの分」
リューがマジック収納から最後のリゴー飴を四つ取り出した。
「あ、僕達が食べてなかったね」
タウロが笑うとみんな一緒になって笑い、リゴー飴にかぶり付くのであった。