表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/845

17話 リゴー飴ですが何か?

 コヒン畑拡張の為の森の開拓作業は、予定よりも何倍も早く済み、数日で終わった。


 リューの力技があってこそだったが、おかげで経費も労力も抑えられる事になった。


 今年は大豊作でもあるので、豊穣祭も盛り上がる事だろう。


 お祭りを少しでも盛り上げたいリューだったが、思いついた出店の定番「リンゴ飴」を作る為の砂糖が入手しづらい事がわかった。


 この世界では砂糖が貴重なので価格が高いのだ。

 だが、リューは諦めなかった。

 なぜなら水飴の原料は麦芽糖だと知っていたからだ。


 前世の極道時代、テキヤ担当の先輩極道に酔っぱらう度に聞かされたものだった。


「いいか、竜星。大麦を発芽させて麦もやしを作り、乾燥させて粉末にする。もち米で作ったおかゆに乾燥麦芽を加え、漉した液を煮詰めれば水飴は完成だ。簡単だろ?まあ、その手間をかけなくても、業者から買えば済むんだがな。がははは!」


 ありがとう先輩。

 酒代を人に出させようとするせこい人だったけど今は感謝。


 幸い、もち米は家畜の餌の一部だったので容易に手に入った。

 大麦も小麦と一緒に生産されていたので入手は楽だった。

 つまり、これで前世のリンゴ飴、もとい、現世の「リゴー飴」も作れる、というわけだ。


 リゴー飴は簡単だ、水飴を煮詰めてリゴーの実に絡ませて乾燥させれば出来上がりだ。


 屋敷の厨房で手本を見せると、


「これならいけそうですね」


 と、納得した料理人と兄達、そして、シーマは、みんなで協力し大量に作る事にした。




 厨房に並ぶ大量のリゴー飴は圧巻だった。


「不思議とこう沢山あると、つまみ食いする気にならないね」


 ジーロが言うと周囲は笑いに包まれるのであった。


 沢山出来たリゴー飴をリューがマジック収納に入れると準備はOKだ。

 あとは豊穣祭当日を迎えるだけだった。




 豊穣祭当日。


 人だかりができる出店があった。

 領主様のところの息子達が出してる出店だ、みんな気になって覗いていた。


 そこに、ニダイ村の悪ガキだったシーマが、


「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!砂糖の液体で包まれたリゴーの実の砂糖菓子だよ。名前はリゴー飴!甘くておいしいよ!数に限りがあるから早い者勝ちだよ!」


 と、見物人達を煽ってみせる。


「砂糖菓子!?」


 見物人たちはどよめく。


「領主様の所の坊ちゃん達を疑うわけじゃないが、砂糖は高いのにその値段で大丈夫なのかい?」


 見物人が疑問をぶつける。


「この日の為に、特別に用意しました!」


 リューが言うと、説得力がある。

 ここのところ、大活躍の坊ちゃんである。


 そこへ長男のタウロが、


「疑問を持つのはいいですけど、早い者勝ちです!心配は食べた後にした方が良いですよ!」


 と言うと、囲むように見ていた者達は、どっと押し寄せた。


 好奇心がタウロの言葉で後押しされたのだ。


「俺に一つくれ!」


「私も一つ下さいな!」


「砂糖菓子を食べるのは生まれて初めてだから、家族の分も含めて四つくれ!」


 一気にリゴー飴は大人気になった。

 買ったお客さん達は我先にと串に刺されたリゴー飴を頬張った。


「こ、これは甘い!リゴーの実の酸味がまた、砂糖の甘さと合って美味しい!」


「これが、砂糖菓子か……!こんなに甘い物があるなんて!」


「美味しい……!」


 反響は凄まじく、ランドマーク領の住人の多くは砂糖を食べた事が無い人がほとんどだった為、初めての砂糖菓子に感動の渦が出来るのだった。




 リゴー飴は完売した。

 用意していた二百個があっという間である。

 大豊作と手押し車バブルでみんな、ちょっとした贅沢が出来たのだった。



「大変だったけど、みんな喜んでくれたね!」


 ジーロが興奮気味に言う。


「うん!みんな美味しいって言ってくれたし」


 いつも穏やかなタウロもみんなが喜ぶ顔に興奮していた。


「じゃあ、みんなの分」


 リューがマジック収納から最後のリゴー飴を四つ取り出した。


「あ、僕達が食べてなかったね」


 タウロが笑うとみんな一緒になって笑い、リゴー飴にかぶり付くのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ