159話 身内の会合ですが何か?
平日の夕方、リューとリーンが学校からランドマークビルの自宅に帰ってくると、ビルの管理を任されているレンドが丁度、自宅の玄関前に訪れていた。
家の中に一緒に入るとそこには祖父カミーザ、領兵隊隊長のスーゴもいる。
「戻ったかリュー、リーン。レンドも来たか、そこに座れ」
祖父カミーザとスーゴは、リューの帰りを待っていたのか、声をかけると一緒に入って来たレンドにも着席を促した。
そう言えば、レンドは祖父カミーザを恩人と言っていた。
どうやら、祖父カミーザに頭が上がらないのか腰を低くして会釈すると着席した。
「……領主であるファーザは領内の事があるからそっちに専念して貰って、こっちはこっちでやるとするかの。──それでじゃが、リューの睨んだ通り、街長代理のマルコはどうやら『闇組織』の幹部の1人だったようじゃ。言われた通り監視しておったら、代理としていくつか会合を開いていたんじゃが、その中に妙な組み合わせの会合があってのう。それがどうやら『闇組織』の幹部会合だったと見ている」
「妙な組み合わせですか?」
リューが聞き返す。
「ああ。一人はマイスタの街の農業ギルド会長の男、もう一人はマイスタの街を拠点に金貸しを生業にしてる女、最後が商業ギルドの組合員じゃ。今はそこまでしか確認が取れておらんが、街長代理が会合するには奇妙じゃろ。一人だけ商業ギルドの平の組合員が混じっとる。絶対とは言えんが少なくとも何か企んどると見てな。一人一人ワシが遠めから確認してみたが、どいつもこいつもただならぬ雰囲気を持っとったわ。わはは!」
祖父カミーザがその目で確認したのなら、十中八九当たりだろう。
自分の目でも確認したいところだが、それは今度にしよう。
「その中にボスはいると思うおじいちゃん?」
リューは一番重要な事を確認した。
「ワシが見た限りだと、どいつも大組織のボスを務める感じはしなかったのう。どちらかといったら、小物感を出しつつそれなりの雰囲気を出してるマルコという男の方がまだ、ボスには向いてそうじゃったが、『闇組織』の規模を考えると、ちと力不足じゃな」
「自分もそう思います、リュー坊ちゃん。大物感を出しているのは農業ギルドの会長を務めるルッチという男でしたが、あれはボスが務まるほどの器は感じませんでしたね。腕っぷしで成り上がった感じでしょう。金貸しの女、ルチーナは裏の人間の雰囲気をかなり漂わせていましたが、ボスという感じではないです。気になったのは商業ギルドの平組合員のノストラ、こいつは飄々とした雰囲気を漂わせる細面の男ですが、あれはかなりのやり手と見ました。ですがボスという感じはないですね」
スーゴが祖父カミーザの説明を引き継いで詳しく観察内容を話してくれた。
「そうなると、ボスは相当慎重なのかもしれない。幹部は幹部で見張って、まだ知られていない拠点を暴きつつ、ボスの存在を炙り出して下さい。僕は僕で街長としての仕事の為に、また、週末マイスタの街を訪れるので、リーンと一緒に探ってみます」
リューはそう言うと、『闇組織』と、三連合の抗争についての報告に移った。
「坊ちゃんの言う通り、どちらとも慎重に、だが確実に相手の急所をとらえようと相手の重要拠点を狙っています。両者ともその為に拠点を急いで移動させてバレないようにしてますが、我々にはバレているので、また、抗争を長引かせる為にもどちらともに情報を流しますか?」
リューのやり方に慣れてきた管理人レンドが質問した。
「『闇組織』は、まだまだ元気でしょうから、流すのは三連合の方だけにしておきましょう。『闇組織』の方が多少不利なところまで追い込めば、ボスの影も見えてくるかもしれないですし」
「了解しました、ところで最近、このビルにも監視が付いておりましたので、カミーザ殿が排除したのですが、良かったでしょうか?」
管理人レンドは頷くと次の問題を口にした。
「排除とは言いがかりじゃぞ?ワシはこっちを監視していた連中をちと少し痛い目に合わせて脅しただけじゃ。だから今、こうして集まっておられるんじゃぞ?正当防衛じゃわい」
祖父カミーザは当然とばかりに胸を張った。
「ははは……、おじいちゃん。それ過剰防衛だから……。まあ、多分、僕の周辺の情報を集めてるのだと思うけど、みんな気を付けて下さい」
「リューの弱みを握るのが狙いだろうから、最初に狙われるのは私ね!」
リーンが謎の自信を見せて楽しそうに言った。
「ははは!だからリーンも気を付けてね。幸いここからランドマーク領は遠いから大丈夫だと思うけど、家族が狙われたら僕も嫌だから」
リューは、笑って答えると、気を引き締め直すのであった。




