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【8巻予約開始!】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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158話 闇の会合ですが何か?

 マイスタの街のとある屋敷。


 暗がりの一室に四人の『闇組織』の幹部が集まって円卓を囲んでいた。


「どうなっていやがる!俺達の王都の隠し拠点が次々と三連合に襲撃を受けているじゃないか!どうして場所がバレている?」


「わからん。この時の為に奴ら、日頃から我々の情報を収集していたのかもしれねぇなぁ」


「そんな馬鹿な!狙われている拠点はほとんど俺のところの『薬』関連の施設ばかりだぞ?組織の収入源として大きなところばかりやられているのは流石におかしいだろ!?」


「まあ、落ち着け。奴らに先制されたとはいえ、こちらが本気を出せば、奴らも誰に喧嘩を売ったか理解し、後悔する事になるさ」


 幹部の一人、マルコが、宥めた。


「貴様は黙っていろ。この街の管理を任されているとはいえ、我々幹部の中では最弱の男じゃないか!第一、どこかの地方貴族の息子にこの街の長を奪われる失態を犯しておいて、良く冷静でいられるな!官吏を動かして未然に防ぐこともできたはずだろう!」


「くっ!その話はすでに前回の会合で話しただろう!?この街をその貴族に下賜する選択をした官吏が国王の側近だったのだ。賄賂や脅しを下手にして国王の耳に入ったらいくら我ら『闇組織』とはいえ、大きなダメージを受けざるを得ない。それならば、新領主を篭絡した方が安全だと決まったではないか!」


 幹部中最弱の男と称されたマイスタの街長代理マルコは、蒸し返された事に反論した。


「はっ!その篭絡も、相手が子供過ぎてとん挫していると聞いたが?」


 幹部の一人は鼻を鳴らして馬鹿にすると、痛いところを指摘した。


「相手は十二歳の子供でまだ学校に通っている。だからこちらにも週に一度、休みの日にしか来ないから何とでもなる!それに今、部下をやって周囲を調査させている、その結果が出たら、弱みを握ってあとはどうとでもなるさ!それより、今は被害状況と反撃について会合が持たれているのではなかったのか?」


 マルコはこれ以上自分の事で嫌味を言われたくなかったので逸れた話を元に戻した。


「──ふん!……ボスはこちらからも持っている情報を駆使して相手の拠点を徹底して潰せと言っている。そして、多少の被害が出てもいいから、場合によっては、敵のグループのボスの一人を暗殺してでも勢いを挫けという事だ」


「あら、使い捨ての刺客を出せって事かい?アタシのところの若い衆は娼婦達の用心棒には向いてても暗殺に不向きさね」


 暗がりで初めて口を開いた女性と思われる幹部が、難色を示した。


「その手の汚れ仕事は、あんたの仕事だろう、ルッチ。日頃から王都のごろつきを束ねているんだ。使い捨ての一人や二人どうにでもなるだろう?」


 マルコがルッチを責める。


「馬鹿野郎!使い捨てレベルの奴が敵のボスの一人を簡単に暗殺できるとでも思ってるのか?失敗すれば次は警戒され、もっと難しくなるんだぞ。最弱は黙ってろ!それにルッチじゃない、ルッチさんだ」


 ルッチと呼ばれた男は唾を地面に吐くとマルコを威圧した。


「なんなら、うちの兵隊に情報入手を怠った責任を全部押し付けて、刺客の役をやらせようかい?冒険者崩れの腕利きも混ざっているし、マイスタの住民でもない外様だからこっちの懐も痛まねぇ」


「そうだ、てめぇのとこの情報はどうなってやがる?最近、商売の情報ばかりで裏の情報収集を怠ってたんじゃないか、ノストラ?」


 ルッチがもう一人の幹部、ノストラに矛先を変えた。


「おいおい。うちは基本、表と裏の商売の情報とそれを使った商いで稼ぐ事が担当で、奴らの監視は専門外なんだけどなぁ。それを承知でうちの兵隊どもに責任を強引に押し付けて動かそうしてるんだ、感謝して欲しいもんだ。荒事と組織の一番の稼ぎである『薬』の扱いは、全てあんたのところが担当だぜ、無茶は言わないで欲しいなぁ」


 ノストラは肩を竦めると、ルッチの追及を躱してやり返した。


「……くっ。──わかった。それじゃあ、お前のところの冒険者崩れを使って、3人のボスの誰かを始末しろ。俺は反撃に備えてごろつきどもを編成し直す、お前らも兵隊を出せ、ボスは早い解決をお望みだ」


 ルッチはそう言って立ち上がると、薄暗い部屋から一足先に出て行く。


「やれやれ。ルッチは頭も悪くないし腕っぷしもあるのに血の気が多過ぎていけねぇ。マルコ、あんたも絡まれて災難だったなぁ。……で、新しい街長は大丈夫なのかい?聞けば、あの『コーヒー』で名を売り始めてるランドマーク子爵ってところの三男らしいが?」


 ノストラが、長い付き合いのマルコに同情して話を振った。


「子供の割には頭が切れそうだが、所詮子供さ。ランドマーク子爵も、所詮、地方の新興貴族。ここまでのし上がるのに必ずどこかで手を汚してるはずだからな。いくらでも弱みは出てくるだろうから大丈夫さ。なんなら、ランドマークを潰してその『コーヒー』の商売の権利、そっちに丸々移譲させる様に取り計らおうか」


「お、それはありがたいねぇ。貴族達の間では評判になってきているから、気になっていたんだよ。その時はよろしく頼むよ」


 ノストラはマルコに感謝すると部屋を出て行く。


「今回はアタシのところには旨味が無い会合だったねぇ。仕方ない、今日は誰か強請って金を搾り取り、憂さ晴らしでもするさね」


 女幹部はそう言うと部屋を出て行く。


「……抗争の真っ只中だというのに、……これでいいのか?」


 マルコは、まとまりの無い幹部連中を見送って一人、愚痴を漏らすのであった。

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