148話 休みましたが何か?
学校で授業がある平日。
リューとリーンは学校を休んでいた。
「結局今日、来ないみたいだなリューとリーン」
ランスが二時限目の終了後の休憩時間に、ナジンとシズに言った。
「……病気かな?」
シズが心配して病気の可能性を心配した。
「どうだろう?二人とも同時に病気になる可能性は低いんじゃないかな?」
ナジンが病気の可能性を否定した。
「確かに。リューが病気の場合、リーンが看病で休む可能性があるけど、そもそもリューは病気に罹りそうにないからなぁ。本人も「病気に罹った事ない」って、言ってたぜ。リーンが病気ならありそうだけど、それだとリューはちゃんと学校に来そうだよな」
ランスがナジンに賛同する。
「……じゃあ、何かあったのかな?二人とも休む様な出来事が…」
シズが他の可能性について考えると、また心配した。
「……可能性としてはそうなるかな。二人が学校を休む理由って、よっぽどの事じゃないと無いと思うから。ランドマークビルで何かあったのかもしれない。放課後、寄ってみる?」
ナジンがシズに聞く。
「……うん。それに噂の『竹トンボ』も気になるし行ってみたい」
最早、二人の心配より、別の事に興味を引かれているシズであったが、ナジンに指摘されると、「ついでだから……!」と、慌てて否定した。
その頃、リューとリーンは、父ファーザと一緒に馬車に乗り込み、とある場所に向かっていた。
「リーンは学校に行っても良かったんだぞ?」
ファーザが改めて車内でリーンに確認した。
「私はリューの従者だもの。リューも呼ばれているなら、私も同行するわ。テストも終わってるし一日くらい大丈夫よ」
リーンはそう答えると馬車の外を指さした。
「王城が見えて来たわよ」
リーンの言葉にリューは窓に齧りついて覗き、近づいてくる王城を眺める。
「やっぱり、立派だねお父さん」
リューは初めて近くで見る王城に感動しながら、目に焼き付けようとしていた。
それは、良いところはマネしてランドマーク領の城館に取り入れる気満々だったからだ。
「リュー、そんなに齧りついて見てると顔に痣が付くから止めなさい。これから国王陛下に会うのだから」
父ファーザは苦笑いするとリューを窘める。
「そうでした」
リューは素直に反省すると窓から顔を引っ込めて席に付く。
リーンも元に戻ると身だしなみを整える。
今日は父ファーザの昇爵の儀で王宮に呼ばれていた。
リューはそのお供として連れて来る様に言われている。
ならば私もとリーンも付いてきた。
王城の城門を馬車でそのまま通過すると、先程までの人の生活の喧騒は嘘の様に無くなり静かになる。
一行は馬車でその厳かで静かな道を通り、王城の奥、王宮がある入り口の階段前まで行き、そこで降ろされた。
「……凄い豪華な階段だね」
リューはどちらかというとその荘厳なる雰囲気に呑まれるというよりは、装飾などに目が行き、何かしら活かせないかという気持ちでこの階段を一歩一歩上がっていた。
「……リュー、お願いだからキョロキョロするな。まあ、私も初めて来た時は圧倒されて落ち着かなかったけどな」
先導する使者に付いて行きながら小声でリューに声をかけた。
「……ごめんなさい」
リューは小声で謝ると階段を登り切り、使者に案内されるまま、大きな扉を通過して、王宮内に入った。
複雑な道順で王宮内を進み、豪華な部屋に通される。
「ここで暫らくお待ち下さい。許可がありましたら、別の者がご案内致します」
使者は、そう言うと別の者に仕事を引き継ぎ退室する。
ものの十分ほど一行は待っていると、騎士がノックして室内に入って来た。
ファーザに向かって付いてくる様に伝えると三人に準備を促す。
「…いよいよだ。私は三度目だから良いが、二人ともくれぐれも粗相がない様にな」
ファーザはリューとリーンに注意して騎士に案内されて大きな扉の前まで行き、待機する。
「ランドマーク男爵とそのご子息、従者の計三名が参りました!」
大きな扉の前にいる呼び出し係が扉の向こうの者に伝わる様に大きな声で言うと、扉が重々しい音を立てて開いた。
その向こうには高い天井に色彩豊かで大きなステンドグラス、両側に威圧する様な大きな騎士像、そして、玉座とそこに座る人物、そこまで伸びる赤い絨毯が視界に入ってきた。
ただの一男爵の昇爵の儀に使われる場所ではないのはそれらを見てリューは悟った。
これは世間で言うところの玉座の間では?
リューは内心、かなり驚いていた。
ファーザも前回とは違う大規模な部屋に内心驚いていたが、おくびにも出さず、堂々としている。
ファーザとリュー、リーンは内心、この雰囲気に圧倒されながらも導かれるまま、玉座の間に通されるのであった。




