136話 処分ですが何か?
王立学園はやっと落ち着きを取り戻しつつあった。
新しい教師陣、職員が揃い、授業も事務仕事もスムーズに動き出していた。
そんな中、イバル・エラインダーの無期限停学と、ライバ・トーリッターの退学処分が発表された。
学院側はイバル・エラインダーより、そのイバルを背後で操り、兵器使用を促し、自らも無差別に使用したライバ・トーリッター側の責任を重くみた。
当初、兵器使用と傷害未遂で、犯罪者として警備隊に引き渡す寸前であったが、兵器そのものが研究中の極秘のものだったので、表沙汰に出来ないという国側の判断があった。
それに結果論とはいえ、被害者が出ていない事も大きい。
だが、もちろん行為自体はあった事であり、被害者生徒の機転が無ければ死傷者が出ていた事も考えられたので厳重な処罰は行われる事になったのだった。
これに伴い、ライバ・トーリッターは王都からも追放かと思われたが、意外な事に息子を操られ、家名も穢される事になったエラインダー公爵が自ら仲裁に入る事でその事態を回避、王都の他の学校にライバ・トーリッターを編入させる手続きも行ったらしい。
理由はわからないが、家名を穢された事を怒っていないというアピールだろうか?
ライバ・トーリッターは、このエラインダー公爵のはからいに、己の行為をとても反省したのか、編入先の学校では心を入れ替えて真面目に学校生活を送る事になる。
イバル・エラインダーは、上記の通り、無期限停学処分という事でその動向を知る事は殆ど出来なかった。
噂では自宅で大人しく反省しているらしいがそれも定かではない。
リューにとって今回の事があって、良い意味でランドマークの名が学園中に知れ渡った形だが、当のエラインダー公爵家からは、実のところ謝罪らしいものは全く無いのが不気味だった。
ライバ・トーリッターの件では動いているので、形ばかりでもリューに謝罪の手紙などがあるかもと思っていたのだが、一切なく学園側に謝罪があったのみであった。
リュー側としては別に謝罪を要求するわけでもないので別に良いのだが、あまりにスルーされ過ぎていて、実のところ何かしらの反感を買っているのではないかという、その一点が心配だったのだ。
相手は、エラインダー公爵家だ、その当主の反感を買ったとしたらランドマーク家は本当に吹き飛びかねない。
心配が尽きないリューであったが、父ファーザは「なるようにしかならないだろう」と、達観していたのでリューもそれに倣う事にするのだった。
「隣のイバル特別クラス。今は、イバルの取り巻きだったマキダール侯爵の子息がリーダー格になってるらしいぜ」
ランスが、情報をどこから入手したのかリュー達に話した。
「ははは……。日が浅いのに、もう、そんな事になってるんだ……」
リューは上級貴族の逞しさに内心呆れるのであった。
「でも、イバル・エラインダーが戻ってきたらどうするんだろうね?無期限とはいえ停学だから解けたら戻ってくるんでしょ?」
「そうなんだけどな。変な噂があってさ……」
ランスが、声のトーンを落とした。
「噂?」
ナジンとシズも興味を引かれたのかランスの側に近づいてきた。
「あくまで噂だぜ?……何でもイバルがエラインダー公爵家の世継から廃嫡されたらしい……」
「「「「……廃嫡!?」」」」
リュー達は、とんでもないワードに驚くしかなかった。
「そう。だから取り巻きのマキダール侯爵の息子がそれを知って、代わりにクラスのトップに立ったらしい。あ、でも、マジでただの噂だぜ。当のエラインダー公爵側からはそんな発表無いからな」
ランスが、念を押した。
「……公式発表が無いならそれは微妙だよね。エラインダー公爵家については、自宅待機の間に少し調べたけど、イバル君以外は、下は妹達が三人だから廃嫡される可能性は無いと思うよ」
リューが可能性が低い噂である事を指摘した。
「……いや。エラインダー公爵家レベルの家なら妾の一人や二人いてもおかしくない。その妾に子供を産ませている可能性はあるから、可能性は「0」ではないよ」
ナジンがリューの指摘を修正した。
「…そうか妾か。うちはお父さんがお母さん一筋だから考えた事なかったよ。そうなるとその噂が本当だったらイバル君どうなるんだろう……」
リューは他人事ながら、家族から見捨てられるかもしれないイバルに同情する気分になった。
「学校を自主退学するかもな。ただでさえ問題起こして廃嫡されたなら、この学校に行く理由が無くなるわけだし、行きづらいよ実際」
ランスがもしもの話をした。
「リューもあんな奴の事心配しなくていいのよ。それよりも今後の学園生活の過ごし方を考えないと。私達例年の生徒より、授業が遅れているのよ?」
リーンが急に現実的な話をしてきた。
確かにその通りだ。
噂の心配をしてる場合ではない事をリュー達はリーンによって気づかされるのであった。




