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13話 シマが増えたんですが何か?

 リューの行くところに、シーマあり。

 いつの間にか領内の領民達からはそう認識されるようになった。

 シーマが住んでいた村ではヤンチャが過ぎる子供として有名だったのでシーマの挙動は領民が意識するところであった。


 貸し付けの取り立ての時はスーゴもいるのだが、基本、リューとシーマはワンセットの扱いになりつつあった。


「シーマ君、君、領民に迷惑をかけてたんだね……」


「俺ですか?ちょっと子供の間で喧嘩したりしてましたけど」


「『体術』持ちなんだから、堅気とステゴロしちゃ駄目だよ」


「カタギとステゴロっすか?」


「あ、一般人と素手の喧嘩の事ね」


「あ、それなら俺、心入れ替えたので、もうしないっす!」


「不良から足を洗ったならいいけどね」


「足を洗う?」


「あ、辞めることね」


「リュー坊ちゃんはたまに不思議な言葉使いますよね」


 シーマが疑問を口にした。


「気にしないで、ただの業界用語だから」


「ギョウカイヨウゴ?」


「会話を聞かれても、身内しかわからない単語使ってたら内容がバレないでしょ」


「なるほど。流石っす!」


 いや、本当は単に前世のクセが抜けないだけなんだよ?


 とは言えないので、シーマの解釈に任せるリューであった。




 領内の街と二つの村のうちの1つで、ダイチ村というところがある。

 執事のセバスチャンとシーマの家族が住んでいるところだ。

 セバスチャンとシーマは、ランドマーク家に住み込みなのでシーマはひと月は家に帰ってないはずだ。


 シーマに「家に行ってみる?」と、聞いたがあっさり断られた。

 一人前になるまでは我慢するらしい。


「うん、でも、凄く近いけどね、うちからシーマ君の家まで……」


 そんなやり取りの中、そのダイチ村にシーマと一緒に、借金の利息の回収に来ていた。


「では、今月分の利息、確かに頂きました」


 リューが村人からお金を受け取っていると村長が現れた。


「リュー坊ちゃんこの後、お話よろしいでしょうか?」


「?」



 導かれるまま、リューとシーマは村長宅に案内された。


「早速ですが、ニダイの村の事です。領主様にもお伺いするつもりだったのですが、リュー坊ちゃんが関わってるとお聞きしまして」


「?」


 リューとシーマは何事か思い至らず、視線を交わした。


「うちの村人が聞いた話では、ランドマーク家の肝いりで一部の農家で新たな作物を育てているとか、資金も出されて支援しておられるとか。我がダイチの村にはそんなお話が無く、村人の中には不満を漏らす者もおります」


 なるほど、そういうことか……!


 コヒン豆の栽培の事だろう、確かに外から見たら贔屓してる様に見えたのかもしれない。


「えっと。誤解をさせたのなら、申し訳ないけど……。元々、借金が払えない一部の農民に、仕事を与えて返済する当てのひとつにして貰う為に、ボクがお願いした事なんだ」


「返済……、ですか?」


「そう。それに軌道に乗るかまだわからない実験的な部分もあるから、その人達にお願いしてるんだよ。一応、収穫に成功したら、売れる見込みはあるんだけど、まだ手探りだからね」


「見込みはあるんですね?」


 村長がその部分に食いついた。


「そうだね、でも、一から育てて収穫までは数年かかるから、あくまで実験だよ」


 このままだと、村長も挙手しかねないと思ったリューは、念を押す。


「うちの村の畑でも作らせて下さい!」


 前のめりになった村長が、旨そうな話と判断して即断してきた。


「いやいや、今、ランドマーク家にはこれ以上のお金出す余裕ないから待って」


「私の畑の一部は、今、空いてるので大丈夫です!」


「そうじゃなくて、支援するお金がもうないの!」


「いえ、とりあえず、育てさせて下さい!遊ばせている土地で作るので領主様にはご迷惑はお掛けしませんから!」


 ここまで言われると断る理由もない。

 農作物の収穫量は下がらないのだからいいだろう、あとは、父ファーザに話してみないとわからないが……。


「……わかりました。それじゃ、父に話してみます」


「ありがとうございます!」


 どちらにせよ、結果が出たらシマ(生産農家)を増やすつもりでいたので説得する手間が省けて良かったのかもしれないと思うリューであった。

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