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【8巻予約開始!】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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112話 放課後ですが何か?

 お昼休みにリューが『チョコ』の新作を友人達にお披露目したその日の放課後。


 ナジンに呼び止められていた。

 後ろにはシズがいる。

 いや、この場合、シズがいてその前にナジンがいるというのが正しいのだろうか?


「シズが、良かったら一緒に帰らないかと言っている」


 ナジンがシズを代弁して言った。

 背後でシズが頷いている。


 もう、自分達に慣れたと思っていたが、誘うのはまだ恥ずかしい様だ。


「え、でも、二人は馬車のお迎えがあるんじゃないの?僕とリーンは徒歩で帰るつもりでいるけど」


 送り迎えは、馬車の宣伝になる為、本当はランドマーク製の試作馬車でしたいところだったが、色々な事情で控えていた。


「……うちの馬車で送るよ……」


 シズがナジンの横からか細い声で言う。


「ありがとう!それじゃ、リーン。お言葉に甘えようか?」


 リューはシズの好意に甘える事にしてお礼を言うと、乗せて貰う事にした。

 リュー達が徒歩と言っても、乗合馬車で帰るので馬車に乗る事に変わりはないのだ。


 シズの家の馬車が到着するまで、四人はしばしの間、玄関付近で話をしながら待つ事にした。

 玄関には馬車の行列が出来ていて、次々に貴族の子息達が自家の馬車に乗り込んで帰っていく。

 一部の者は学園の敷地を出たすぐ側に停留所があり、そこで乗合馬車に乗って王都の各所の家に近いところで下ろして貰うのが一般的だった。

 普段ならリューとリーンもこの帰り方だ。


「シズから聞いたが、ランドマークとは馬車も作っていると聞いたが、それに乗っては来ないのか?」


 ナジンが、不思議に思ったのだろう、リューに率直に聞いて来た。


「それなんだけどね?実は最近王家が乗っている馬車もうちの製品なんだけど……、うちが試作品とはいえ、その王家や、有力貴族より良い馬車に乗って送り迎えされてたらどう思われるかなぁって。ほら僕、地方の下級貴族の三男坊だし」


「……なるほど。うちのクラスの第三王女殿下は何を考えてるかわからないし、隣のクラスのエラインダー公爵の息子はその辺り、嫉妬深そうな雰囲気があるからな……。それで慎重になってるわけか」


「そういう事。ホントは堂々と試作品を宣伝して評判を聞きたいところなんだけどね。王女殿下の性格も今のところ同じクラスだけど全然わからないし、無茶言われて寄越せと言われたらまだ試作だから困るし」


「もう!リューは心配し過ぎなのよ。ランドマーク家が雇っている御者さんも暇そうにしてたわよ?気にせずに乗って上げればいいのに。まあ、販売してる『乗用馬車一号』は今、在庫不足だから敢えて乗らないのはわかるけど」


 リーンが、リューの慎重さに呆れる素振りをみせた。

 と言っても、そんなに呆れているようには見えないが。


 そこへ、ランスがやって来た。


「お、みんな揃ってるじゃん。俺だけのけ者は勘弁だぜ。わはは!」


 と冗談を言ったランスだったが、シズの馬車より先にボジーン家の馬車が学園に到着していたのですぐに乗って帰っていった。


「のけ者と言いつつ、帰るの一番先じゃん!」


 とツッコミを入れつつ、リューはランスの性格がわかりやすくて好きだった。

 貴族としては多分珍しいタイプだろう。


「あ、シズの家の馬車が来たから乗ろう」


 ナジンがリューとリーンに知らせる。


 見るとその四頭引きの馬車は高級木材を使用していると思われる重厚な作りと繊細な彫刻がされたものだった。


「……この渋さはちょっと参考にしたいなぁ。あ、でも、重量が増しちゃうかな……」


 リューはシズの家の馬車をいろんな角度から見るとぶつぶつとつぶやく。


「ちょっと、リュー。みんな乗ったから早くして頂戴」


 リーンがリューを注意した。


「あ、ごめん!」


 リューは慌てると御者さんに頭を下げて乗り込むのだった。


 馬車が走りだすと、やはり乗り心地はあまり良くなかった。

 石を踏んだりすると衝撃が直接強くお尻に伝わってくる。

 それを下に引いた羽毛のクッションで誤魔化している状態だ。


「…外装が良いから、改造するという手もあるかな……」


 リューはまた、考え出した。


「……この馬車は先々代の頃に名工によって作られたものなの。でも、乗り心地はあんまり良くない……」


 シズが、感想を漏らした。


 確かに作りは目を見張るものがある、残念なのは土台部分だから、これを改造出来たら良いものになりそうだ。


 特注でお金はかなりかかりそうだが……。


 それも含めて、商売にならないか職人と相談してみようと思うリューであった。

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