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103話 開店当日ですが何か?

 ランドマークビル、オープン当日の朝。


 リューが5階から下を覗くと、その表には人だかりができていた。


 リーンもリューの横から顔を出して下を覗く。


「あれって、昨日来た人達よね。他にも貴族の馬車がいくつも止まってるけど、どこから聞いて来たのかしら、凄いわね」


「だね……。あ、お父さん達を迎えに行ってくるね」


 リューはそう言うと『次元回廊』で父ファーザ達をランドマーク領に迎えに消えた。


 あちらで、父ファーザはリューの部屋に待機していたのだろう、すぐにリューはファーザを連れて戻ってきた。


 すぐにリューは続けて執事のセバスチャン、隊長スーゴと数名の領兵を連れて戻ってきた。


「どうしたの物々しいけど?」


 リーンが先に着いたファーザに聞いた。


「昨日、人が詰めかけたと聞いたから、トラブルに備えてスーゴと領兵を呼んでおいたんだ」


「その判断は正しかったわね。ファーザ君、外見てみなさいよ。沢山の人が押し寄せてるわよ」


 リーンの言葉にファーザは5階から下を見下ろす。


「……これは喜ばしい事なのだろうが、……うん?集まってるのは商人ぽい人が多そうだな……。あれは貴族かな……、いや、そんなわけないか。……それにしてもこの通りに並んでる馬車は全部うちが目的なのか?流石に違うか……。ははは」


 ファーザは微妙に現実逃避しながら、表に溢れる人の数に圧倒されていた。


 そんな父ファーザにリューが下の階に降りて各店舗に待機してオープンに備えている従業員に声を掛けてくれる様に促した。


「おお、そうだったな」


 ファーザは急いで下の階に降りる。

 セバスチャンやスーゴ、領兵も後に続く。


 リューはリーンと屋上に向かった。

 二人は大看板に掛けられた垂れ幕を合図と共に取る役目だ。


 下を眺めながら待機していると、ファーザが下に現れ、人混みはざわざわし始めた。


 領兵がファーザに押し寄せようとする商人を止めている。


「お待たせしました!それではみなさん、ランドマークビルのオープンです!」


 ファーザは前置きも無く、屋上で見ているリューとリーンに合図を送ってきた。


 えー!もっと、格好いいセリフ言えばいいのに!


 リューはファーザの飾り気どころか言葉足らずのオープン宣言に驚いたが、急いでリーンに目配せして垂れ幕を外す。


 おお!


 垂れ幕が外され、ランドマーク家の紋章とランドマークの大きな字に、集まった人々から歓声が上がると拍手が起きた。


 商人が中心なのはこの後父ファーザとの交渉をうまく運ぶ為のゴマすりであろうが、他の者はそれを知らないのでつられて拍手をする。


 結果的に前振り無しで良かったのかもしれない。


 余計な事を言って待たせてしまっては場が白けた可能性もある。


 父ファーザは、その事を感じたのかもしれない。


 待っていた人々は、商人達が領兵を挟んでファーザに詰め寄るのと、店舗に入って行くお客との二つの人の流れが出来ていった。


 リューは垂れ幕をマジック収納で回収すると、急いでリーンと共に階下に降りて行った。


 二階は『コーヒー』店、『チョコ』店に貴族の使いと思われる人々が大挙していた。

 喫茶店「ランドマーク」には貴族が早速、店員を呼んでメニューの説明を聞いている。


 一階に降りると、早速、馬車の購入契約をするお客がいる。


 どうやら、名のある貴族の使いの様だ。

 大金をポンと出して、一括で購入しようとしている。


 店員が、お客の希望にあったカスタム化が追加料金で可能だと説明すると、使いの者はそれを想定していなかったのだろう、その場で考え込んだ。


 店員に、具体的な説明を求めている。


「例えば、車内の内装の変更や、馬車の扉に紋章を入れる事も出来ます。パンフレットの用意がありますので、持ち帰ってご主人と相談する事をお勧めしますが?」


「いや、それだと主に怒られる。今か今かと馬車が届くのを待っておられるからな。内装は標準というので結構、扉には金字で主家の紋章を入れてくれ。紋章はこれだ。どのくらい時間はかかる?」


「紋章だけなら、職人が待機してますので、三十分あれば可能です」


「ならばそれで頼む!」


「それでは、価格はこの様になりますがよろしいでしょうか?」


「よし、これで頼む」


 大金をポンと出すと、早くも王都店における『乗用馬車1号』が一台、販売契約が結ばれたのだった。


 ファーザは表の商人達の相手をセバスチャンに任せるとリューの元にやってきた。


「どうだ、順調そうか?」


 ファーザがリューの横に来て、気になるのか1階の馬車の販売店を覗き込む。


「早速、一台売れたよ」


 リューが笑顔で答える。


「そうか!では、二階も確認してこよう!」


 ファーザは嬉しそうに言うと、ウキウキしながら階段を上がって行くのだった。

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