100話 良い事尽くめですが何か?
ランドマークビルオープンは着々と進んでいた。
リューはその為に店員の指導をしていた。
「──細かい指示は以上です。ケツ持ちはランドマーク家がきっちりやりますので、安心して太客(金払いのいい客)から利益は引っ張って来て下さい。かといってアコギ(強欲)な真似はしない様に。その場合はちゃんと落とし前(責任・後始末)をつけさせますので、気を付けて下さい。お客様は大事ですが、中にはカタギ(一般人)でないごろつき(ならず者)もいると思いますのでそれは責任者にすぐ報告するなど、報告、連絡、相談のホウレンソウを徹底して下さい。最後に、一人一人がランドマークの看板を背負ってる事を自覚して、態度の大きいお客にいも引く(怖気づく)事が無い様、誇りを持って接客して下さい!」
「「「はい!」」」
力が入ったリューが思わず半分以上、極道用語で話したのだが、従業員はみんな、ランドマーク領から来た領民だ。
なんとなくリューが言ってる事がわかって返事をしているのだから、ランドマーク領の学校で何を教えているのかと思うところだが、当のリューは熱が入ってるので気づいていなかった。
「リュー、いつものゴクドー用語が出てるわよ?伝わってはいるようだけど……」
リーンが呆れながらリューに指摘する。
その指摘でリューは冷静に戻ると改めて言い直すのであった。
もうすぐ卒業を前に、兄のタウロがやっと彼女であるエリス嬢に婚約を申し出たらしい。
ちゃんと兄弟とリーンとでアドバイスした通り、景色のいい場所に誘い、雰囲気作りをして婚約の申し出をし、二つ返事でOKして貰えたそうだ。
すぐ結婚という話ではないが、これはランドマーク男爵家とエリス嬢のベイブリッジ伯爵家にとって一大イベントだ。
卒業したら、タウロはベイブリッジ伯爵家に挨拶に行って正式に婚約を取り付ける事になる。
これで、ベイブリッジ伯爵家との絆はより一層強くなり、その派閥の長であるスゴエラ侯爵の足元も今まで以上に盤石になるというものだ。
王都進出といい、リューとリーンの王立学園合格といい、ランドマーク家にとって、良い事尽くめだ。
父ファーザと母セシルはとても喜んでいた。
これで、早くもランドマーク家の次代の当主であるタウロの未来も約束されたようなものだ。
もしもの時には優秀な次男ジーロも控えている。
三男リューはランドマーク家一番の神童でしっかりしているから、心配していない。末っ子ハンナもスキルにも恵まれ真っ直ぐにすくすくと育っている。
心配事は、ほぼほぼ無いと言っても良い状況だ。
もちろん、領地経営で何が起きるかわからないが、親のカミーザもケイもまだまだ元気だし、自分達夫婦も健在なのでこれからも地道にやっていけばいい。
「タウロの卒業式が楽しみだな」
ファーザは、もうすぐ起きるイベントに笑顔になった。
「そうね。リューとリーンちゃんの入学式もリューのおかげで参加できそうだし、楽しみが多いわね。うふふ」
母セシルも、楽しみに笑い声が漏れた。
「心配なのは、ランドマークビルくらいか」
「あら。レンドが、管理してくれるのだから、大丈夫じゃない?」
「そうなんだが、王都進出は、何が起きるかわからないと思ってな」
「リューもいるのだから、大丈夫よ。それより、あなた。領内の人口が増えてきてるのだから、早めに対処しないと!リューは基本あっちにいるのだから、あなたがしっかりしないと駄目なのよ?」
珍しく領内の運営には口を出さないセシルが、指摘した。
そう、ランドマーク領内は今や、王国南東部では最も注目される領地になっている。
今まで以上に人の流れが大きくランドマーク領に向いていて移住者が後を絶たなかった。
何の一攫千金を狙ってるのかランドマーク領に行けば金持ちになるチャンスがあると思っている輩もいたので、そういう勘違い者が実際この地に訪れて、トラブルを起こす事例もあった。
人が増えれば、混乱も生まれる。
盗賊対策も含め、しっかり対処できる体制を領兵隊長のスーゴとも話し合っていかなくてはならないと改めて思うファーザであった。
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