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10話 爆発しますが何か?

 製麺所は早くも稼働した。


 契約を取った各店舗から多くの注文が殺到したからだ。

 製麺所内はその忙しさに粉が四六時中舞っている状況だ。


「みなさん、お疲れ様です。ひとつ注意しておきますが、粉じん爆発にはお気をつけ下さい!」


 従業員の手が止まる、不穏な単語が出てきたからだ。


「「「爆発?」」」


 口を揃える従業員達。


「はい、粉じん爆発です。この粉が充満した状況下で火を使うと引火して爆発します。なので、火気厳禁でお願いします。火を使う場合は建物外で使用して下さい」


「そんなに危険なの?」


「はい、爆発したらこの小屋は跡形も無く吹き飛ぶと思います」


 笑顔で答えるリューに、従業員は震撼し、全員が火気厳禁を徹底する事になった。




 パスタは女将が新メニューとしてメインに推したので、すぐにお客さんに食べられるようになった。


 この世界の主食はパンなのだが、庶民のパンの代名詞は黒パンである。

 この黒パンはとても固く、スープに浸して食べないと固すぎて食べれた物ではない。

 なので、柔らかい食感のパスタが歓迎された。もちもち食感で、腹に溜まって満腹感があるのも相まって、パスタが黒パンに取って代わる勢いだ。

 その為、ランドマーク領での黒パンは、携帯食専用に押しやられる事になったのである。


 試しにリューは、小料理屋の女将に、うどんとお好み焼きもどきも勧めてみた。

 うどんに関しては底が深いお椀と箸を提供して強めに推す念の入れようである。

 お好み焼きもどきはソースを作るのに苦心したが出来ず、仕方なくパスタのトメートソースをお好み焼きにかけ、チーズを乗せる暴挙に出たら、人気が出たのでお好み焼きもどきという名に収まったのだ、ピザ?そんな子は知りません。


 今、人気はトメートソースのパスタ、それに並ぶ勢いで、お好み焼きもどき、その下にうどんという順番だった。


「……うどん。お前の良さはボクが知ってるからね……!」


 そういうと、リューは人知れず泣いたとか泣かなかったとか。


 以後、リューが街で食事をする時は箸を使ってうどんばかりを食べていて、その姿が領民によく目撃される事になる。


「領主様のとこの坊ちゃんが器用に使ってるあの木の棒はなんだい?」


 領民が疑問を口にする。

 食事と言えばナイフにフォーク、スプーンの三つだ。

 木の棒は見た事も聞いた事も無いものだった。


「あれかい、リューの坊ちゃんが考えた『はし』って言うんだよ。見ときな、……こう持って……こうで、こう挟む」


 女将が実践してみせる。


「女将も使えるのかい。器用なもんだね」


「これが慣れると便利なんだよ。片手で小さい物も掴めるしね」


 お客のスープの具を掴んでつまみ食いしてみせた。


「そうなのかい?って……本当だ。こりゃいい!ちょっと持ち方を教えてくれよ?」


 こうして少しずつ箸の文化も広がっていくのだが、それはまだ先のお話であった。



 粉もの料理は浸透しそうな予感だった。

 ランドマーク家では、すでに浸透し、ランドマーク家自慢の名物料理となっていた。

 うどんはお椀を持って箸で食べる事が家族に中々浸透しなかったのだが……。


 それを悲しんでるリューを見て、長男タウロが実践してみせ、ジーロもそれを真似し、末娘ハンナが一生懸命練習する姿を見た事で親達もやる事になった。


「食器に口を付ける事はマナー的に良くないんだが……、だが慣れると食べやすいな……。リューが考えてくれたのだし、うちで食べる分には問題ないか」


 父ファーザは箸の有用性に気づかされたようだ。


「そうね、便利というのは大事な事よね。子供の発想には驚かされるわ」


 母セシルも感心すると箸で器用にうどんを食べてみせた。


 二人とも、それは、前世では数千年の歴史文化があるんですよ。


 とは言えないリューだったが、家族が受け入れてくれたのはとても嬉しい事だった。


 リューは、コヒン豆の生産販売、麺の売り上げ、貸付金の回収など来年が楽しみであった。


「来年のみかじめ料、楽しみだなぁ。あ、違う、税収ね」


 未だに極道用語が抜けないリューであった。

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