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1話 お仕事ですが何か?

 俺の名は、横浜竜星32歳、表向きの職業はプログラマー、本当は…極道だ。

 名前がどこぞの一流芸能人と一字違いという事は触れて欲しくない。


 18の頃、この世界、人には言えない裏稼業である極道になる道を選んだ。

 それから14年、今は主に、借金の取り立てや、逃亡する債務者の追跡、後始末をやっている。


 通常では、借主である債務者が飛ぶと、保証人に支払わせるのが一般的な回収方法だが、うちは違う。

 只の闇金と違い、借りる奴は裏稼業の人間だ、なので保証人がいない事もよくある事だった。

 極道に金を借りようってやつらだ、一癖も二癖もある連中が多い。

 黙って借金を払っている間はいいが、こういう奴らは突然計画を練って逃亡を謀る。

 海外に飛ぶ奴もいれば、国内を転々として逃げる奴、地方の都市にじっと身を隠す奴、囲っていた女の所に身を隠すやつなど色々いる。

 俺はそいつらの足跡を追って捕まえ借金を回収するのだ。

 先日も海外に飛ぼうとしたので、ギリギリで捕まえた殺し屋稼業の男の財産を差し押さえ、遠洋漁船に乗せたばかりだった。


 そして今回、組長直々の命令で、ある男の借金取り立てを任せられていた。

 その相手がかたぎの人間だった。

 普段なら絶対受けない仕事だが、組長直々とあって受けざるをえなかった。

 そのかたぎの人間は、すぐにみつけて捕まえる事はできたのだが、尋問するとお金になる研究をしているというのだが、それがテンセイマホウジンとかいうものらしい。

 よくわからない眉唾物の話だが、その男は名門の帝国大OBで、大学の黒魔術サークルのくまのぬいぐるみの中に、その研究成果が入ったUSBメモリーを隠しているという。

 これを聞いて99%嘘だと思ったが、1%でもお金の臭いがするなら確認しないと気が済まない性分だ。

 回収は1円単位でもキッチリする。


 早速夜を待ち、帝国大学に忍び込む事にした。



 ──帝国大学黒魔術サークル部室


 数日前の深夜、ここで一人の学生が変死していたらしい、進入禁止のテープがそこかしこに貼ってある。

 現場保存が一応されているようで、室内のものは回収されていなかった。

 部屋の中央に人の形にテープが張ってあった。

 そして、その脇にくまのぬいぐるみが落ちていた。

 男が言っていたのはこのぬいぐるみだろう。

 確認すると確かにUSBメモリーが入っていた。

 中身を確認する為に、室内にあったPCを稼働させUSBメモリーを差し込む。


 フォルダーが表示され、そこをクリックするといかにも魔法陣という図形が出てきた。

 どうやら本当にテンセイマホウジンとやらを研究していた様だ。


「……本当に価値が有るかどうか一応確認しとくか」


 室内の床に見よう見まねで魔法陣を書いていく。


 手順はこれで良い筈だ、次は呪文を唱えるらしい。

 それも、書いてある。


 ごにょごにょ


 途中噛みながら呪文を唱えた。


 ……


「……何も起きないな。……ちっ!子供じみたガセを信じかけちまった」


 一応、USBメモリーは、持って帰る為にPCから外すとポケットに入れる。


「……となるとあの男からどう回収するか……、遠洋漁船にあいつも乗せて、借金は回収するしかないか」


 つぶやくと、書いた魔法陣の上を歩いて通過しようとした瞬間だった。


 魔法陣が発光した!


「な!本当に作動しただと!?」


 驚く横浜竜星。


 次の瞬間、横浜竜星の意識は遠のき、その場に倒れるのであった。




 とある定食屋の備え付けのTVから、ニュースが流れてくる。


「──数日前に続き、帝国大学のあるサークルの部室内で変死体が発見されました。立て続けに起きたこの変死の原因は全く分かっていません。亡くなっていた男性が学校関係者ではない事から、校内への侵入動機を含め、警察は事件、事故の両面で捜査を始めました。身元についてはまだ発表されていません」


「これって、数日前も学生さんが亡くなってたやつだよな?」


 TVを見ていた作業着姿の男が食事をしながら同僚に確認する。


「あー。思い出した、佐藤太郎って今時そんな名前付けるか、っていう平凡な名前だったから、ここで、味噌汁を吹いたな」


「そうそう、そうだった」


 こうして少し、人々の間で話題にはなったが、この事件は変死扱いでのちに処理され、迷宮入りすることになる。

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[一言] 「……本当に価値が有るかどうか一応確認しとくか」  室内の床に見よう見まねで魔法陣を書いていく。 作動したら、転生するのだから死ぬと言うことを理解していなかったということだね。テンセイがど…
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