2話
アスリカ王国の王都はひどくさびれていた。
「これが王都かよ……」
王都の入り口に門番が立っていた。
「あのー、すみません」
「なんだ。旅人か?」
「はい。王都に入りたいんですけど」
「ここにきてもいいことなんかないぞ、この国ももうおしまいだからな」
「魔王軍が?」
「ああそうだ。魔王軍と我が国が戦争になってから負け続けでな、もう兵士も国民もギリギリなんだ」
「そうだったんですか」
「入りたいなら入るといい。だが何ももてなしてはやれんがな」
そういうと門番は見張りの位置へ戻っていった。愛梨は王都に入ることにした。
王都を進むと城があった。
「誰だお前は」
「城の門番が話しかけてきた」
「旅人のものですが、王様と話がしてみたくて。お会いすることは出来ませんか?」
「いきなり何を言うんだ。できるわけがなかろう」
「ですよね」
愛梨はあきらめて帰ろうとしたが、
「まあいいじゃないですか」
「お、王子!」
門番は膝をついた。
「私はアスリカ王国の王子のフィリップです。あなたがどのようなお話があるのか存じませんが、中々面白いお方だ。私の客人ということで中に連れてゆきましょう」
「いいのですか王子!?」
「どうせこの国も長くありませんし、この旅人が国の救世主になるなんて奇跡、願いたくもなりますよ」
「私は右京愛梨です。フィリップ様、ありがとうございます」
「いえいえ、どうぞこちらへ」
愛梨は城の内部へ入っていった。
「こちらが王の間です。くれぐれも失礼のないように」
愛梨とフィリップは王の居る部屋に入っていった。
「父上。 私の客人を連れてまいりました」
「右京愛梨です」
「よくぞ参った。私が王だ。しかしそなたをもてなしてやりたいが情勢が情勢でな。申し訳ない」
「いえいえお気になさらず。私はその情勢について話をしにまいりました」
「どういうことだ」
「いまの戦況を教えていただきたく」
「愛梨さん!! 無礼ですよ!」
「よいよい。戦況が聞きたいのだな。だがそれを聞いてどうする?」
「私に何ができるか考えます」
「ふはははははははは!! 面白い!!! ならばそなたに何ができるか教えてもらおうか!!」
愛梨は今までの戦況を聞いた。
魔王軍との戦争が始まってから、幾度も攻勢を仕掛けるもことごとく敗戦。戦線を維持できなくなった軍は敗走を繰り返し、アスリカ王国の城壁前まで攻められるようになっていた。
「相当追い込まれてますね。王様、動ける兵士は何人いますか?」
「せいぜい1000が限度よ。もうおしまいじゃ。それで、そなたは何ができる?」
愛梨は自信を込めて言った。
「築城をしましょう」
「なに?」
「城の周りに仕掛けを仕込んで、籠城戦をするしかありません。物品は私が用意します。後は兵士のみなさんに協力してもらって、仕込みます」
「そんなことをしてもじり貧だぞ」
「私も頼りたくはなかったのですが、援軍にあてがあります。それが来るまで耐えれば」
「いつ来るというのかね」
「今から調整します」
「今から調整するだと。ふん、しかしもうそなたに頼るしかないのかもしれん。どちらにせよもうこの国は終わりだ。好きにするといい」
「ありがとうございます。」
愛梨は早速作業に取り掛かった。
広場に1000人の兵士が集まった。
「これだけ送ってもらえれば何とかなるかな。えーっと、みなさんにはこの地雷というものを埋めてもらって、有刺鉄線を張り、指向性散弾をセットしてもらいます。頑張って今日の夕方には終わらせたいです。最後の力を振り絞って頑張りましょう。質問」
「地雷とかってなんですか?」
「あー、そうだね。簡単に説明するよ。地雷は踏んだらやばいやつ、有刺鉄線は触ったらやばいやつ、指向性散弾は当たったらやばいやつ」
「全くわかりませんがわかりました」
「くれぐれもけがのないように。いまからやり方を説明するね」
説明の後、築城が始まった。
城の客間で、愛梨は交信を行っていた。
「かくかくしかじかで、援助が必要」
「アイリが作ってたAI制御装置を送るわ。あとは明日まで待ってちょうだい。いまAIの子機の方を兵器に接続しているところなの。米軍と自衛隊の装備に随時接続しているからあとからどんどん装備が増えるわ。明日には一部装備の接続が終わるから、それを送ってあげる」
「ありがとう! 帰ったら寿司おごるよ」
「ふふっ。楽しみに待ってるわね」
愛梨は通信を切った。
「王様に報告しなきゃ」
王の間へ愛梨は向かった。
「王様!明日一日耐えましょう。そうすれば援軍が来ます」
「ほう、もう調整が終わったか。聞こえたか皆の者! 明日耐えれば援軍が来るそうだ! それまで全力で耐え抜こうぞ!!!」
王様の声は皆の士気を高めた。
作業を終えた兵士たちとともに、愛梨は明日に備え休むことにした。
明日の朝、魔王軍が再度攻勢をしかけてきた。
「すごい! 魔王軍の侵攻が遅れている!!」
昨日仕掛けた地雷などに相当足止めを食らっていた。
「だが、これも時間の問題だ。おれたちも戦う準備をするぞ」
「「「「おう!!」」」」
そのころ、愛梨は届いた制御装置を装備していた。この装置は体に装着することにより、まるでゲームのステータスのように自軍の残存戦力などを把握することができ、複数から大量の装備を脳から直接命令し操作する。すべて操作できない場合はAIが自動で操作する。
「これであとは兵器が来るのを待つだけ…………」
愛梨は装備の到着を待ちながら、戦場の様子を見に行くことにした。