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作者: ヤヤヤ

 部屋の中に、女の死体が転がっている。

 死体は素っ裸でうつ伏せにされていて、めちゃくちゃに乱れた長い黒髪が、その顔を覆い隠している。だから正確には、女と思われる死体が、僕の部屋の中に転がっている。

 おそらく、こいつが死んでそんなに時間は経っていない。なぜそう思うかって? まず床に拡がっている大量の血液がまだ固まっていない。そして次に、部屋の中には甘く気だるげな香水の匂いがぷんぷん漂っていて、こいつはただ疲れて横になっているだけ、というような状態にも見えるから。そういった意味では、もしかしたらこいつはまだ死んでおらず、本来僕が取るべき行動はすぐさま救急車を呼ぶことなのかもしれない。けれど僕は、そんな正義的、人道的なことはしなかったし、今もしようと思わない。

 僕は不思議なことに、仕事から帰宅して自分の部屋でこんな状況に遭遇してもあまり驚かなかったし、ビビってその場から逃げ出すなんてこともなかった。むしろ「ああ、ありがとう」と、知りもしないどこかの誰かに深く感謝した。だって僕の会社にいる人たちって、信じられないほどひどい連中で、僕に対していつも非人道的な行為ばっかするんだ。それはやっぱりストレス溜まるし、その結果僕がいつどこで精神を病んでもおかしくはない。

 つまり、これはプレゼントなんだ。神様からの、プレゼント。

 あなたはなにも悪くないのです。だから、これを使って日頃の疲れを癒しなさい。日常で感じるストレスをぶつけなさい。あなたはあなたのままで良いのです。正義、人道、悪、欲望。そんなことを深く考える必要はないのです。あなたはただ、あなたの好きなように生きてゆけば良いのです。

 そうだよな、そうに決まっているよな。そうじゃないと、世の中不公平だもんな。僕だけ損な役回りって、どう考えても狂っているもんな。

 服を脱ぎ捨て、舌先を女の死体に這わせている今の僕がおかしいなんてことは、絶対に、ない。

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