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僕は『僕』じゃないっ!  作者: 立田友紀
1.『男』になれないおとこのこ
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1.「『男』になれないおとこのこ」

この物語は、韮崎望海や彼女を囲う人々が自身のあり方を見つけていくまでを描いたものである。


(ご注意)

○本作品は「性別転換」というテーマを取り扱っています。全年齢対象で性的な、あるいは残酷な表現はありませんが苦手な方は閲覧を差し控えられることをおすすめします。

○小説ランキングに参加しております。読了後は、ぜひ本文下ランキングバナーをクリックしていただければと思います。

 男らしさって、何だろう――。

 女らしさって、何だろう――。

 

 ちまたには、「男らしい」って言葉とか「女らしい」って言葉がごく普通にありふれているよね。

 例えば服の宣伝広告。ワイルドな、男らしさあふれるパーカー。フェミニンな、女の魅力があふれるパーカー。 同じ「パーカー」って服なのに、その前につく宣伝文句のせいで同じ製品が全く違うように見えてしまう。

 服だけに限ったことじゃない。靴とか小物とかもそうだし、例えばご飯とかでも男はラーメン店とか女はケーキ屋さんとかそんな感じで。男らしい、女らしいってタグでいろんなものをタグ付けして、それが一つの製品を説明する文句みたいになっていて。

 もちろん、それってものを売ったりする上ではないにもおかしなことじゃない当たり前の事だとは思うんだ。

 だって、大前提として世の中の人って基本的に男性か女性かの2つに分かれているんだよ? そしたら、それぞれをターゲットにするって普通の事だと思うし、ただの中学生の僕だってそんなことはいちいち言われなくても分かることだよ。

 でもさ、その両方にも当てはまらないとしたら――それってどうなっちゃうんだろう?

 それって、人間としてダメってことなのかな?

 ……実際は、そんなことは無いんだろうけど。

望海(のぞみ)、帰ろーぜ!」

「うん、そうだね!」

 なんでこんな、訳の分からないこと考えちゃったんだろうなぁ。

 でも、ちょっと前と比べてうっすらと声が低くなって。ひげが生えかけてきた、幼馴染みの祥太郎(しょうたろう)を見て――僕はふとそんなことを思ってしまった。


 ◇


 祥太郎と別れて、家までの帰り道。さっき考えたことを再度思い出す。

 中学3年生になってから、クラスメイト達がみんなめっきり大人っぽくなった気がした。

 男の子たちは、みんなそれぞれ声が低くなって背が伸びて。女の子たちはその逆で声も女性っぽく穏やかできれいで。よこしまなことかもだけど、中にはやっぱり胸とかが大きい人とかもいて。

 成長期だからそれって当たり前のことだとは、保健体育の授業でも聞いているからそれ自体が変だとは思わないんだけど……。

「僕は、ねぇ……」

 そういって、川の水面に移る僕自身に苦笑い。

 僕――韮崎望海(にらさきのぞみ)。現在14歳。ごくごく普通の男子中学生、だと思う。

 お世辞にも勉強も運動もできるわけじゃないけど、クラスの中で話す友達もそれなりにいて。最近背が全然伸びないことがちょっぴりコンプレックスだったりもするんだけど、まあそのせいかクラスメイト達には可愛い可愛いと愛されてるんだかイジられてるんだか……。

 ともかく、そんな感じで周囲の成長の波に全然ついていけない感じの僕ではあるのだが。

「けど、僕も祥太郎みたいになるのは……」

 まだぜんぜん出ていないけども、いずれは出てくるのであろう喉仏の位置を触ってため息をついた。

「ちょっと、ね」

 嫌だ、って言うのはちょっと変な話だと思う。

 けど、そうはなりたくないっていうのは――正直な本音なのしれない。

 すっごい変なことを言ってるかもなんだけど、実は僕は……。


「大人になりたくないなぁ……」


 足元の小石を水面に移る僕にぶつけながら、そんなことをつぶやいてしまった。


 ◇


 男らしくありたくない、って言うのは変な話だとは思う。

 だって僕は、男の子なんだよ? 男らしく背が伸びてカッコよくなれるんだとしたら、そういう成長期ってすごい待ち遠しいことなんじゃないかな。

 実際、祥太郎も。あぁ、さっきからたびたび出てる祥太郎っていうのは僕の幼馴染の男の子ね? さっきまで一緒に帰っていた。

 ともかく、そんな彼も背が高くなりたいとかカッコよくなりたいとか。冗談交じりだったとは思うけどそう言うことは言ってたし。立場が違うけど女子だって、胸の大きさとか最近はそんな話をしているのが聞こえてくるし――なんだかんだ言いつつも男も女もそういう時期(・・)が来ることをどこかで望んでいるのだろうし、それが当たり前だって思ってるんだと思う。

 けど、その当たり前が――なんだか僕には怖くてしょうがなかった。

 背が伸びるとか、男らしくなるっていうのは――まあ、良いことなのかもしれない。女子にさえ頭をポンポンとなでられる今の状況を考えるとね。普通は逆じゃないのかなあ? って思ったりもするし。

 でも、男らしくなるときに起こること。ひげが生えるとか、足とか腕に毛が生えるとか。声が低くなるとか。あとはその……射精とか?

 女性のそれと違って痛くないという話だから、まだ良いじゃんって気もするけど――でもそれにしたって何というか。


 キモチワルイ、って。率直に思ってしまった。


 つまりそれって、お父さんみたいになるってことでしょ? あの腕とか足とかが毛むくじゃらな。

 お父さんは嫌いじゃないし、むしろ好きだけど――そんなのは嫌だなって。でもかといって僕は男の子だから、いつかはそういうのはきっと襲い掛かってくるであろうことで。

 今の僕にそんなことは来てないけど、『次はお前だ』とどこからか言われてるような気がして。


『――男になりたくないな』


 誰も聞いてないだろうけど、そんな一言が。つい漏れてしまったのである。

またTSかっ! ってめっちゃ言われそう。。。。


そんなわけで前作を読んでいただいた方、お久しぶりです。

初めて読んでいただいた方、はじめまして。立田です。


1か月前に前作『僕は女の子になりたい。』を書き上げてからしばらく充電していましたが、この度また性懲りもなくTS。性別転換モノを書くことになりました。

相も変わらず、主人公である韮崎望海くん(ちゃん?)の視点で悩みにぶちあたっていくという基本コンセプトも変化なし。『僕なり。』の焼き直しじゃんって言われちゃいそうですよね(苦笑)


ただ、今作では前回と毛色が違う作品として作っていく予定です。

前作主人公の春樹(春奈)は、結構理屈っぽいし等身大でグレているな(苦笑)として書いていた側面もありましたが、今作主人公の望海は繊細ながらもいろいろ頑張ってる子として描いていこうと考えています。


なるべく明るく前向きに、シリアス抜きで頑張っていこうと考えていますので、最後まで温かく望海やその周囲の人々のことを見守っていただければ幸いです。

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