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晴天翳りし  作者: 和鏥
18/32

第陸章 朝方(1)

 フロイト曰く「力は、あなたの弱さの中から生まれるのです。」


 一


 朝。

 昨日のことを誰も何も話題には出さなかった。

 それに憤慨した小鳥遊は文句の一つでも言ってやろうと思ったが、それだと小雪の侮辱になると窘めれられ渋々口をつぐんだ。

 妻を亡くした二郎はすぐさま「父に発覚する前に警察を呼んでくるよ」とだけ言い早朝から家を出た。


「あいつはどこにいるがよ。何もされちょらんだろうな?」


 一郎がいないか警戒しながら小鳥遊は女中たちに言う。寝不足の彼女たちは首を横にふる。


「若旦那様が起きるのはお昼すぎですので……。それに昨晩は相当腹が立っていたのでしょう、遠くですが怒鳴る声も聞こえたので、起きてくるのは遅いでしょう」


 それを聞いて小鳥遊はようやくほっと息を吐いた。


「つらかろうに」

「同情されては困ります」


 女中の一人がぴしゃりと言い退け、小鳥遊は言葉がつかえる。


「貴方の邪魔がなければ小雪は解雇にはならなかった」

「じゃあ、ただただ襲われるのを見てろ言うがか?」

「では、あなたは小雪を養えるのですか? まさか一時の感情に流されて助けたわけではないでしょうね」


 そう言われて小鳥遊はさらに返答に困る。

 先生の下で暮らしている書生は明日食らう飯にも困っている。実家はここには負けるが裕福ではある。が、家には戻りたくもない。

 答えに詰まっている小鳥遊を見、女中は鼻で笑った。


「だからよそ者は嫌いなんですよ。無駄に義侠心なんか見せちゃって」

「……ボクだけではない言い方をするんですね」


 小鳥遊は一度落ち着いてからそう言うと、女中は初めて動揺を見せた。


「別に……。ここは出入りが激しいから」

「使用人がころころ変わるのはやはり皆がここはおかしいと……」

「余計な詮索は困ります」


 女中はそう言って、早足で台所へと姿を消した。

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