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鎧の男·ディランサー

登場人物紹介

神宮寺夬人(ジングウジカイト)

身長/168cm 体重/59kg

頭脳/普通

容姿/普通

運動/普通

体格/普通

性格/ちょっと面倒くさがりや

彼女/なし

家族/会社員父、パート主婦母、愛犬の3人+1匹



(どこだ、ここ)


 目が覚めたら、冷たい石が敷かれたとこにいた。しかも···


「なんで俺の服、濡れてんの? あれ?」


 確か、学校から帰ってきて、そのままバウの散歩に行って···


 着ている制服は、濡れていたのか肌にあたると冷たさが直に伝わる。


「バウ?」


 四方が石だらけの所に、窓っぽい?柵?見れば、四方だと思った前面に半分だけ鉄格子っぽい扉があった。


(なんか、こんなの前に映画で見たぞ。そうだ、牢獄だ、牢ご···)


「······。」


 ゴクッとツバを飲む音すら聞こえる位の静けさに固まる夬人ではあった···。


「はぁぁぁぁぁぁっ?! なんで、俺こんなとこにいんだよっ!!」の大声に、ガチャガチャと重い音を立てながら、人が近づいてきた。


「うるさいっ! 静かにしろっ!」


 昔映画で見たような全身鎧の男が、夬人に向かって声をあげた。


「うるせぇっ! うるせぇのは、お前だ! 鎧っ!」とパニクりながらも反発する夬人。


「何をっ!?」


 鉄格子を挟みながら睨む鎧と夬人だったが···。


「ディランサー、何をしておる。想像しいぞ」


「は!」


 先程までの去勢はどこぞへ?と言う位に小さくなる鎧の男。


「主か···」


「······。」


 夬人は、ジッとその鎧を見て、身体が固まった。というか、足が地にくっついたかのように足が動かなくなった。


(声が···でねー)


 動く事が出来ない夬人は、大きな鎧の男を見続け、汗が頬を伝うのに気付いた。


「あと数日で、主には犯が言い渡される。それまで、そこで辛抱しろ。ジングウジカイト」


(んな?! ハン? ハンとは? つか、なんでテメェが俺の名前···)


 そう思った瞬間、夬人の周りを真っ白な靄が包み、その場にドサッと倒れた。



 ガチャッ···と鉄格子の鍵が開いた。


「主、飯だ。たらふく食え。─ったく、グウグウうるせー」と先程のような(確か、ディランサー?)が言った。


「飯?」


 うつろな眼差しで、差し出されたものをジッと見る夬人。


 次第に視界がハッキリと見え···


「飯だ、飯···」


 気付いたら、パン、スープ、サラダ、果物が乗っていたトレイがきれいになくなっていた。


「は? お替り? 咎人の分際で、贅沢言うな! 食えるだけでもありがたく思え!」とだけ言い、去って行った。


「ここが牢獄ってのはわかったけど···。咎人? あれだろ?」と考えてる内にまた睡魔に襲われる夬人。


(なんだろう? この空気···。懐かしい)


 ペロペロ···


 夬人は、くすぐったくてそれから逃れようと身体を丸める。


『おい、カイト』


「くすぐったいって、バウ···」


 ペロペロ···カプッ···


『おい、起きろって。カイト!』


「んだっ!! って、バウ? おま、なんでここ?」


 目を擦ると顔面にバウの顔が···


『お前、目ぇ覚めたか?』


「······。」


(いま、なんと? 犬が喋った? 夢?)


『じゃねーよ。俺だよ、俺』


「バウ?」


『当たり前だ、ボケ』


 夬人は、そっとバウを下ろすと、バウの頭を叩く。


『ってーな。なにすんだ!』


「それは、俺の台詞だ、バカッ! 犬が···喋ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 霧をも裂く夬人の声に、バウは隅に行き蹲り···


 ガチャガチャガチャガチャと鎧につけた鍵を鳴らしながらも、ディランサーが···


「またお前か! せっかく儂が主の友を連れてきてあげたというのにっ!」


「犬っ! 犬っ!」


 夬人は、隅で蹲るバウを指差すも、


「主の友ではないのか?」とのんびりとした口調で答えた。


「いや、そうだけど。しゃ、しゃ、喋ったんだけどっ!」慌てて言う夬人に、またしても、ディランサーは、


「喋る? なに当たり前な事を。主、頭でも打ったか? あと少しだ、待ってろ」とまたのんびり答えて、戻っていった。



「······。」


『ま、俺も驚いたけどな。ほら』とバウが、普通に喋り、歩き、ジャンプして尻もちをついた。


「いや···まだわからん」


『······。』


 バウは、急に黙り、周囲の匂いを嗅ぎ始めソワソワしだした。


『なぁ、カイト。俺、オシッコしたい』


 泣きそうな顔で言うバウに、カイトも困る。と言うのも、カイト自身もここにきて始めて尿意を感じていたのだ。


「俺も···。困った···」


 ガチャンガチャンとまた···


「おい、おやつ···。どうした? 腹でも壊したか?」


 どうにも我慢できなくなった夬人は、恥ずかしながらも股間を押さえ、バウはひたすら石を掘ろうとしている姿に、


「トイレか。こっちだ。逃げようとしたら、お前ら即死だからな」


「んな···はや···」


 もはや逃げるよりも、早くスッキリしたい夬人は、バウを抱え、ディランサーの後に続く。


「はや···く···」


 1歩進む度に、膀胱が刺激され冷や汗が頬を伝う。


「ここ···」とディランサーが言い終わるうちに、夬人とバウは駆け込み···


「『はぁぁぁぁぁぁっ! 間に合ったぁぁぁっ』」と安堵の声を漏らした。


「済んだか?」


 ディランサーは、笑いを堪えながらもふたりの手に水を掛け流し、布切れを渡した。


「すいません」


『バカだな。カイト、ありがとうだ!』とバウがドヤ顔を夬人を見上げた。


「あ、ありがとうございます」


「ふん。友に言われちゃおしまいだな。ま、お前らも明日でおしまいだ」


 牢獄に戻る途中、カイト人は石壁に付いてるライトみたいなのはなんだろう?と考えた。


「それに近付こうとするな。死ぬぞ」とディランサーが言い、夬人とバウは通路の真ん中を歩く。


「ほら、あと少しの辛抱だ。おとなしくしてろ。おやつは、あとで届けてやるから」


『おやつ! なんだ?』とおやつの言葉に反応するバウに、ディランサーは、甘いものとしか言わなかった。


「へんなとこ···。つか、俺らどうなんの?」


『わからん。カイト、お前どこから覚えてる?』


 石畳に座りながら、夬人とバウは少し話したが、


「『あの事故、だな!』」で一致した。


「当たった瞬間、飛んだのは覚えてる」


『俺もだ』


「死んで、この世界にきたのか?」


『さぁ? 俺にはわからん』


 夬人は、たまに異世界シリーズの小説を読んだりする。その世界観では、死んだら転生若しくは転移するとか···。


(この世界にきたのも、転生なんだろうか?)


「ってことは、俺ら死んだの?」


『お前が言うイセカイなんちゃだとそうなんだろうな』


「······。」


(ん? 俺そんなこといったか?)


 夬人は、ふと疑問に思った。


『だって、いまそう考えただろ? 俺にはお前が考えてることわかるから』


 バウは、したり顔で夬人を見た。


「覗くな!」


「─お前ら、いらんのか?!」


 ディランサーが、トレイを手にこちらを見る。全身鎧だから、顔まではわからんが···。


 小さな入り口から差し出されたのは、


「カヌーレだ。美味いんだぞ、ここのは。存分に味わえ。どうせ、明日にはお前らとお別れだからな」


「はぁ···」と小さく呟く夬人を他所に、バウは早くくれと急き立てる。


「ほら···」


 トレイの上に並んだお皿の上には、二種類のカヌーレが並んでいたが、普段から甘いものを食べない夬人は、半分食べただけで残りをバウに渡した。


「ほんとに俺らどうなんだろ?」


『さーな。いいのか、ほんとにこれ食っても』自分のを早々に食べ終えたバウは、尻尾を振って夬人に問うも、


「言ってる側から食ってんじゃん」


 笑いつつも、どこか寂しげな声で返す夬人は、次第にまた眠り始め、満腹になったバウもその隣にくっつき寝息を立て始めた。



「おい、夕飯だ。今夜で、お前らとも最後だからな。いつもよりかなり豪勢だぞ。ありがたく思え」


 昼とは違い乗り切れないのか一人に付き三枚のトレイが差し出された。


「存分に食え。最期! にひとつだけ願いを叶えてやる! 変な事でなきゃな! あるか?」とディランサーは言う。


『俺は···別に···』


 早くも食べ始めたバウは、顔もあげず答える。


(俺も別に···)


 夬人は、たった1日鎧越しに会話を交わしたディランサーの顔が見たいと思った。


「俺、死ぬんだろ? だったらさ、その他所の下の顔見せてくれん? 別に逃してとか言わんし」


 どうせ一度は死んだ身。二度も三度も死んでも変わらんだろう···。


「俺の顔? んなもんでいいのか? 別に構わんが···」とディランサーは、笑いを含んだ声で答え、ゆっくりと鎧の兜を脱いでいった。


「すげ···」


「そうか? どこにでもいるような顔だ」


 確かに怖そうな顔つきではあったが、笑った時の目は、優しいと夬人なりに感じ取っていた。


「これか?」


 ディランサーは、頬に付いた大きな傷跡を指さした。恐らく誰にでも聞かれるのであろう。


「これは、戦で受けた傷だ。俺は、その戦で妻と生まれてくる子供を失った」


 夬人は、戦=戦争は、映像や資料でしか知らない。


「すみません。なんか···」


 そんなしんみりとした場もバウの、


『あー、美味かった! おい、カイト食わんのか?』の声に崩されていった。


「カイトも食え。早く食わんと友に食われる。それに···明日には···」


 ディランサーは、何か言いたげだったが誰かに呼ばれたのか、その場を去り、夬人は自分に与えられた食事をバウにも分けてやりつつ、食べ始めた。


「不思議だな。一度は死んでると思うのに···」


『だな。不思議と怖さがない···』


 食べ終えた食器を山に積み、トレイを入り口付近に置くとまた横になり、バウと話す。


『また来たな···』


「うん。寝ようか」


 白い靄が、二人を包み始めると、次第に夬人たちは瞼が重くなり、寝息を立てる。


(明日、か···。俺、童貞のまま死ぬのね?)

久し振りの異世界ものです。


官能な面を入れたかったけど、ストレートに流そうと思います。


誤字報告、感想などありましたら、なんなりとぉ!

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