合成機
自動小銃、拳銃、ボルトアクションの狙撃銃、様々な銃器が、トランクの中に一杯に詰め込まれている。僕の見分けのつく銃では、ロシアのAK-47突撃銃や、アメリカのM4カービンなどがあった。
あのう──僕は決して、武器マニアなんかじゃない。SFを日常的に読むようになると、いろんな雑学が頭に詰め込まれるものだ。ミリタリー関係の知識はもちろん、歴史、民俗学、古生物学、雑多な知識が吸収される。
もっとも日常的な常識にかけるところがあって、芸能関係やスポーツの知識は、僕の中からすっぽり抜け落ちている。
麗華は大きく息を吸い込むと、はった! と僕らを睨み、大声で説明を始めた。
「言っておくけど、これ、本物じゃないわよ。全部、モデルガンなの。わたし、趣味がサバゲーなんで……」
奈美代が呆れたように首を振り、麗華に問い返した。
「サバゲー? だって、あなた陸上自衛隊員だって言ってたでしょ? それなのに、わざわざサバイバルゲームをするの?」
麗華は不貞腐れたような様子で、奈美代に答えた。
「サバゲーには、結構、現役の自衛隊員が参加しているのよ。演習と、遊びじゃ楽しみが違うもんね」
全員に弛緩した空気が漂った。
僕は麗華に、なぜか親近感を覚えていた。
なーんだ、彼女も僕と同じマニアじゃないか……。
ポツリと、ルーナが呟いた。
「お腹空いた……」
乱子がルーナの言葉に、大いに賛意を示して宣言した。
「そうよ! あたし、お昼ご飯まだなんだから! ねえ、ここには何もないの?」
奈美代が、さっと部屋の一隅を指さした。
「ここには食料合成機があるわ!」
「食料合成機~?」
乱子が尻上がりの口調で、疑わし気な表情で僕を見た。
僕は乱子に説明した。
「そうさ。小説に書いてある通りだ。あの合成機で、あらゆる好きな食べ物を合成できる」
「ふうーん……」
乱子はゆっくり、食料合成機に近づいた。ちょっと眺めて、こっちを向いて質問した。
「で、どうやって使うの?」
「え?」
僕と奈美代は、お互いの顔を見合わせた。
そういえば、使い方知らないや……。
つかつかと合成機に近づいた乱子は、いきなり平手で機械を叩いた。
「こんなの、叩けば動くんじゃない?」
おいおい、乱子。君は「未来少年コナン」の、ダイス船長かよ?
あっ、このギャグ、判んない人はDVDをレンタルして「ギガント」「インダストリアの最期」の回を視聴するように。
その時、それまで丸まっていた八咫烏がヒョイと体を起こし、蛇のような首を立てて、その先の目玉を乱子の方へ向けた。
「待ちなさい。そんな乱暴なことで機械は動きませんよ。わたしが教えてあげます」
乱子の態度に、大事な機械を壊されてはかなわない、と思ったのだろう。八咫烏はそれまでの丸まった体勢から、するりと立ち上がり、三本の足を動かし、慌てた様子で食料合成機に近づいた。
乱子、麗華、双子の姉妹、奈美代、メイド三人組たちが一斉に機械に近づき、熱心に八咫烏の説明に聞き入っている。




