トランク
その時、メイド三人組が不満そうな声を上げた。
口火を切ったのはユミだった。
「さっきから、あたしたちには、絶対判んないことばっかり話しているのね!」
ユミの言葉を受け、エヴァが叫んだ。
「そうよ、あたしたちどうすればいいの?」
「お腹空いたわ……」
最後の言葉は、ルーナだった。
ルーナの言葉は、全員頷けるものだった。
僕は「そういえば、腹減ったなあ……」と思った。
するとユミとエヴァが細かく地団太を踏んで、全身を揺らして叫んだ。
「お腹空いた! お腹空いた! お昼ご飯、まだあ~っ?」
三人が全身を震わせると、巨大な胸がゆっさゆっさ上下左右に揺れて……。
おーっ、凄え……!
僕は視線を慌てて逸らした。
なぜなら乱子が、僕を冷た~い視線で眺めていたからだ。
麗華が笑いを浮かべ、肯定した。
「そうね。そろそろ昼食の時間かもしれないね。ここには、何か食べられるものはあるのかしら?」
ルーナは、麗華の巨大なトランクを指さし叫んだ。
「その中に、何か食べ物あるんじゃない?」
麗華はぎくりと身を強張らせ、猛烈に否定の意味で首を激しく振った。
「こ、ここにはそんなもの、入ってないわよ!」
ユミがニヤニヤ笑いを浮かべ、じりっと麗華に迫った。
「怪しいんだ! 絶対、美味しいもの、中に入ってると見た!」
麗華は真剣な表情になり、怒鳴った。
「違うったら!」
僕は傍目で見ても、麗華の態度は怪しいなあ……と思っていた。
なんであんなに慌てているんだろう?
もしかして死体でも入ってる?
まさかね!
と、麗華の背後から、音貝姉妹が、そーっと近づいてきた。双子は目をキラキラさせ、悪戯っぽい表情でトランクに近づいた。
気配に気づいた麗華が、さっと振り向いた。
双子の四本の手が、トランクにかかった。
麗華は悲鳴を上げた。
「やめなさいっ!」
がたんっ!
大げさな音を立て、トランクが横倒しになった。その拍子で、トランクの蓋がパクンと開いてしまった。
全員、注目して、唖然^として顔を見合わせていた。
「何、これ……?」
乱子があんぐりと口を開け、まじまじとトランクの内部を覗きこんで呟いた。
全員の注視を浴び、麗華は立ち竦んだまま、顔を真っ赤に染めていた。
トランクの中に入っていたものは……。
銃だった!




