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フレイヴはすべての情報をオルチェに報告した。ケレントから島自治区へと渡航する方法。その方法でアルフレッドと出会ったこと。島の中で見つけた天使物語に関すること。何も自分だけが事の報告をしたわけではない。カムラが彼らの横に割って入ると――「だから」と威圧的な態度を取り出す。
「慰謝料寄こせ。あたしは誘拐された。人質役になった」
「知らねぇよ、ンなもん」
そうあしらうオルチェであったが、何を思ったのか。何かを思い出したりでもしたのか。急にあごへと手を当てて考え込み始めた。話を聞く限り、カムラが誘拐されたという話は予想外だったからだ。
もしも、ケレントが『カムラ』の存在を知っていたとするならば? ありえなくもない話ではある、と考察する。彼は裏社会を操ることができるような危険人物でもあるのだから。そのため、多少はその存在を知っていてもおかしくはない。いや、それをどこから聞いたかにもよる。
「あのじーさん……」
ぼそり、と呟くオルチェであるが、フレイヴは眉をひそめた。彼の言う「あのじーさん」とは誰のことなのか。まさか、ケレントなわけあるまい? あの男は高年齢には見えなかったのだから。
フレイヴは訊ねた。先ほどのオルチェの発言の「じーさん」とはケレントのことなのか、と。その設問に対しての回答は「何を言っているんだ?」である。それはもう、至極当然のような表情。だったら、待て。
「えっ? バックヴォーンさんって、若い男の人ですよね?」
「いや、年齢が若くては信頼度も低いだろうよ。色んな連中の橋渡し役だろ? もうじじいぐらいの年じゃないと、裏は動かせない」
それならばの話。あの独立の国の首都七番街にいた男は誰だとなってくる。フレイヴが不安そうにしていたのだが、誘拐されていた当事者であるカムラはというと――。
「あぁ、まあいいか。逃げられたし」
気にしないことにしたらしい。どうでもいいと思っているようだ。ただ、どうでもよくないと思っていることについては「あのさぁ」と片眉を上げる。
「それで、あたしらが調べた天使物語と魔王に何の関係があんの?」
「口の悪いやつだ。人に訊く態度があるだろ」
「くそっ!」
オルチェはカムラの質問に答える気はないようだ。この二人の幼稚なやり取りにフレイヴとアルフレッドが呆れ返る。また話が進まず、滞っているな、と。仕方ない。大きくため息をつきながら「教えてください」とオルチェに向かって頭を下げた。
「天使物語と魔王に何の関連性があるんですか?」
「知っているか? 天使物語に出てくる自称天使のモデルとなったのは魔王だって」
「え?」




