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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第八章 懇願と指示◆
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92ページ

 逃げてばかりでは、目的は達成できない。その思いでフレイヴとカムラはアルフレッドを止めた。だが、彼は逃げようとしない二人に「何をしているんだ!」と叱責をする。


「ほら、ナズーが来ているじゃないか! 逃げないと、あいつにはどうしようもないっ!」


 それは島自治区の話である、とフレイヴは「問題ありません」と自信げに言う。


「ここにいるのは一体。今回、ぼくたちにはカムラがいます。それも意識だけじゃない、実体のある彼女だ」


「お前さん、何を言って……?」


「それに、こいつを早々に倒さないと、他の人にも害が及びますよ」


「違うだろ。いや、そうだけど……普通の人間は勝てないっ。あれを倒せるのは軍とか、戦友軍のやつら――」


 そこでカムラの様子がおかしいことに気付いた。彼女の体が光り始めたのだ。それは以前に見たことのある光る千切れたページ。そうだ、そうだった。本体が別にあって、意識だけを飛ばす存在。それに伴って、世界を変えてしまった厄介な人物を追いかけて、殺すという使命がある。二人は普通の人間ではない、と今更ながら思い出す。その直後、その姿は普段の口の悪い少女ではなくなり――不思議な形の剣へと変わってしまった。その剣は形だけでなく、存在感もバリバリ摩訶不思議。なんせ、魔法みたいにして淡く、美しく光り輝いているのだから。そして、それをごく自然に手にしている少年だって――。


「なんだっ!? これは……!?」


 ナズーもカムラの剣も、どちらとも驚きを隠せない。これまでもそうであるが、自分自身の目に映っているものは現実なのだろうか。幻ではないということが一番の驚愕的事実。一方でアルフレッドの驚きに動揺すらもしない二人は自信たっぷりに、こちらへとやってくるバケモノを待ち構えていた。


――さあ、来い。いつものように、ぶちのめしてやる。


 そうだとしても、アルフレッドは心配だった。なぜならば、普通の人間が倒せないようなバケモノが目の前にいるのだから。そのバケモノは特殊な人材かつ特殊な武器で攻撃しないと倒れないだろう。仮に剣となったカムラが特別な武器を前提に戦ったとしても――。


「うわっ!?」


 慣れているはずの戦闘だったのに。カムラの剣とナズーの拳がぶつかり合うのだが、力に負けてフレイヴは飛ばされてしまった。その衝撃で、剣を手放すことになる。それに彼が気ついたのはようやく地面を転がるのを止めたときである。


「カムラっ!」


 どこにいる? どこで自分が握るのを待ってくれている? 焦りが見える中、やっとの思いでカムラを見つけたときは、アルフレッドが「あっ!」と声を上げたとき。


 カムラの剣はナズーが握っていた。まさかとは思いたい。いいや、そのまさかだった。本当だった。予想的中。最悪!


 ナズーからの一撃を必死になって二人はかわした。そのときの衝撃はあまりにも大きく酷い。周りの木々は倒壊し――剣の姿となっていたカムラは地面に激突したショックで、人の姿で気絶していた。これは非常にまずい。剣を握っていた黒いバケモノも何かに気付いたようで、眼前に倒れている少女を見下ろしていた。


 カムラが危ない。危険だ。走り出すフレイヴ。彼女を助けるのが先か、ナズーにされるが先か。頼むから、間に合ってくれ。


 ナズーの距離が数十センチにも満たなくなったときだった。


「力の過信は、全滅につながるぞ」


 何が起きたのか、わからなかった。ただ、フレイヴが瞬きをしたときには、こちらに襲いかかっていたナズーが倒されていたということである。その微動だにしないバケモノからカムラを守るようにして一人の男が立っていた。後ろ姿だけでもわかる異様な雰囲気の人物。


「あなたは……」


 と、ここでカムラは気がつき、上体をゆっくりと起こしながら、見覚えのある男の背中を見て嫌そうな顔を見せる。それでも彼はお構いなしにこちらの方を振り向いた。目立つような赤い髪を持った人物――。


「戦いにおいて、常に緊張感を持っとけ」


 そう、三人を助けてくれたのはカムラを「敵だ」と確言していたオルチェであった。

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