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さて、本格的にアルフレッドが仲間になって一日が経った昼下がり。山道を歩くカムラは情けないため息をついた。
「ウソデショー」
感情は一切なしで、もう一度大きく息を吐いた。それにフレイヴは「仕方ないだろ」と口を尖らせる。
「ぼくたち、お金がないんだから」
「フレイヴはわからなくもないけど、なんでおっさんもお金ないの?」
そう、三人は一文なし。そのため、オルチェがいる英傑の町まで徒歩移動を余儀なくされていた。新王国の南側にある町から北東の方へ千三百キロ離れた英傑の町。遠いの一言で終わる感想である。お金さえあれば、列車に乗って半日で目的地に辿り着くのにな、と文句を垂れていた。
「お金さえあれば、あたしの席代は浮くのになぁ。あーあ」
「うるせぇな。金がないんだから仕方ねぇだろ。俺だって、列車移動がいいよ。つーか、お嬢だって持ってないだろ」
「それに関しての否定はしない」
事実を認めているからだろう、開き直った様子で「しょうがない」で片付けようとする。だが、ちょっと待て。アルフレッドにとってそれは「おかしい」のだから。
「そもそも、一人の一食分もあやしいってのに。まさか、全然ないのか?」
「それはお互い様でしょ」
と、ここでフレイヴがこっそりと教えてくれた。
「カムラは最初からお金も何もかも持っていませんでしたよ」と。この事実に目を丸くするばかり。カムラの事情は聞いたのだが。
「というか、前にあたしはここではない世界にいたって言ったじゃん。だったら、通貨を持っているわけでもあるまいし」
「まあ、話を聞く限りだと、それはおかしな話ではないな」
「ちなみにだけど、おっさんの場合は……その、軍から逃げるために、持つ余裕がなかったの?」
フレイヴもそうだが、カムラはアルフレッドが指名手配をされているということを口に出すのをどこか渋っているようだった。彼の過去は関係ないと言っていても、そこは気にしてしまうようである。彼女の設問に「そうだな」と肯定した。
「急だったからな、何も」
答えるには答えてくれるのだが、詳しい話は一切しようとしなかった。誰にだって、言いたくないことはたくさんある。それは二人にとっても同じようなことであり、彼らは視線だけを合わせた。ややあって、カムラは「早く着けぇ」と誤魔化すかのように、空を仰ぐ。だが、フレイヴにとってはこれで逃げられたとは思えなかった。そうだとしても、彼女とは同意見であるのだった。




