表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第八章 懇願と指示◆
87/263

87ページ

 予想外だった。なぜに新王国の軍人たちが島自治区へと来ているのだろうか。我が目を疑う。これは幻か。目を擦って、改めて確認をしてみるも――やはり見慣れた軍服を着た彼らだ。見間違えることもない、濃い青色の武装集団。どうして?


「フレイヴ、もう大丈夫だからね。さあ、舟に乗って」


「えっ、あ? え?」


「近くに父親らしき人物がいないようです」


「周辺を探せ。もしかしたら、ナズーに襲われているかもしれん」


 なんなのだ? 訳がわからない。理解しがたい状況がここにある。そう軍人たちの会話を聞いている間、フレイヴは為されるがまま小舟に乗せられた。これはどういう状況? 上手く把握ができない。なぜに自分たちは保護される形で? それよりも、彼らはなんと言った? 父親? 自分に父親はいない。父親はこの目で見た。カムラと出会った夜にナズーへとなってしまったのだから。


 父親、というのはもしかしてアルフレッドのことだろうか。ここでカムラの発言を思い出す。彼女は何か考えがあって、意識を本体へと戻した。そこから、ケレントや独立の国の軍警備隊を頼った――というわけではなさそうだ。


【あたしに話を合わせてね】


 フレイヴを乗せた小舟は本船へと戻っていく。その船から覗かせている一人の少女はこちらに向かって、手を振っていた。すべてを理解すると、自分たちを助けに来たという新王国の軍人たちに罪悪感が頭を過る。つまり、カムラは嘘をついて軍を動かしたのである。どのような方法で嘘をついたのだろうか。


 ここは島自治区。新王国の領土ではなく、独立の国の領土だ。おまけに、この島の立ち入りは厳しく取りしまっている。ただでさえ、自国の人間ですらも渡航は困難。新王国民であるならば、なおさらだ。そんな事情を押し退けてまでこうして来られるなんて。ある意味でカムラはすごいとは思う。口が達者だとは思う。頼りになる、と誇らしくも思う。そうだとしても、気分は最悪。フレイヴは嘘が嫌いなのだから。嘘をつくことは好きではない。事実を話さない、というのはまだ好ましい。だが、彼女の考えは明らかに気持ちがよいものではなかった。反論はしたい。そうであっても、何も言えなかった。アルフレッドが父親ではない、という事実ですらも口にできなかった。


 新王国の軍人たちに保護されて、一時間ほどでアルフレッドは島から連れてこられた。そのときの彼の表情や気持ちはフレイヴと同様であるようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ